推進機構について
海外・日本の動向
北海道大学におけるサステイナビリティの取組みは、国際政策と関連して発展してきました。
ここでは、サステイナブルキャンパス※に関連する欧米の大学、アジアや日本国内における動向をご紹介します。
※「サステイナブルキャンパス」とは、「教育・研究・社会連携・キャンパス整備を通して、持続可能な社会の構築に貢献する大学」のことです。
単なる「環境負荷の低いキャンパス」を指すものではなく、「大学全体の方針として、社会的課題に根差した教育・研究を展開する」、「周辺地域と調和したキャンパス整備を実施する」ことにより、社会のウェルビーイングを実際的・多面的に支えることを指します。
海外の動向:欧米大学の動向
1987年、国連の「環境と開発に関する世界委員会」でサステイナブル・デヴェロップメントという概念が提唱され、現在では、サステイナビリティ(持続可能性)という言葉がより広く使われるようになりました。1990年代〜2000年代にかけて、教育機関においても、サステイナビリティを推進する多くの宣言が相次いで採択され、特に欧米の大学ではサステイナブル・デヴェロップメントを大学運営に取り組む動きが加速しました。
これらの国では高等教育機関の協議会が結成され、中でも、イギリスとアイルランドのEAUC (The Environmental Association for Universities and Colleges)は1996年設立、アメリカとカナダのAASHE (The Association for the Advancement of Sustainability in Higher Education)および世界ネットワークであるISCN (International Sustainable Campus Network)はともに2006年設立で、これらへの初期加盟大学はサステイナブルキャンパスの先駆者と言えます。
海外の動向:アジアの動向と日本
北海道大学は、アジアでサステイナブルキャンパスの取り組みを牽引する先駆者の一つです。2008年のG8大学サミットにさきがけ、サステイナビリティに関する取り組みを開始し、現在に至っています。
キャンパス整備に関しては、文部科学省が第3次国立大学法人等施設整備5か年計画(2011~2015年度)、続く第4次同計画(2016〜2020年度)でサステイナビリティおよびサステイナブルキャンパスの推進を掲げていますが、本学のサステイナブルキャンパスの取り組みは、これら計画の以前から、キャンパスの物理的環境整備に留まらず、教育・研究を含むものとして展開されてきています。
サステイナブルキャンパスよりも狭義の概念になりますが、大学の環境負荷低減を目標とする協議会は、アジアの中でも韓国、中国で、日本よりも一足早く設立されています。2008年に韓国グリーンキャンパス協議会(Korean Association for Green Campus Initiative)が、2011年に中国緑色大学連盟(China Green University Network)が発足しています。日本では、サステイナブルキャンパスの構築という、環境負荷低減に限らない包括的な目標を掲げ、2014年にサステイナブルキャンパス推進協議会(CAS-Net JAPAN)が発足しました。北海道大学は同協議会の発起人です。2017年には、タイのサステイナブルユニバーシティネットワーク(Sustainable University Network of Thailand)も設立されました。
日本国内の動向:札幌サステイナビリティ宣言
札幌サステイナビリティ宣言
G8北海道洞爺湖サミットに先立ち、2008年6月29日~7月1日に本学がホスト校となり「G8大学サミット」を開催しました。このサミットにはG8メンバー国内にある27大学に加え、他の6か国8大学および国連大学からも学長らが参加して、サステイナビリティ実現のために大学が果たすべき責務と取り組みについて議論しました。「札幌サステイナビリティ宣言」はこの大学サミットで採択され、わが国で初めて、サステイナブルキャンパスの概念が主要な大学戦略として広くうたわれました。
宣言の中で、すべての大学は、次世代に持続可能な地球と社会を残すため、問題解決に重要な役割を担っており、大学は中立かつ客観的な存在として、持続可能な社会の形成に向けて、政治と社会を啓発していくのに最もふさわしい存在であると位置づけられました。
さらに、サステイナビリティの実現において大学が果たし得るもうひとつの役割は、大学の研究教育プロセスを通じて社会の様々なステークホルダーとの交流を行い、持続可能な社会の新しいモデルとして自らのキャンパスを活用していくこととされました。以下に抜粋した宣言の内容を紹介します。
I 共通の認識(概要)
- サステイナビリティ(持続可能性)は21世紀における最も重要な概念である。
- サステイナビリティは環境にかかわる科学の問題ではなく、今や政治課題である。
- 問題解決に向けて、政策決定者と研究者を密接に連携させる大学の責任が増している。
- 細分化された研究分野を再構築した科学的知識と統合的なアプローチが必要である。
- 新しい科学的知識体系を構築するにはネットワークのネットワーク (NNs, Network of Networks)が必要である。
- 研究者は市民や政策決定者と対話し、社会変革を後押しすることが重要である。
- 大学は、各地域の問題を解決する人材を、高等教育により育成する役割を担う。
- 大学は、キャンパスを実験の場として活用することにより、新たなモデルを提示できる。
II 我々の決意(コミットメント)(一部抜粋)
- 我々は、21世紀における科学的知識が政策と社会を支えていくことの必要性を認識し、政策と社会と学界がサステイナビリティ実現のために共進していく原動力として、大学の新しい使命を果たしていく。
- 我々は、NNs (Network of Networks)を科学のプラットフォームとして活用しつつ、共同研究と教育プログラムを通じて開発途上国の大学・研究機関と連携を強化し、必要に応じた支援をしていく。
- 我々は、持続可能な社会の実現に向けて、地域とともに、キャンパスを用いて新しい社会モデルを実現する役割を担う。