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さあ次の北海道大学へ 第11回ステークホルダーミーティングを開催しました
環境報告書2016より
2016年2月26日 ファカルティハウス エンレイソウ 大会議室
北海道大学の「ステークホルダーミーティング」は2006年に始まり、環境への取り組みについて、学内外の関係者が自由に話し合いをしてきました。今回は学内の教員・職員だけで開催。『キャンパスマスタープラン2006』に続く新プランがどうあってほしいのか、北大がどう進んでほしいのか、想いを語り合いました。
※プロフィールは2016年3月当時。※敬称略
松藤 敏彦
工学部 部長/環境保全センター長
江端 新吾
大学力強化推進本部 URAステーション主任URA
和田 肖子 大学力強化推進本部URAステーション URA
杉村 逸郎
産学・地域協働推進機構 産学推進本部産学協働マネージャー
城野 理佳子
産学・地域協働推進機構 産学推進本部産学協働マネージャー
佐々木 力
キャンパスマスタープラン実現タスクフォースメンバー/施設部長
長谷川 裕
キャンパスマスタープラン実現タスクフォースメンバー/施設部施設企画課課長補佐
大野 達哉
施設部環境配慮促進課サステイナブルキャンパス推進本部担当係長
加藤 博美
サステイナブルキャンパス推進本部事務補助員
ファシリテーター
今津 秀紀
凸版印刷株式会社
1 『キャンパスマスタープラン2006』を評価すると?
今津 まず『キャンパスマスタープラン2006』について「良かったな」と思うことと「こうすればもっと成果が出せたんじゃないの?」といったことを聞かせてください。
佐々木 『2006』は『キャンパスマスタープラン96』を継承していて、モノとして残った主なものは北キャンパス、エルムトンネル、中央ローンとサクシュコトニ川の再生ですね。
松藤 私はプランを作った後、どうケアしているかと全体の達成度が気になっているんです。一番気になるのは交通関係で、“自転車地獄”という言葉もありますけれど、あんなのを放っておいていいのかと思いますね。
長谷川 プランはあっても、皆さん一丸となっていない。それと、担当の人が代わると忘れちゃうんでしょうね。何か施設整備をやる時に「マスタープランをまず見てみよう」という気になってくれればいいんですが。
加藤 プランを作ったことで問題点を整理できたけれど、さらに、お金の問題を組織的に解決したら良かったのではないかと思います。予算を確保しにいくとか、次につなげる修繕費を積み立てようとか。
杉村 学外の人も含めて「皆さんにいいものを」という基本概念でプランを作っている。ただ、維持費とかがあまり考えられていない。それと、研究者にどういうメリットがあるのかが伝わっていないんじゃないかと……。
城野 施設環境マネジメントという捉え方から北キャンパスができてきたのはわかりました。現状、南と北の行き来が不自由なので、新しいバイパスを造ることも含めて交通関係をもう一度見直してもいいのかな。
松藤 工学部の前で自転車の通行量を測ったら、30分間に900台走ったんです。いつ事故が起きても不思議ではないのに、誰も対策に動かない。問題はプランを達成しようとしないマネジメント体質だと思うんです。評価を毎年やり、工程管理をしなきゃいけない。
長谷川 『キャンパスマスタープラン2006』の評価をやっていて気づいたのは「切り替える前の年にやることじゃなかったな」と。プラン策定後2年か3年で「進まないなら変えようか」っていうのはありますよね。
松藤 建物が建つと取り返しがつかない。プランの連続にならないんですよね。
加藤 10年、20年と長期プランに責任をもてる人材の確保が、まずやらなくてはいけないことかなと。
江端 『キャンパスマスタープラン2006』には「誰がいつまでに何をするのか?」がないんですよね。
大野 細かい話ですけれど、プランでは桑園門ができているはずなのに、まだできていない。出入りする方すべてにかかわることなので、より親近感をもってプランに取り組んでもらえたらうれしいなと思います。
今津 大学には、マネジメントみたいなところで長期のプランを見ていく人がいるんですか?
長谷川 継続して全体を見ることができる専門チームを作らないと、マネジメント的な話ができないですよね。
佐々木 そもそも「施設マネジメント」は、概念自体がそんなに古いものじゃないんですよね。北大でも『キャンパスマスタープラン96』になくて『2006』から出てくる。
江端 大学の経営に「マネジメント」という考え方があまりなかった。大学は学長をはじめ執行部が数年でどんどん代わっていき、代わると方向性も違ってくる。
和田 もしかしたらキャンパスマスタープランから、大学がもっている問題が見えてきているかもしれませんね。「みんな知っているのか?」と言うと、知らない。「やろう!」となってもお金がない。これからは、組織としてプロジェクトを作ってゴールがあって納期がある、そういう考え方をする必要がありますよね。
松藤 よく公務員が縦割りと言いますけれど、大学もそうですよね。お互いの“連携”があまりなくて“調整”でしょ?大学として1つのチームがあって、いろいろな担当がつながっていくのが本当じゃないでしょうか。それと、優先順位がなきゃいけない。
佐々木 『キャンパスマスタープラン2006』の中では「実現プログラムによって具体化される」としているんですけれど、その実現プログラムは何も書かれていないんですよね。
長谷川 「大学はこういう方向に進むんだよ」というアカデミックプランに対して「こういう方向性を作りました」というのがキャンパスマスタープラン。「それをどう進めていくかガイドラインを1つずつ考えようね」と、いたるところに出てくる「ガイドライン」が実現プログラムに近い。何を優先するかも、じつは個々に書かれているんです。
江端 問題は「誰が?」ってところですよね。
松藤 プランを遂行するための総長直属のチームがあって、みんながつながるという形ですよね。
加藤 マスタープランは楽しい仕事だと思うし、夢も詰め込める。全学的に参加したい人を募るのはどうですか?
江端 それはすごくいいと思うんですけれど、実際に重要なのはステークホルダーなんですよ。今やっているステークホルダーミーティングは非常に大事だと思って参加しています。本当に関係がある人が、実現に結びつけるためアクションプランまで考えてこそいいミーティングになる。
松藤 専門家に任せて、ちゃんと分析できて量的な指標が評価できる人を加えるべきだと思いますよ。
加藤 マスタープランのチームはあるんですか?
長谷川 「マスタープラン実現タスクフォース」という検討組織はありますが、今、新マスタープランをつくることで頭がいっぱいで、最近の成果としては、北13条の門が人を巻き込みそうなので改修しようという方向性を出したところ。多岐に渡っているので、やはり限られたことしかやっていけない。
松藤 私もそのタスクフォースのメンバーなんですけれど、委員の知識レベルが全然違うんですよ。
長谷川 多方面、多角的に話ができる人たちを集めなければと感じますね。
松藤 残念ながらそういう人は少ないですよね。ですから、チームを作って、みんなで勉強して、そこからスタートすればどうですか?
大野 たしかにメンバーのほとんどが、2週間に1回ぐらいの会議の2時間だけタスクフォースの頭になっている。
城野 メンバーは何人ぐらいいらっしゃるんですか?長谷川:16名ですか。
松藤 8を超えたらダメですよね。意見を言えなくなる。
杉村 5を超えるとダメ。
長谷川 今『キャンパスマスタープラン2006』の評価、反省をやっていて、いろいろな人からの意見をいただきたいわけですよ。これからつくる策定チームとそれを推進するチームとがある。だから今は大人数でもいいのかなと思います。
松藤 本気でやる人を集めて、みんなが勉強すれば短時間で済むと思います。権限と責任があるグループで進めると効率がいいですよね。
加藤 あと、トップを動かす力も必要かなと。たとえば北大のURAステーションは統轄する川端先生を動かすためのテクニックはどうされているんですか?
和田先生も問題意識はあるんですね。だから、情報をもっていって提案をしていくというところだと思います。
江端 「こういうふうにしたら絶対うまくいく」と、情熱と確信をもって説得できるかどうかですよね。あとはロジックがしっかりしていれば、たいていのことはOKを出してもらえます。
松藤 おもしろさとか楽しさとか、情熱とか本気さとか、そこじゃないですか?人を動かすのは。
江端 教員、研究者ラインと事務方のラインだと文化が大きく違うんですよね。我々のような所属のアヤシイ人たちが入っていって、ゆる~くやっていくのが1つのやり方なのかなと思っています。
2 北大にはどんなチームが必要か?
今津 次は新しいキャンパスマスタープランに向けてどんなチームを作ったらいいか、人と組織の話をしていただきます。
加藤 まず総長がいて、2人目としてキャンパスマスタープランのリーダーがいます。民間の企業のスキルや意識を取り入れるために、施設部から1人出向して、この人が民間との橋渡しをする。他に、サステイナブルキャンパス推進本部、予算担当、学生、札幌市で全8名に、プラス工学部。ここにはいろいろなプロフェッショナルの方がいますのでアドバイザー的にかかわってもらう。楽しんで情熱をもっている人に入っていただきたいですね。
城野:総長の下にキャンパスマスタープラン・リーダーとマネージャー。多分リーダーになるのは教員で、それをサポートする専門職的な方が付いて動く。その下は各部局ではなく、エリアごとの代表。あと、施設部、財務部。実働チームは施設部の方かな。その方たちをマネージャーがまとめながら、ヒアリングで学内の声を集め、具体案のマニュアルを作り、まとめた上で会議にかける。准教授レベルの先生方、次世代を担う方たちに入ってほしいですね。
大野 5人をタスクフォースのメンバーと考えました。まず「事務局、施設部、予算・財務」。あとはエリアに分けて「農学・理学」「工学・獣医学」「病院エリア」「産学連携本部・創成研究機構」。実働部隊は施設部で、困ったことがあればエリアの方に調整していただく。あと、外部から札幌市や専門業者の意見も取り入れる。でも基本的に大事なものは学内の5人で背負ってもらう。5人は学部をまとめられる人で、やっぱり教授クラスだと思います。
杉村 チームをつくるときに学部の教授を集めると「自分のところに有利なように」となってくる。だから、大学全体のことを本当に考えられる方にプロジェクトリーダーとして権限と責任をまかせてしまう。その下で5名ぐらいのサポートするチームをつくる。やる気のあることが大前提で、若い人がやってくれるといいですね。皆さん普段の仕事があるので10年間とかは無理ですから、ある一定期間「それだけやりなはれ」とすると動きやすいかな。
江端 総長直轄でステークホルダーが集まるタスクフォースがあり、意思決定する会議体が置いてある。そこから部局長に連絡がいって、部局にも浸透する形で組織設計をする。ここで言う「ステークホルダー」は理事、事務方部長、関係する教員、その他URA、産学連携マネージャーなど。この人たちが施設設備のマネジメントチームになり、それを「施設部、財務部の事務チーム」「少数精鋭の教員チーム」「横のつながりを担うマネジメントチーム」の3つに小分けします。それぞれのチームで話し合ったものを1つにまとめて会議体にはかっていくという設計です。
和田 マネジメントとしては、総長直轄で恒常的な部門があり、部局、広報などが関係してくる。チームとしては、実働の施設部、環境面などのサステイナブルキャンパス推進本部、先生方。会議に関連する知識がありそうな方を、その都度お招きするやり方もあると思います。あと、産学・地域協働推進機構、札幌市、財務部にも入っていただく。私たちURAはチーム作りでお役に立てると思います。これからは自主財源を確保するのに、施設を資産として活用するようになると思うので、利益を回すところまでもっていける組織にしたいと思いました。
今津 では、施設部の方に聞いていきましょうか。
長谷川 今度3月に合同タスクフォース会議というのがあります。生態環境タスクフォース、歴史的資産活用タスクフォース、マスタープラン実現タスクフォースが集まって「こういうことをしたいね」と話し合いをします。私の希望を言いますと、朝から晩までマスタープランのことを考えているチームが欲しかったんです。あれもこれもやりながらだと、やっぱり散漫になってしまう。
松藤 総長がいて、専任の総長補佐がいて、事務方が2人くらい。あとは外部からコンサルタントができる人を連れてきて手伝ってもらう。それで、ここは評価、公表、パブリックコメント、調整などを行う。ポイントは縦割りの排除。権限がある独立組織であって初めて機能すると思う。ついでにプランの定期的な見直し、工程管理が必要だろうと思うんですよね。やっぱり2年に1回くらいの見直しを行って、プランの修正をする。作りっぱなしで評価をやらないと大学らしいシステムにならないですよ。
佐々木 専任の先生と職員として愛のある人がいい。まずキャンパスが好きでないと。この人たちがURA的に調整ごとができれば、実りあるものができるんじゃないかな。また、外部の知見チームとして、コンサルタントか他の大学の先生か企業。もうひとつは外部から資金を持ってこられるチーム。大きなことを動かすレベルのお金を取ってこられる仕掛けまでセットになったプランが作れればいいな。
今津 お互いのアイデアの中で「これ、あり」って思うのは?
城野 やはり大型資金をとりにいくことに目標設定してチームをつくるとわかりやすいと思います。あと、先生方への負担。全体のバランスをとってくださる方がいない中では、頼みにくいというのが現実。
加藤 大学の土地とかの資産を利用するのは、そうだなと思いました。でも、私が住んでいる宿舎が今、取り壊されたらどうしよう?! 冗談はおいておいても現在の宿舎の位置にマンションでも建てたら、お金も入ってくるだろうし……。本当に自分たちで資産をつくることも重要だと思いました。
和田 人をどう選んだらいいかとか、働きやすくするにはどうしたらいいかとかも考えていかなきゃな、とあらためて感じましたね。杉村:当初は大型予算をとってこないといけないけれど、10年後もアテにしているとダメなんですよね。だから、基本、自分たちのやりくりで維持していくことを考えないとアカンかなと思っています。
長谷川 私は逆で、札幌市という箱の中でやっているわけだから、仲良くやっていかないと……。大学の土地も使って情報発信していかないと、施設の発展もないかなと感じているんですけれどね。
松藤 財務も大事ですけれど、チームを誰がつくるかという話とは分けるべきだと思うんです。やはりマネジメントの知識をもつ人に入ってもらって、現実的な戦略を立ててもらう。もう1つ、教員の負担のことなんですけれど、よけいな会議が負担なんです。本当に何か決めようとする会議だけやればいいんです。
大野 職員もなぜか選ばれた人だけいろいろなものが重なってしまう。何もない人もいる。その差ってなんだろう?やる気の違いだけなのかな?お互い責任をもって愛をもって仕事をしたら、もっとうまくいくと思うんですよね。
江端 大学の大きな問題なんですが、評価がちゃんとなされていない。評価体制がなくて差が出てこないから「やらなくてもいい」という人でも成り立ってしまう。有効な解決の手段はきちんとした評価だと思うんです。
松藤 リスペクトっていうんですか、お金じゃなくてもいいと思うんですよ。アウォードでも何でもいいので評価をしてあげてほしいですね。
3 自分ならどういう役割を担える?担いたい?
今津 これから新しいキャンパスマスタープランが作られる北大で「私だったらこんな役割を担いたい。なぜならば……」といったことを最後に発表していただきましょう。
佐々木 やりたいことはランドスケープデザイン。皆さんがもっている北大のイメージを大切にしつつ、ずっと残していくべき形で何かしたい。建物だけではなく、ポプラも牛も。あと、建物を造るだけではなくて、減らして、いい環境を維持することも大事かなと考えました。
杉村 計画をつくるところから、練り上げるところまでをやりたい。今まで培ってきた北海道大学のいいところは継承しつつ、維持していくために、まだ眠っている付加価値を掘り起こしていく。適格な対価をちゃんといただく。それでやっていけたらな、と思っています。
和田 1つはチーム形成。電波状況も怪しい僻地にこもって考える時間やチームをつくる機会をもつと、関係性や考えが深まったりするんですよね。そういった企画をやってお役に立ちたい。もう1つは資産活用。私は現在、いろいろな企業にヒアリングに行って博物館の事業化を考えています。もし入場料をとったら、博物館の意義とか来なくなった人とか機会的な損失もあるでしょうから、目先にとらわれない資産活用をできたらなと思っています。
大野 桑園門の担当がいい。北大病院と市立病院の連携だったり、桑園側からの北大の避難だったり、桑園駅からの交通機関の発達だったりも考えられるので、やるんだったら、ここがいい。
加藤 私は北大構内を散歩する。なぜならフォトジェニックな大学にしたいから。やっぱり「美しいなあ。気持ちいいなあ」と、どこを写真撮っても絵になる大学というのも、学生や市民にとっても重要な役割だと思いますので。
城野 先ほど発表した総長に付くキャンパスマスタープラン・リーダーをサポートするマネージャー。先生たちからいろいろな意見をヒアリングしながら、実感に沿った提案が作れると思っています。それで、北・中央・南キャンパスのバイパス計画を作ります。
江端 キャンパスマスタープラン・プロジェクトマネージャーをやりたい。なぜなら、楽しそうだから。こんなにおもしろい課題はないだろうから、解決できた時にはとても気持ちいいだろうと思います。
長谷川 私は施設マネジメントをやりたい。うちの大学は環境整備にかけるお金が今ないんですが、先生もいらっしゃるので戦略はあるし、観光資源的なものもあるし、それをどう活用していくかというマネジメントをやってみたい。
松藤 キーワードは「どんな仕事もおもしろい」。チームプレーの経験を振り返ってみると、町内会長のときに留学生30人連れてきて100人のパーティーをやったり、国際会議を温泉でやったりしました。仲間づくりをして、大変な仕事でも分担して協力すると楽しいですね。自分で決められて、工夫ができますから。
江端 何が楽しいって、自分でプランができて動かしていけること。先ほど言ったプロジェクトマネージャーは最初から最後までやっちゃう。自分もいいと思って作ったものを形にできる、しかも北海道大学というこんなに大きくて素晴らしい大学の中でできるっていうのは楽しいですよね。
今津 短い時間の中で、キャンパスマスタープランのヒントがたくさん出てきましたね。今日は、ありがとうございました。