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「カーボンニュートラルとネイチャーポジティブの視点から「北大キャンパスの未来」を考える2-dayワークショップ」を開催

サステイナビリティ推進機構は、5月24日(土)~25日(日)に学術交流会館にて、「カーボンニュートラルとネイチャーポジティブの視点から「北大キャンパスの未来」を考える2-dayワークショップ」を開催しました。

本ワークショップは、ファシリテーターとしてお招きした株式会社BIOTOPEの戦略デザイナー/システミックデザイナーの山田和雅氏、株式会社日建設計の三井祐介氏及び株式会社日建設計総合研究所の堤 遼氏の協力のもとに行い、フィールドワークやシステミックデザイン等のグループワークを通じて北大キャンパスの未来構想案をまとめました。本ワークショップには学部生・大学院生10名及び教職員5名が参加しました。

1日目は、参加者は最初に山田氏からワークショップデザインについての説明を受けた後、3つのグループに分かれ、札幌キャンパス内で写真撮影のフィールドワークを行いました。次に、写真をグルーピングしていく中で、北大キャンパスではどのような体験が生まれているのかを可視化し、参加者が撮った写真の裏側にある「こだわり」や「価値観」を「○○だけど、□□なキャンパス」として言語化しディスカッションを行いました。その後、今の北大キャンパスの良いところ(ポジティブな価値)をどのようにすれば今の10倍にできるかのリデザイン案と、その案が実現した時に北大キャンパスにどんな変化が起きているのかを議論しました。

2日目は、三井氏に各グループのリデザイン案をラフスケッチとしてビジュアル化していただき、それを元に、北大キャンパスでどの様な行動・会話が生まれて、それらを支えるインフラとしてどのようなものがあるかを議論しました。そして、堤氏から未来のキャンパスを実現していくための制約として脱炭素の視点で、サステイナビリティ推進機構の北岡真吾特任准教授から生物多様性保全の視点での講義が行われました。その後、講義やファシリテーターからのアドバイスを踏まえて、グループ毎にインフラを中心にリデザイン案を見直し、未来の北大キャンパスを実現する「企画案」をまとめました。

本議論の中では、地域との接続や地下空間の活用・動植物との共存など、カーボンニュートラルやネイチャーポジティブを踏まえ、well-beingを追求し、北大キャンパスの枠組みを再構築するような独創的な提案が多く出されました。最後に、参加者からワークショップを通じて実感した感想と、キャンパスビジョンを取りまとめる関係者へのメッセージを共有しました。

今後もサステイナビリティ推進機構は持続可能なキャンパス実現のために、様々な形で皆様とのエンゲージメントを進めて参ります。

参加者・スタッフによる集合写真
ファシリテーターを務めた山田氏
キャンパスのリデザイン案に関する議論の様子
リデザイン案を発表する様子

北大キャンパスの未来を考える2-dayワークショップ 参加学生による当日レポート

  • アイスブレイク

開始時間に向けて会場に少しずつ人が集まります。見知らぬ人だらけでみんな緊張している感じが漂っていました。そこにファシリテーターの山田さんがふらっと近づき一人一人に声をかけて緊張をほぐしていました。緊張はするけど楽しそうという雰囲気へと変わっていきます。2日間のワークショップが始まりました。

  • プログラムのイントロ

「どうすれば私たちはカーボンニュートラル・ネイチャーポジティブを実現しながら北大の未来の理想のキャンパスをデザインできるだろうか?」というテーマを全員で共有しました。

Day-1 ヒト視点からの未来のキャンパスデザインを妄想する

  • 「今」の北大キャンパスの良いところ・価値を考える(フィールドワーク)
  • 「未来」のキャンパスを妄想する

Day-2 ヒト・気候・生態系、三位一体の視点からキャンパスビジョンをプロトタイピングする

  • 未来のキャンパスを実現するための「制約」を学ぶ(カーボンニュートラルと生物多様性保全)
  • 制約を超えるための「戦略」を考える
  • 未来のキャンパスを実現する「企画案」を構想する
  • アウトロ:明日からの活動を考える
  • Day-1「今」のキャンパスの良いところ・価値を考える(フィールドワーク)

北大キャンパスを散策し、「好きなところ・場面」or「嫌いなところ・場面」の写真を撮影してきました。その写真をグルーピングしていく中でキャンパスではどのような体験が生まれているのかを可視化します。好き・嫌いと感じる裏側にある皆さんの「こだわり」や「価値観」はなんですか?という問いかけがありました。そこで見えてきた大事な価値観を「○○だけど、□□なキャンパス」として一度言語化しディスカッションしていきます。

  • Day-1「未来」のキャンパスを妄想する

< What if … ? > <もしも … だったら…?> という視点を基にどうすれば今の北大キャンパスの良いところ(ポジティブな価値)を今の10倍にできるのかを妄想していきます。もしも自分たちが考えたリデザイン案が実現したら… その世界線での北大キャンパスにはどんな変化が起きているのかを議論しました。

  • Day-2 「未来」のキャンパスの妄想に意味を付ける

日建設計の三井さんに前日のリデザイン案をラフスケッチとしてビジュアル化していただきました。そのスケッチを見て、どんな新しい行動が生まれているのか、どんな会話が生まれているのか、そしてそれを支えるどんなインフラが生まれているのかという議論が誘発されました。この議論を通して、妄想を妄想で終わらせないセンスメイキングが実践されていきました。

  • Day-2未来のキャンパスを実現するための「制約」を学ぶ(カーボンニュートラルと生物多様性保全)

日建総合研究所の堤さんからは、そもそもどうしてカーボンニュートラルを考えていくべきなのか。気候変動から日本のスケールへと落とし込み、北海道大学の立ち位置を示してもらいました。また、具体的に考えるべきポイントとして、へらす・かえる・つくるという手法と、その手法をどこに適用するのかという対象を整理してもらいました。

サステナビリティ推進機構の北岡先生からは、生物多様性って何だろうねという問いかけがありました。その1つの捉え方として、生きものの相互のつながりを示してもらいました。また、再生可能エネルギー施設の導入によって生態系を壊してしまう事例を通して、多面的に捉えて解像度を上げていくアプローチが必要だというアドバイスをもらいました。

  • Day-2制約を超えるための「戦略」を考える

カーボンニュートラル・生物多様性の視点も踏まえた上で理想のキャンパスビジョンのアイデアをどうブラッシュアップするのかという戦略を考えるフェーズへと移りました。特に「インフラ」をどうリデザインするのかを各チームアドバイザーから意見をもらいながらブラッシュアップしていきました。

  • Day-2未来のキャンパスを実現する「企画案」を構想する

ここまでの議論を整理して全体でディスカッションを行いました。

チーム:カレー
大学の役割は「次の社会の姿」を示すプロトタイプとなるべきだと主張し、地上は人と動植物が共存するエリアとして再編し、地下の機能を拡充して「クリエイティブな活動」を誘発するエリアとしてキャンパスを再生することを提案しました。

チーム:エンレイソウ
自然と都市のマリアージュをコンセプトに都市機能とキャンパスの魅力を引き出すことを提案しました。キャンパス内部では機能を集約し土地利用にメリハリをつけて自然を保全し、キャンパスの外縁部では周辺地域との交流の場を設けるというキャンパスの姿を提案しました。

チーム:ジンパ
グリーンエネルギーの活用やウェルビーイングを追求する中で交流が生まれ、地域のヒト・モノ・カネ・情報がキャッチされていきます。地域や社会に対して貢献できる大学のキャンパスを提案しました。

  • Day-2エンディング

最後にみんなで集まって感想とキャンパスビジョンを作る人へのメッセージを共有しました。こんな声がありました。
「みんな同じものに対しても違う認識・解釈があるのだと改めて実感した」
「枠組みを一旦忘れて考えを発散させていくことは大事だと感じた」
「札幌のど真ん中にある研究機関という北大の存在意義を伸ばして欲しい」
「北大らしさであるキャンパスの開放性を残して欲しい」

  • 参加しての感想

いつもは順序立てて、積み重ねていくという思考で物事を考えているのですが、妄想力をふんだんに活用することで発想を飛ばしていく体験に面白さを感じました。そうして出てきた提案はどのチームもワクワクしていてもっと考えたくなるものでした。個人的に尖った発想や先進的な考えが出来るのは才能ある人しか出来ないのだろうと思っていました。才能とかセンスという話ではなくて、自分は考え方を知らなかっただけだったのだと気が付きました。
全体で感想を共有した際に「慣れないことばかりで1日目で疲れてしまったから2日目行くのをやめようかな。それでも1日目で議論していたことがビジュアルとして示されていて感動して、また2日目も頑張ろうという気持ちになった。」という話が印象的でした。答えのないことを議論するからこそ、自分たちの頑張り・努力を形として反映することは大事なのだと実感しました。

(山田悠介)