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サステイナブルキャンパス国際シンポジウム2016 趣旨説明より 小篠 隆生 北海道大学工学研究院 准教授

2016年11月1日・2日に開催した国際シンポジウムの趣旨説明より

持続可能な大学と地域の発展のためのキャンパスの役割

サステイナビリティの概念を取り込んだキャンパスマスタープランとは

小篠 隆生 北海道大学 工学研究院 准教授

皆様、おはようございます。北海道大学の小篠と申します。どういう目的でこのシンポジウムをやるかというお話を、私の方からさしあげていきたいと思います。

北海道大学では2007年に「キャンパスマスタープラン2006」が策定されました。そこで大きく言われたのが、サステイナブルキャンパスの構築で、それを推進するために2010年にサステイナブルキャンパス推進本部といった組織が作られていったわけです。大学が大学だけのサステイナビリティを実現するのではなく、地域と連携した形で大学の運営を図ることがサステイナブルキャンパスの構築になるわけで、そういう趣旨でシンポジウムを開催しております。

今回は「持続可能な大学と地域の発展のためのキャンパスの役割」という大きな題を前提とした上で「サステイナブルキャンパスの概念を取り込んだキャンパスマスタープラン」とはどういうことになるのか考えていきます。やはり、社会とどういうふうに関係をもちながら、大学の役割を果たしていくのかという視点が、キャンパスマスタープランの非常に重要なテーマだと理解しております。

今年度から第3期の中期目標・中期計画期間に入り、現在、大学の大きな戦略である「スーパーグローバル」でありますとか、「近未来戦略150」というものがすでに進んでおり、そういう戦略・方針に合致したマスタープランの策定が求められています。

2011年のあたりは「サステイナブルキャンパスというのはどういうもので何をしていかなければならないか」ということがテーマでした。サステイナブルキャンパス自体がよくわかっていなかった。そこで海外の先進事例を調査し、その調査した大学から本学の国際シンポジウムに先生をお呼びするなどして、サステイナブルキャンパスの目標像をまず明確にした。それから目指していくべきアクションプランを作った、ということになるわけですね。

アクションプランを実現するために、今どんな状態にあるのかをチェックすることが必要になってくる。これがサステイナブルキャンパスの評価になるわけで、北米のAASHEでは「STARS(スターズ)」があり、他の評価システムも世界の中にはたくさんありますけれども、私どもは「ASSC(アスク)」という評価システムを作りました。そのASSCを使って評価をして、活動の進捗状況を検証できることになってきた。そうすると、今まであまり取り組んでこなかった項目や弱いところがわかってまいりました。

大学のサステイナブルキャンパスの評価は大きく3つあると考えています。世界的にコモンセンスにもなっているサステイナブル・ディベロプメントに必要な3要素「環境と経済と地域社会」があるわけですけれども、それに大学が合致するということで言えば、環境としてのキャンパス空間がある。経済としての大学運営もある。地域に対して大学の責任を果たすということで地域連携がある、ということになりますが、当然それに加えて、大学の根幹でありますところの教育・研究というものがある。この4つの項目がうまく関連づけられて動いていることがサステイナブルキャンパスということになるわけです。

北大のASSCの評価は、少しずつ得点率が上がってきていますけれども、環境部門の点数があまり上がってこない。これが北大の今の問題ということになるかと思います。一方で、美しい環境が残っていて、長く保たれた資産があるわけです。これはキャンパス空間において重要な要素で、こういうオープンスペースをどのように維持・保全して将来に継承していくかは、非常に大きなテーマになる。そのために「キャンパスマスタープラン2006」は作られたと言っていいと思います。この中では重要な街路、オープンスペース、自然、水辺の空間、歴史的建造物といったものをフレームワークの中で位置づけていくことが大事だというところは言えているわけです。

詳細なASSCの評価ですけれども、19の国立大学の平均は☆で示されているのですが、北大は☆に届いていないものが出てくる。パブリックスペース、ランドスケープ、エネルギー、インフラストラクチャー、ファシリティ、このあたり、いわゆるハードな環境に絡むところの得点が伸びていないとわかりまして、こういうところが大学のこれからの課題ということになるかと思います。

すでに私どもはキャンパスマスタープランの策定をスタートさせました。そういった中で、いくつかのポイントがあるのではないかと思っています。最初はキャンパスの空間資源をどういうふうに継承していくのかということ。それからキャンパスコミュニティ。つまり、学生や教職員のためのスペースがキャンパスの中に配置されているかを考えていく必要があるだろう。それから、戦略としてどうキャンパス空間を生かしていくのかがある。さらには地域と都市との連携によって、地域も含めた発展を考えていくことが必要になっていく。さらに、キャンパスを構成する施設や環境の質をどうやって高めていくのか。これはけっこう難しい課題で、資金やプランニングのことも含めて大きな項目になると思います。

ということで、今日は4人の先生に、今求められているキャンパスマスタープランの要素は何なのかプレゼンテーションしていただいて、ワークショップをしながら何か新しい項目を出していきたいということが、今回のシンポジウムの目的でございます。