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サステイナブルキャンパス国際シンポジウム2016基調講演概要

環境報告書2017より

持続可能な大学と地域の発展のためのキャンパスの役割

サステイナビリティの概念を取り込んだキャンパスマスタープランとは

2016年11月1日-2日 学術交流会館 小講堂・第1会議室

2011年から本学で毎年開催されている「サステイナブルキャンパス国際シンポジウム」。6回目となる今回は、国内外の研究者に基調講演を依頼する他、学生も交えてグループワークを開催し、これからのキャンパスマスタープランについて皆で考えました。

基調講演 11月1日 4名の基調講演それぞれについて、講演の一部を抜粋・要約して掲載します。

サステイナブルキャンパスに向けての戦略的なマスタープランの策定~物理的空間と持続可能性のインターフェイス~

エウジェニオ・モレロ ミラノ工科大学 建築・都市計画学科 助教

サステイナブルキャンパス構築へのアプローチを、プロジェクト例を交えて紹介。「大学は都市の変容と再生の活性剤」ととらえる考え方や、キャンパスの形態比較の研究も紹介され、講演は以下のように締めくくられました。

まとめとして、サステイナブルキャンパスのマスタープランに取り込むべき7つのポイントをご紹介したいと思います。

  1. マスタープランとは、プロジェクトそのものではなく、長期的なプロセスとしてとらえること。オープンな生態系が時を経て順応し学んでいく過程であり、その中で変化を受け入れ、最終的には回復力があるものになっていく。非常に重要な要素として、サステイナビリティの進捗を評価するモニタリング・システムが必要不可欠です。物理的な環境性能を計測できる機器があることが望ましいのです。
  2. 包括的なプロセス。地域との連携なしではサステイナビリティが達成できないということ。話し合いの場を設け、テーブルごとにテーマを設定して、地域住民に参加してもらい、学生も参加し貢献できる機会を設けています。
  3. シェアする社会、シェアする経済がサステイナビリティを高める傾向にあること。将来に向けてスマートフォンなどのツールを使い、どのようにサステイナビリティと組み合わせていくのかということです。空間をシェアし、新しい利用方法を考案することができると思います。たとえば駐車場を別の目的に利用することも可能です。
  4. 多様性のためのデザイン。幅広い年齢層の人々、いろいろなバックグラウンドの人々、それから、いろいろなタイプの環境が重要ととらえています。これは生物多様性の考えから来ていますけれども、いろいろな場所を回復力のある豊かな場にしていくことが可能だと思います。
  5. デザイン。これが人々の行動に影響を与えるということです。新しいマスタープランは、人々の行動や移動にどう影響を与えるのか。デザインや空間の存在は、移動のしやすさ・健康・ウェルビーイング・働き方、食のあり方にも影響します。キャンパス内で質の高い食べ物を提供すると、生活の中にも質の高いものが取り入れられ、行動に影響を及ぼします。
  6. 人の流れ、動線を考えておくこと。最近の課題は、キャンパス内におけるインプットとアウトプットです。これがどのようにデザインに反映されるのかが大きな課題になっています。たとえば、キャンパス内で生産した野菜を地域で消費することで、地域の中でサイクルを完結させます。ゼロエネルギービルディングと呼ばれる建物では、電力も地区内で収められるように配慮されています。
  7. マスタープランを策定することは、将来の高等教育のモデルを考えていくことにつながっていくと思います。21世紀の高等教育とその空間デザインは、どのように変化していくのか?新しい課題です。自在に変化させられる空間デザインを提供することが、サステイナビリティにつながるということも重要な点だと思います。
九州大学のキャンパスマスタープランの視点−「新キャンパス・マスタープラン2001」による戦略的アプローチ−

鶴崎 直樹 九州大学 人間環境学研究院・キャンパス計画室 准教授

九州大学は3地区に分かれたキャンパスを、平成31年までに福岡市西部で統合する予定。現地調査、コンセプトづくり、デザインマニュアルなどが紹介されました。

デザインマニュアルもキャンパスマスタープランも作っただけではダメで、建築が振る舞いを発生させるという発想が大切です。逆に言うと、振る舞いを捉えて、それをどう建築に生かしていくかというアプローチも重要で、アクティビティを捉えて、どうすればふさわしい空間を提供できるかを示すことが、マスタープランの1つの命題だと思っております。……(中略)……

マスタープランをつくるにあたっては、キャンパスの将来像あるいは戦略を作って、それを共有することが大事。2つ目には戦略を空間に変換する。3つ目はプロセス。先ほどもマスタープランはプロセスそのものという話がありましたけれども、やはりプロセスをデザインすることが重要だと思います。4番目に、魅力的なキャンパスを創っていくためには、空間の骨格形成となるマスタープランとともに、質的側面を担う方針、デザインマニュアルみたいなものが必要です。やはりキャンパスの多様なアクティビティに注目して、それを受け入れるキャンパスづくりが重要です。最後には、地域と共有できる戦略を立てて、各主体が一所懸命取り組むようにお互い働きかけることが重要ではないか、と思っております。

名古屋大学キャンパスマスタープラン2016
キャンパスマネジメント導入によるサステイナブルキャンパス実行計画

恒川 和久 名古屋大学 工学部施設整備推進室 准教授

図書館を地下に埋めて、30年後にはグリーンベルトを緑のオープンスペースとして再生しようとしている名古屋大学。マネジメントを中心に話が展開されました。

「キャンパスマスタープラン2016」の一番大きなテーマが、「世界水準のサステイナブルキャンパスへの創造的再生」となっています。マスタープランの中でサステイナブルキャンパスを定義し、「地球環境に配慮したキャンパスであるだけでなく、社会的・経済的にも長期にわたって持続可能な仕組みをもつキャンパスである」としております。「持続的に継承・発展すべきものは、この土地の歴史であり、蓄積された知である。これまで先人たちが築き上げてきた資産を尊重し、新たな技術や知恵を最大限活用して、大学の機能強化や経営に貢献する良好な教育・研究環境を、持続的に維持・更新することが可能なキャンパスをつくりましょう」と、今あるキャンパスを創造的に再生していくことをメインテーマに掲げています。……(中略)……

私どものマネジメントは、包括的なキャンパスマネジメントによる一貫した施設整備や運用をしてきた点が1つ目の特徴です。もう1つは、施設管理部と常に協働しながら「何か新しいことを考えよう」という意識の下で、一体となって経営に貢献するマネジメントを実現していること。さらには、我々はやはり教員であり研究者でありますので、理論的根拠をもってマネジメントをして、それを大学の中だけでなく外部も含めてフィードバックをしていく気持ちがある。そのフィードバックによって循環していこうとしているのが、もう1つの特徴になっていると思っています。

大阪大学 キャンパスマスタープランの視点
Points of View on Sustainability in Osaka University CMP

吉岡 聡司 大阪大学 キャンパスデザイン室 准教授

「マスタープランは計画よりもプロセスの側面が大きい」とし、今ある資源や受け継がれてきたものを生かしながら、プラン改訂に取り組む現状が紹介されました。

サステイナビリティの2つの視点をあげてみました。1つは現実的な問題がいろいろあります。たとえば人が減ってしまう、緑が減ってしまう。そういうものはある種ネガティブな側面があります。逆にポジティブな側面は、キャンパスマスタープランがあることによって「この大学のキャンパスがこういうふうに良い方にいく」という考え方を共有できると思います。たとえば「こんな坂があります」とか、みんな口には出さなくても良いものだと思っている。ところが「こういう良い面があるよね」と共有できていないことがある。学生、教職員はもちろん、地域の人とか行政と伝統や夢を共有していくことが必要。それが都市のモデルになるような、リビング・ラボラトリー、生きた実験場としての性格をもっていけば良いのではないかと思っています。……(中略)……

キャンパスマスタープランは次の視点が基本になるのではないでしょうか。伝統を受け継ぎつつ、夢をできるだけ多くの方々と共有する。そして、サステイナビリティのモデルになっていく。そういった概念がこれから広がっていくと思うので、キャンパスのマネジメントとしてPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)を進め、財政状況の変化に柔軟に対応する。計画を実行するためには、行政との協議は重要になってくると思っております。繰り返しですけれども、マスタープランは意識を共有するためのもっとも重要なツールだということを強調したいと思います。