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サステイナブルキャンパス国際シンポジウム2016基調講演より 吉岡 聡司 大阪大学キャンパスデザイン室 准教授

2016年11月1日・2日に開催した国際シンポジウムの基調講演より

大阪大学 キャンパスマスタープランの視点

−Points of View on Sustainability in Osaka University CMP−

吉岡 聡司 大阪大学 キャンパスデザイン室 准教授

皆様、こんにちは。本日は、大阪大学のキャンパスマスタープランの内容、それから、本学も改訂作業をやっているところでございますのでそういったお話と、それがサステイナビリティという視点でどういうことなのかということをお話し申し上げたいと思います。

まず特徴と今までの経緯みたいな話ですが、大阪大学には大きな3つのキャンパスがございます。元からあったのが豊中キャンパス。これは1年生が通うキャンパスです。それと、吹田キャンパスという理系の研究所と学部が多いキャンパスで、この2つを合わせると、北海道大学のキャンパスと同じくらいの敷地面積になっています。豊中キャンパスと吹田キャンパスはどちらも主な部分が1960年代に整備されています。もう1つ、箕面キャンパスは、元は大阪外国語大学でございました。それが2007年に統合されて1つのキャンパスになりました。移転のプロジェクトが一昨年から動き始めて、東京オリンピックの半年後には完了しないといけないという厳しいスケジュールになっています。

本学の場合はフレームワークの特徴をもっておりまして、モレロ先生もおっしゃいましたけれども、マスタープランというのは、計画という側面よりもプロセスの側面が大きいんだと、まさにそのことを私どもも思っているところでございます。今ある資源や受け継がれてきたものを生かして、空間のフレームワークをしっかり守り育てながら作っていきましょう、となっております。

では、サステイナビリティという視点でどういうことが言えるか、2つの視点をあげてみました。1つは現実的な問題がいろいろあります。たとえば、人が減ってしまってどうしようもなくなるとか、緑が減ってしまうとか、そういうものはある種ルールで縛らないといけないネガティブな側面があります。逆にポジティブな側面は、キャンパスマスタープランがあることによって「この大学のキャンパスがこういうふうに良い方にいく」という考え方を共有できるかなと思います。たとえば「こんな坂があります」「こんな池があります」とか、みんな口には出さなくても良いものだと思っていることがあると思います。ところが「うちの大学はこういう良い面があるよね」と共有できていないことがあるんじゃないかということで、学生、教職員はもちろん、地域の人とか行政とかいろいろな人と伝統や夢を共有していくことが必要である。それが都市のモデルになるような、リビング・ラボラトリー、生きた実験場としての性格をもっていけば良いのではないかと思っています。

サステイナビリティの最重要キーワードというのは、ダイバーシティとフレキシビリティだと思いますが、あと、寛容性みたいな話も入ってくるのかもしれないと今ちょっと思いました。それで、地域の市民や学生から見ると、やっぱり大学は未だにブラックボックスなところが大きいんじゃないかと思います。キャンパスマスタープランは、そういったことをつまびらかにして共有するための最重要ツールではないかなという見方をしております。ですから、本学のキャンパスマスタープランの改訂は、施設の担当者として本音で語りかける気持ちをもって取り組んだつもりでございます。

少し具体的な話に入っていきます。キャンパスに3つのゲートのような空間があって、ランドスケープの整備を周辺の人たちと協議しながらやってきました。地域の行政に「キャンパスマスタープランはこういうことを大学が考えているんです」とお示ししたことで、補助金をいただけることになったり、警察との協議に協力していただいたり、すごくいい面に働いたことがあります。ゲートの整備ができたのは、やっぱり行政といかに協力したか。行政がなぜ協力してくれるかと言うと、周辺に住んでいる方が「それいいね」って言ってくれたから、地域のニーズにぴったり合ったからだと思います。

事例ですけれども、大学のグラウンドと市の道路、ここが6mくらいの高低差がある階段になっていて、ものすごく危ない。学生が自転車をかついで下りるという、非常に危険な状況になっていました。そういうことをワークショップで話していくと、警察もいろいろ協力してくれました。コンセプトをもって、あるいは交通量を調査して「実際の横断歩道の場所とニーズが合っていませんね」とお示しすることによって、補助金をいただいたりして整備がうまくいったことがありました。

さて、2016年の改訂はどういうことを狙ったのかということでございます。サステイナビリティへの要求が高まり、大学の経営層が考えていることを実現するために、新しくサステイナビリティの章を作り、アクションプランというか実行計画の部分を補強した、ということが中心になっています。もう1つは、サステイナビリティに関する記述の強化、そして、キャンパスマネジメントとして特に強化すべきことを考えました。3つ目が、リーディングプロジェクトという名前をつけて、「こういう場所はきれいにしたほうがいいんじゃない?」というプロジェクトをできるだけたくさんあげています。固定的な年次計画みたいな形を書いてしまうと、財政的な状況などで事情に合わなくなってくることが多いと思うんですね。それで、あえて柔軟に考えられるようにしています。

新しく作ったサステイナビリティの章は5つの章から構成されています。1つはエネルギーマネジメント。2つ目が稼働率の向上と建物の総量を適正化していくマネジメントをやっていきましょう、そのためには評価アセスメントみたいなことが重要ですね、といったこと。3番目が、じゃあロングライフ化を図っていかないといけませんねということ。そして4番目に災害に備えるマネジメントということで、たとえば建物のトリアージを行うとか、そういった方針を示している。最後がですね、本学のキャンパスでは一部に建物の密度が高くて建て替えにくいところがあるので、どこかを壊して次に造るサイクルを考えましょうといった方針。こういったもので施設としてのサステイナビリティを捉えています。

キャンパスマネジメントとして特に強化すべきこととして、2つあげておきます。1つは、お金をとりながら面積を回していきましょうということ。今まではクレームを抑えるために使わせない維持・管理みたいになっていたんじゃないかと思うんですね。それでは空間の質に結びつきませんので、お金をとってもいいから、しっかり回していきましょうということで、アクティブユースとメンテナンスの状況を両立したい、というのが1つの考え方。もう1つは、パブリック・プライベート・パートナーシップ (PPP)とコンペティティブなアプローチ。おもしろい事例として、学生が作った屋台があります。その屋台が学生に受け継がれていって、オープンカフェとかバーみたいなものを実験的なプロジェクトとしてやっています。リビング・ラボラトリーとは少し違うんですけれども、キャンパスの中でしかできないことってあるだろうと思いました。吹田キャンパスのメインストリートは、車がヘタをすると100㎞/h出し、非常に危ない。それでコブを作って、車がスピードを出せないようにしました。目立たせるペイントをして、せっかくだから足跡をベタベタとつけたり、じつは猫の足跡も混じっていたり。そういったキャンパスの中でしかできないようなおもしろいことをやっていくっていうのがいいと思います。コンペティティブな考え方ということでは、サイバーメディアセンターというコンピュータの情報教育をやっているところにコモン空間が造られるということで、「ぜひ学生のアイデアを集めよう」とコンペティションをやりました。建築の人しか応募できなかったらつまらないので、3つの部門を作りました。使い方・イベント部門、愛称・ロゴの部門、デザインの部門です。文系の学部からも応募と入選があって、バランスのいいコンペになったと思っています。

ここからはリーディングプロジェクトの表現ということで、あまり年次計画的に縛られないように、どのようにプログラムを表現しておくかという話です。「プロジェクトがあるだけ書いてしまえ」という感じになっています。たとえば、バスロータリーのプロジェクトは、バスが危ないからロータリーを造らないといけないと要点だけを書いています。それが表とリンクしていて「プロジェクトはこういう内容で、こういう経緯があり、予算の度合いや緊急性から見ると、このように評価できます」というマトリックスを作って準備をしておく。年次計画的なものは短いスパンでできるだけ更新していくことで柔軟性をもたせています。

最後に、現在の取り組みやこれからの動きということでご紹介しますのは、先ほど申し上げた、元の外国語大学があった蓑面キャンパスです。このキャンパスは2007年に統合された時に1年生がメインキャンパスに引き抜かれてしまったので、どんどんサービスが低下していったんですね。それで、市に協力していただき、図書館と文化交流施設を造ってもらい、それを利用させていただく形をとっています。せっかく協力をするのなら、再開発エリア全体がキャンパスと呼べるようなものにしたいと思って、今まさに取り組んでいるところです。「そのためにはもっと企業さんにも入ってきていただける連携を考えないといけないね」と、LEED-ND(リード・エヌ・ディー)、Neighborhood Developmentということで、エリア開発版の環境認証の評価を取得することを狙っていたりします。

街の理想像として、こんなことを描いていかないといけないと思っています。蓑面市の文化や学術の拠点であることはもちろんですけれども、やっぱり学生の活動が常に表に出てくるものにしたい。たとえば、メインストリートで卒業生が結婚式をできるとか、日常的に屋台が出ているとか、そういうものにしていきたいなと思っています。大学はこういうポジションで、市はこういうポジションとした時に、他にも地権者がいますので、その人たちをもっと上手に巻き込んでいかないといけないと考えています。

では、最後にまとめ。キャンパスマスタープランというのはやはり下記の視点が基本になるのではないでしょうか。伝統を受け継ぎつつ、できるだけ多くの方々と共有するということ。そして、サステイナビリティのモデルになっていかなければならないということ。そういったサステイナビリティの概念に、これからどんどん広がっていくと思うので、それへの対応とか、キャンパスのマネジメントとしてPPPを進めることとか、財政状況の変化に柔軟に対応できるということ。計画を実行するためには、特に行政との協議は重要になってくると思っております。繰り返しですけれども、ダイバーシティとフレキシビリティということと、大学は未だにブラックボックスなところがありますよねとか、マスタープランというのは意識を共有するためのもっとも重要なツールなんですよと、いうことを強調しておしまいということにしたいと思います。ありがとうございました。