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サステイナブルキャンパス国際シンポジウム2016基調講演より 恒川 和久 名古屋大学工学部施設整備推進室 准教授

2016年11月1日・2日に開催した国際シンポジウムの基調講演より

名古屋大学キャンパスマスタープラン2016

−キャンパスマネジメント導入によるサステイナブルキャンパス実行計画−

恒川 和久 名古屋大学 工学部施設整備推進室 准教授

皆さん、こんにちは。名古屋大学の恒川でございます。今日は名古屋大学の「キャンパスマスタープラン2016」をご紹介するのですが、ハードな計画については簡単に触れ、マネジメントのところを中心にお話ししたいと思います。

まず「キャンパスマスタープラン2016」の一番大きなテーマが、「世界水準のサステイナブルキャンパスへの創造的再生」となっています。マスタープランの中でサステイナブルキャンパスを定義し、「地球環境に配慮したキャンパスであるだけでなく、社会的・経済的にも長期にわたって持続可能な仕組みをもつキャンパスである」としております。「持続的に継承・発展すべきものは、この土地の歴史であり、蓄積された知である。これまで先人たちが築き上げてきた資産を尊重し、新たな技術や知恵を最大限活用して、大学の機能強化や経営に貢献する良好な教育・研究環境を、持続的に維持・更新することが可能なキャンパスをつくりましょう」と、今あるキャンパスを創造的に再生していくことをメインテーマに掲げています。

マスタープランの表紙にもなっている図は、現在の航空写真です。槇文彦先生が設計した豊田講堂から伸びるグリーンベルトがキャンパスの骨格になっています。後背地に緑があり、向こうに名古屋の都市が見える。30年後には、今グリーンベルトに建っている図書館を地下に埋めて、グリーンベルトを緑のオープンスペースとして再生しようとしています。

本学は東山キャンパスというメインキャンパスがあり、鶴舞・大幸というインナーシティのキャンパスが2つあります。キャンパスにはだいたい2万人ぐらいがおりまして、都市と共生するキャンパスを創ることが大きなテーマになります。

私どものマスタープランは6回目の改訂になりました。6年ごとに改訂し、毎回少しずつテーマを積み重ねて、マスタープランそのものも進化を重ねて、より実効性のあるものにしていっております。

今大学が掲げているアカデミックプラン「松尾イニシアティブ2020」という目標、それをいかに実現するのかが大事なテーマです。そのために計画コンセプトと運営コンセプトという2つの軸に分けておりまして、計画コンセプトではフィジカルなプランをイメージする言葉が並び、運営コンセプトではそれをどう実現するのかというテーマが並んでいます。それに基づいた「10の主要テーマ」でも、アクションプランも施設整備に関するプランとマネジメントに関するプランに分けて話を展開しています。両方が同じぐらい重要だとするところが、本学のマスタープランの特徴かと思います。

では、そのキャンパスマネジメントについてご紹介します。まずキャンパスというのは大学の大きな資産、経営資源であるという認識がある。経営にあたっては資源をどう活用するのか、それがどんなふうに大学のミッション達成に貢献するのかが大事だ。そのためにスペースやコストやクオリティをマネジメントすることを総合的に考えましょう、ということを概念としています。マネジメントは大きくファシリティマネジメント、デザインマネジメント、エネルギーマネジメントという3つに分けております。マスタープランと同時に作りました「総合的な中長期マネジメント計画」という具体的なアクションが書かれているものでは、クオリティ、スペース、コストに触れ、それぞれ対象別のマネジメントと目標別のマネジメントで相互補完していく体制をとっております。

マスタープランファミリーというような、いろいろな冊子も作っております。サインマニュアルやユニバーサルデザインマニュアルから、点検評価の報告書、環境報告書といった、マニュアル類を補完するものもあり、これらがPlan、Do、Check、ActというPDCAサイクルを回る形で規定や評価類を運用しています。

マスタープランの第2章は点検評価と課題で、前回の「キャンパスマスタープラン2010」の評価をまずします。建築学会賞をいただいたりして我々は評価を受けているという肯定的な部分がある一方、なかなかできていないこともあります。項目それぞれの達成度を表すグラフから、「交通と地域連携は弱そうだ」「建て詰まりの進行と美しさの欠如への対応もまだまだ」といったことを課題に掲げ、なおかつ教職員や学生に1,000人規模のアンケートをとり、課題を掲げています。上位にあがってきたものが次のマスタープランのテーマになっていきます。

第3章のフレームワークプラン、30年後の長期ビジョンは、改訂しても、そんなに変えるものではありません。ですから、2001年に作ったマスタープランの基本ゾーニングは基本的に変わりません。図書館を地下化してオープンスペースをキャンパスの軸としながら、まわりに学生が集まってくる形に全学教育棟などを再編していく。それから、高層化ができるところは高層ビルを建てて、教育・研究施設を集約する、というような再開発の大きな方針があります。

4章のアクションプランは、地域連携、パブリックスペース、交通、防災、セキュリティといった課題に対して、それぞれ長期的な目標と点検評価と課題、それからこの6年で何をするのか。お金をもらう整備と学内予算による整備、それから、お金をかけないで運用による対応という3つに分けています。それぞれ点検評価の時にどこまで達成できたのか見ていき、絵に描いた餅にならないようにしようというのが特徴であります。

最後の5章では、マネジメントのアクションプランで、まずファシリティマネジメントのPDCAサイクルを回す仕組みを書いています。大事なのは、現状把握によって課題を抽出する点検・評価ですね。それに基づいて、具体的な目標を設定します。そこにはもちろん「大学の経営方針を生かすための」という目標があります。それによって実現可能な政策を立て、実際のプロジェクトを起こし、建物の運営・維持をします。さらに目標を確認しながら再評価をするPDCAサイクルを回していきます。もう1つ大事なことは、これらを回していくためのエンジンとして、実行体制、データベース、財源的な担保、実行するための仕組みが整っていることです。

我々は「キャンパスマネジメント本部」というものをもっていまして、そこに施設・環境計画推進室、私どもがいる教員組織と事務組織である施設管理部があり、それらが教職協働という体制でマネジメントチームを作っている。それにいろいろな専門家の方々や学生、教職員等がかかわって、外部の方とも連携しながら、チームを作っている。毎月、役員の方と定例会議をしながら状況を確認し、毎週、理事と大事なポイントについてミーティングをする。施設管理部と我々の中で打ち合わせをしながら、今何をやるべきなのかというチェックリストを作って進めていく体制をとっています。

アクションプランに書かれていることは「大学経営に貢献するファシリティマネジメント」で、ライフサイクルマネジメントによる持続可能な施設の運営、スペースマネジメントによる戦略的プロジェクトスペースの創出、アセットマネジメントによる宿舎等の圧縮と効率化というような話。それから、デザインマネジメントとエネルギーマネジメントです。

ここからはキャンパスマネジメントの特徴的な取り組みをご説明します。まず、クオリティ。研究を加速するコミュニティ空間の創出ということで、どんなことを研究者は望んでいるのか聞き取りながら、どんなふうにデザインしたらいいのかを取り入れています。たとえばMix-lab(ミックス・ラブ)という生物系と化学系が融合する研究所ができた。いろいろな企業が入ってくる産学連携のスペースに、コモンスペースを造りながらテナントオフィスを造っていき、品質を確保する。あるいは、新しい建物を造る時に、造る前から要求条件をきちんと定めて細かいPDCAを回しながら、その要求性能を設計段階の何段階ものプロセスで検証していく。それを検証しながら実行に生かすことをやっています。

工学研究科では1994年から2011年までの20年ぐらいの間に建物がだいたい4万平米くらい増えているんですけれども、化学系とか電気系とかいわれている基幹の学科の面積はほとんど変えていない。みんなが使える共用スペース、プロジェクトスペースをたくさん造り、スペースマネジメントとしてやっています。今では全学で8万平米くらいの共有スペースを運用しています。

ここからはコストの話、どんなふうに財源を確保するのかということです。まずは建物を点検評価する仕組みを作っています。毎年、建物を各部局の担当者レベルでチェックし、さらに専門家が見て、問題があるところを改善します。そのためのお金として、各部局の予算の数パーセントと本部経費で約5.2億円を財源として、これらを計画的に改修する。今、スペースチャージに置き換え、スペースに応じてお金を徴収して運用することをやろうとしています。

ここからエネルギーマネジメントの話ですけれども、井戸水をきれいにして飲料水にしたことによって浮いたお金で省エネ改修をするというような循環的にお金を回す仕組みを作って、それで省エネを推進しています。

昨年のASSCの評価では、運営、地域社会、教育と研究、それぞれかなり高得点をとることができ、国内の大学で唯一「プラチナ」という認証をいただきました。分野ごとの得点率を見ると、強いのはマネジメントにかかわるところで、スペース、環境にかかわるところは改善ポイントだと見えてきています。

我々は次の展開に向けて「この建物がどんなふうに造られていくのかを群として考えていこう」ということを、新しい考え方として取り組もうとしています。たとえば通り抜け空間があちこちにあって、パッサージュがリンクすることによってキャンパスの内部をつないでいくという話ですね。デザインに関して言うと、理系ゾーンにある建物は、日射の遮蔽等を兼ねるルーバーをずっと作っていく。それぞれのルーバーのデザインは一見違うけれども、全体として群で見ると1つの景観を成していく作り方で考えていこう、と。1960年に豊田講堂を設計された槇さんの理念を継承することを今、デザインのプランとして考えているところであります。

まとめですけれども、私どものマネジメントは、包括的なキャンパスマネジメントによる一貫した施設整備や運用をしてきた点が1つめの特徴です。もう1つは、施設管理部と常に協働しながら「何か新しいことを考えよう」という意識の下で、一体となって経営に貢献するマネジメントを実現していること。さらには、我々はやはり教員であり研究者でありますので、理論的根拠をもってマネジメントをして、それを大学の中だけでなく外部も含めてフィードバックをしていく気持ちがある。そのフィードバックによって循環していこうとしているのが、もう1つの特徴になっていると思っています。どうもありがとうございました。