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サステイナブルキャンパス国際シンポジウム2015 趣旨説明より 小篠 隆生 北海道大学工学研究院 准教授

2015年12月3日に開催した国際シンポジウムの趣旨説明より

持続可能な社会実現のためのチーム・ビルディング

世界の課題に取り組む大学の新たな組織づくりとサステイナビリティ・オフィスの役割

小篠 隆生 北海道大学 工学研究院 准教授

北大の小篠でございます。イントロダクションとして、今回のシンポジウムの目的をお話ししたいと考えております。

これは毎年出している北海道大学が狙うサステイナブルキャンパスに向けてのタイムラインです。まず大きくは2007年、「キャンパスマスタープラン2006」を作りました。その翌々年に洞爺湖サミット、G8大学サミットがあったときに、北海道大学においてG8大学サミットが開かれ、「札幌デクラレーション」が宣言されました。これらでサステイナビリティを大きくめざすことになり、2010年の11月に「サステイナブルキャンパス推進本部」ができました。その翌年から国際シンポジウムを開催しており、今回5回目となります。

このシンポジウム、ここで生まれた成果を、「アクションプラン」という形、あるいは「評価システム」という形、それから「大学と地域の連携」という形で創ってきたわけです。今回のテーマでは先程来ずっとお話が出ております、世界の課題に取り組む大学として、どういう新しい組織を創れば良いのか、という話をしたいと思っています。

じつは来年度から、新しい中期計画・中期目標の期間に突入します、その中ですぐにつくると設定されているのが、キャンパスマスタープランのリバイス。2006年から10年経ち、新しいキャンパスマスタープランをつくるわけです。今、北海道大学において「北海道大学近未来戦略150」が作られ、「スーパーグローバル」という大きな動きをしています。特にそのスーパーグローバルの中で「北海道ユニバーサルキャンパスイニシアチブ」が動いていますが、その大きなテーマは「世界の課題解決に貢献する大学」となっています。ですので、その課題解決をするための組織立てをどうしたらいいのか、が出てくるわけです。

最初2011年にオフィスができた際には「サステイナブルキャンパスというのは何だ?」、自分たちはそう名乗っているけれど、全然わからなかったので、このサステイナブルキャンパスの目標像を明確にしようと、このシンポジウムを開催しました。そのことによってアクションプランができました。プランを実行していくのですけれども、この実行の方向性が正しいのかどうかが誰もわからない。といった中で、実行したものについての評価が必要になる、評価システムの必要性が出てくる、それが2012年のテーマです。それで評価システムを確立していった。検証すると、北海道大学の強みと弱みがわかり、地域と大学の連携があまり盛んではない、となってきたわけです。それをこのシンポジウムで、2013年と2014年で話をしていこう、となったわけです。それで今年は先ほども申し上げた形で、ある種、根源的な課題かもしれませんが、サステイナブルキャンパスの活動していくために、どんなような組織を創っていく必要があるのか、が今年のテーマになりました。

私たちの作ったサステイナブルキャンパスの活動を、どんな状態にあるのか、大学はどんな状態にあるのかということを示す評価システムを「ASSC」、Assessment for Sustainable Campusの頭文字をとってASSC(アスク)と呼んでおります。これを商標登録して、アジアで初めての評価システムと呼んでもいいかな、と思っております。

サステイナビリティあるいはサステイナブルキャンパスを考えるときに、大きく3つの方向性、環境と経済と社会があるのは、もう皆さんご存知の通りです。それをキャンパスに置き換えますと、「環境」はキャンパスの空間、「経済」は大学の運営、「地域社会」は大学の社会的な責任、という形が対応します。環境としてのキャンパス空間、それから大学運営としての経済、地域としての地域連携というような話がある中で、もうtrueつ大事なのは、教育・研究です。その教育・研究を全部含めた、この4つの関係が非常に綿密に連携し合うことで、サステイナブルキャンパスが生まれていくだろう、ということはもうご承知の通りだと思います。

サステイナビリティを考えるときに、活動の種類だけじゃなく、活動の範囲も広がっていくことを示しているわけです。活動の範囲がどんどんレベルを上げていくと、いろいろな分野との協働が必要になり、当然のことながらステークホルダーも増えていく。そういった意味で多様な協働も必要であれば、時間がかかる場合もある。大学はこれらのすべてに関わる必要がある、すべてのレベルで対応できる組織の創造と人材の確保が必要になってくると言えます。

この事例は昨年のシンポジウムで講演をしてくださったルクセンブルク大学のアリアネ・ケニッグさんの話です。ルクセンブルク大学が新しいキャンパスを造るときに、大学としては大学を拡張したいというニーズがあり、都市としてはルクセンブルク南側の、重工業地帯であった南部地域の再生をしていくという、国としてのニーズもあった。閉鎖された製鉄所に新しいキャンパスを造る、そういう計画を作ったわけです。キャンパスができるだけではなく、オフィス地区、それから公園、さらに住居を一体として計画を進めていく、という話になっていく。そこで大学はどうするか、という話です。この計画を進めるために大学ができることは、ここがルクセンブルク大学のおもしろいところだと思います、「計画に寄与できる人材育成のためのカリキュラムを作ろう」となったんです。どうしてかと言うと、この計画、いろいろな方々が参加していく、様々なステークホルダーを巻き込みながら合意形成を図っていく、そういった中で地域のサステイナビリティを高めていく。そういうところに寄与する専門家がじつは必要だろう、となったわけです。その計画を進めるための人材をどうやって大学がつくっていくのかを、実践しながらやっていく。後でタンジー先生がリビングラボラトリーの話をしてくださると思いますけれども、そういうことを含めて考えていく必要がある、と言っているわけです。

これはまた違う事例、ブラッドフォードというイングランドの北部地域、そこの大学と市が進めている都市の再生と、大学のキャンパスの再生とを、両方進めていくために作られた実行組織です。ここでも中心市街地に立地している大学は、その中心市街地が構造転換で疲弊、都市再生のために大学の力を使う必要性が出てきました。イングランドは地域と連携することによって「お金を出しますよ」と文部省の政策があったわけです、大学はそこから資金を得ることができる。一方で市の方は、構造的な資金を得ることができるわけです。この2つの資金を組み合わせながら大学の学生寮とか、一般の住宅を整備していくわけです。こういう計画を進めていくため、やはりスキルをもったプロフェッションが必要になると思います。

これはサステイナビリティ・オフィスがどういう関係で活動しているのかを調査した資料です。ポートランド州立大学、オレゴン大学、スタンフォード大学、それからUCバークレー、各大学とも、このサステイナビリティ・オフィスに学生と教員がきちっとかかわって、さらに、これはポートランド州立大学の事例ですけれども、Institute for Sustainable Solutionという大学の教育研究部局と密接にかかわりながら、活動を進めていることが見てとれます。

この事例は九州大学のキャンパスマスタープランの策定組織を描いたものです。様々な専門分野の人たちが協力をすることが必要になります。さらに、この「New Campus Planning Office」と言っている、日本語で言うと「新キャンパス計画推進室」。教員組織ですが、人間環境の専門家、工学部、さらには芸術、農学、そういった専門分野の教員が参画しています。

これは、日本の大学のキャンパス計画組織を類型化したものです、従来型、連携型、合同組織型、それから専任組織型という4つの型があります。九州大学も専任組織型に属し、大きな基幹大学が専任組織型をとっており、その必要性が高まっていると言えます。ところがこの組織は、学内の計画づくりに特化した組織体制であったり、運営に特化して他の活動、たとえば教育はできても、学生の参画がなかなかできない、地域と都市との連携もなかなか対応できない、という問題を抱えています。

それで、今日の課題になるわけです。北大がめざす新しい課題を解決できる組織は、どういう仕組みや体制が必要でしょうか。教員や学生が、地域のコミュニティとどういう関係をもつことが必要でしょうか。そのためにどんなスキルを身につけることが必要でしょうか。あるいは、どんなコラボレーションが実現できるでしょうか。今日は3人の方から基調講演をいただき、その後のパネルディスカッションで、そういう話が皆さんと一緒にできればいいと思っております。今日はどうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。