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世界の課題解決と持続可能な社会構築に向けた大学の体制 サステイナブルキャンパス国際シンポジウム2015 パネルディスカッションより

2015年12月3日に開催した国際シンポジウムのパネルディスカッションより

パネリスト

※プロフィールは2015年12月当時。※敬称略

ジュリー・ニューマン

マサチューセッツ工科大学サステイナビリティ・ディレクター

ジェームス・タンジー

ブリティッシュコロンビア大学 教授

田中 英紀

名古屋大学 施設・環境計画推進室 特任教授

佐藤 博

札幌市市長政策室、政策推進担当部長

三上 隆

北海道大学理事・副学長

川端 和重

北海道大学理事・副学長

小篠 隆生

北海道大学工学研究院 准教授

司会

吉見 宏

北海道大学経済学研究科 経済学研究科長・教授

情報提供者

武村 理雪

北海道大学国際本部 シニア・コーディネーター 「持続可能な社会の実現に向けた北海道大学の取り組み」

吉見:皆さん、こんにちは。後半のパネルディスカッションのコーナー、今までのプレゼンテーションから、どういうことが我々にとって、持続可能な社会実現のためのチーム・ビルディングに資するのかについて、ディスカッションしていきたいと思います。

このパネルディスカッションは、まさに大学ですので、大袈裟に言えば世界に向けた問題を解決すると、サステイナビリティに関する問題を解決していき、そして、持続可能な社会を構築する。その時に、この大学はどういう役割を果たせるのかと、それがテーマ。北海道大学がこの後「サステイナビリティ」という言葉を使った時に、将来をどう見据えているのかなどを確認したいと思います。そういう中で北海道大学では様々な取り組みもしておりますし、あるいは、そこで使われている様々な言葉遣いもあるわけです。これらは北海道大学の中にいる我々のような人間にとっては、もう毎日耳にしているものもですが、今日は北海道大学以外の組織の方もたくさん来ていただいております、北海道大学はこれまで何をしてきて、パネルディスカッションの中で使われるであろう、様々な言葉もございますので、そういうことも含めて少し確認をしたいと思います。少し時間をいただきまして、北海道大学の取り組みを、武村理雪さんから、サステイナビリティ・ウィークの企画の責任者と言いますか、ずっとかかわっていただいています、お話をいただこうと思っております。では、武村先生、よろしくお願いいたします。

武村:武村です。私は国際本部のスタッフです。Office for International affairsのスタッフです。セクレタリア・オブ・サステイナビリティ・ウィークスは、国際本部にあるというところがひとつ特長ですので、それを脳裏に置きながら見ていただければと思います。

北大におけるサステイナビリティとは、2005年に持続可能な開発、国際戦略本部が設置された時に始まりました。大学の国際化をするとき、持続可能な開発というものをテーマに大学を国際化していくんだ。そういうアプローチでまず始めました。ちょうど国連でDESD、国連の持続可能な開発のための教育の10年が始まった年でした。それから、2007年からサステイナビリティ・ウィークという、北大でどんなサステイナビリティにかかわる教育研究をやっているのか一覧できる、そういうショーケース的なイベントをやろうと、2007年に始まりました。それはじつは2008年にG8サミット、洞爺湖サミットがあることを見据えて、北大の持続可能性というテーマへのコントリビューション、貢献をぜひ世界に見せようというところから、始まったのがサステイナビリティ・ウィークです。G8大学サミットという、大学の学長が集まるサミットがこの洞爺湖サミットと時期を同じくして開催されて、北大がホストの1つを務めたわけです、そこで「札幌サステイナビリティ宣言」、大学は持続可能な社会をつくるための原動力になるんだ、という宣言に世界の27大学がサインをした。この時から北大はもっと真剣にサステイナビリティに取り組もうとなって、その宣言の実現を着々と進めていきます。2008年にいくつかのネットワークや組織を立ち上げ、2010年にはこのサステイナブルキャンパス推進本部が立ち上がりました。その後も様々なシンポジウム、イベント、教育プログラムが立ち上がっています。

そして、我々は2026年に150歳を迎えます。その150周年に向けて「近未来戦略150」という大学の改革、リフォメーションの戦略を立てたんです。そのテーマは、世界の課題解決に貢献する北海道大学になるんだと、そういうテーマを掲げております。ちょうど2014年、先ほどの国連の持続可能な開発のための教育の10年が終わり、それからまた新たに、持続可能な開発目標、SDGsというものが始まりました。お手元にSDGsの資料もあると思いますが、そういうことも視野に入れながら、これをテーマに大学の経営戦略を作っています。

実は今日が今年のサステイナビリティ・ウィークの最後のイベントのはずでした。が、次々と新しい企画が持ち上がって、今日が最終日ではなくなりました。で、皆さん、外に行くとチラシがあるので持って帰っていただければと思いますが、今日を最後にしなかった理由というのは、学生が今、自主的に持続可能な社会づくりのためのディスカッションの場であるとか、イベントというのを企画していて、それを我々のところに「大学としてサポートしてくれ」という形で持ち込むようになったんです。ですから、残念ながら今日は最後ではありません。まだまだ続くのが今年のサステイナビリティ・ウィークです。

我々は結局、総合大学ということもあり、いろいろなテーマをこれまでに扱ってきました。このパンフレットにもありますけれども、これまでに267の行事をサステイナビリティ・ウィークでやっており、その間には様々な課題に取り組んできた。サステイナビリティ宣言というハートを、2008年に得たんです。2014年には近未来戦略というコンパス、羅針盤を手に入れた。そして、世界の課題解決に貢献する北海道大学へという星へ向かって今、いろいろな活動をしています。その活動量は毎年少しずつ増えている、そんな状況にあります。

吉見:武村先生、ありがとうございました。それでは、これから早速パネルディスカッションに移っていきたいと思います。パネラーの皆さん、ここでご登壇ください。

このパネルディスカッションから新たに参加してくださっている方を、お名前のみご紹介します。札幌市市長政策室、政策推進担当部長の佐藤博様でございます。それから北海道大学の関係者ですけれども、北海道大学理事・副学長、施設関係担当の三上隆でございます。同じく北海道大学理事・副学長、研究担当の川端和重でございます。では、よろしくお願いいたします。この短い時間でテーマを大きくは2つぐらい立てて、お話をしていきたいと思っています。

まず1つは、先ほども武村先生の話の中に「北海道大学近未来戦略150」が出ております。中期ぐらいの計画で、創基150年に向けて北大が何をしていくのかという枠組みですけれども、そのベースにはサステイナビリティが流れていると思います。サステイナビリティ・ウィークが始まったのが2007年、その時代からの動きもあったわけです。小篠先生からお話をうかがおうと思いますが、サステイナビリティに北大が関心を向け始めた当時の動きをご存知だと思います、特に社会あるいは地域社会ですね、地元の地域社会との関係を大学がどうとるのかは、今日の講演の中でも非常に大きなテーマになっていたと思います。そういう観点でサステイナビリティと、北大がやってきたこと、そして、近未来戦略150との関係、これをどうお考えか、お話をいただければと思います。

小篠:私も趣旨説明で、都市の再生と大学の役割について話をしましたけれど、ジュリーさんもタンジー先生もやはり都市との関係を非常に重視しておられたと思います。それは国際的に都市に住む人口が、爆発的に増えていく近未来に対して、どうするのかは、世界をあげて考えなきゃいけない課題、その中で大学の役割は非常に大きいことを、アメリカの大学も、もちろんそれ以外の地域の大学も、ずっと感じていることの表れだと思うわけです。それで、私たちも近未来戦略150で世界の課題を解決する大学にならなければならない、と言っているときに大学の役割として、都市との関係というのは切っても切れない話になると思う。ここでちょっとよく誤解を招くことがありますが、ジュリーさんもプレゼンテーションで言っていましたが、大学がトップであり続ける、研究大学としてのトップであり続けることをめざすときに、都市との関係ってあまり関係ないと思われてしまう、と言えるわけです。もちろん研究をどんどんトップにしていくことは当然のことです。けれども、それと、地域が求めている、たとえば今日佐藤さんに来ていただいています、札幌市が北大に求めることの、ローカルでリージョナルなニーズは、全然バッティングしないと私は思うわけです。両方が大学に求められている役割と見て、むしろトップな研究をどんどん進展して、そこで知的な創造をしていくものを、どうやって地域に還元していくのかが、やはり大学でしかできないこと、そこのところが求められていると思います。

吉見:はい、ありがとうございました。そうしますと、ニューマン先生、タンジー先生にお聞きした方がいいと思いますけれども、たとえばニューマン先生の場合はMITにおられて、マサチューセッツ工科大学、これは紹介するまでもなく、世界に冠たる大学で、業績も高くあげておられます、ランキングも高い。そういう中で、今、小篠先生がおっしゃったような、たとえばトップであり続ける研究をするということと、それから、実際に立地しているのは、ボストンと言いながら、実際には隣の街のケンブリッジという小さな街、ちょっと言い方が悪いかもしれませんが。ケンブリッジと言うと、「え?ボストンじゃないの?」と多くの日本人には思われるかもしれない。しかし、ケンブリッジに立地しているMITが、ケンブリッジのために、あるいはケンブリッジと一緒にやるMITにとっての意義、そこで研究をしている研究者たちにとって納得できることなのか、いかがでしょうか。

ニューマン:私が最初に前身から来たのは、非常に緊張状態であった時です。大学と都市の間で特に経済的な課題があったということで、かなり緊張感があったわけです。税金的にもです。そして、たいへんに難しい関係であったわけです。都市と大学が一緒に研究するにあたって、非常に緊張をした関係の中でやらなければならなかったわけです。MITに行きましたらば、その都市と大学の関係は、政策レベルでたいへんに必須であると認識されていました。実際オフィスがあり、たとえば25年間も、大学とケンブリッジ市との関係をマネジメントするだけの事務局があったわけです。

この2、3年間において、やはり都市を再定義づけする動きがあったと思います。たとえば都市は単に次の建築物の建築許可を出すだけではなく、住民、たとえば2万5,000 人の人たちがMITにいますが、市民が実際にかかわっているので、実際にビジネスの起点である、と考えているわけです。そして、そのビジネスがMITの近隣に動いてきたということです。先ほどイノベーションの地区があると言いました。このイノベーションというのはMITのリサーチが拡大して、イノベーションのディストリクト、地区になったわけです。ですので、より多くのビジネスがケンダルスクエアに来た。そして、MITの研究者にアクセスがしやすいから、そこにシフトしてきたわけです。そうしますと、非常にこれは相互の便益を提供する、ローカルなビジネスに対しても提供するという、新しい形態であったと思います。もちろん政府との関係も重要であったと思います。これは新しい1つの要素です。たとえば税法とか、教育に関しての決議、決断とか、それから都市のゾーニング、あるいは建築のゾーニングに関して、政府ともコンタクトが必要なわけです。ケンブリッジ市と大学は非常に、健全なる市民のための都市づくりのために、きちっとした建築を建設したいと思っているわけです。

MITはケンブリッジ市に来て100年以上になります。そしてMITはケンブリッジ市にもうしばらくいたいと思っています。ですので、いろいろな特性を考えますと、ビジネスが研究の近くに来ていることがその1つだと思います。もう1つは、私の講演の中でも申し上げましたように、ケンブリッジ市はMITのサステイナビリティのコミットメントを先導しているわけです。そして、どういったチャンスがあるか、応用、研究が生かすことができるか、どういった機会に生かすことができるか、ということを考えています。そしてケンブリッジ市を健全なる都市に推進しようとしています。ですので、たとえば雨水をどのようにうまく生かすかという研究、それからネットゼロ排出のビルディングのための研究、それから輸送、水処理、単に雨水の処理だけではなく、水供給とか処理というのが研究から出ています。これは都市と大学の関係があったからこそ、出てきていると思います。また、新しい理論を実際の応用に生かしています。それも学生がかかわっています。そして様々なリサーチの機会も生かそうとしています。これがtrueつの重要なネットワークであると思いますし、このネットワークが非常に発展しつつあると思います。

吉見:同じ質問をタンジー先生にもしようと思います、ただブリティッシュコロンビア大学の場合には、先ほどもお話があったように、バンクーバーと言っても郊外にあって、特に小さな街と言いましょうか、2,000人とおっしゃいましたかね。その規模の地区に立地している中でUBCの位置づけを考えようと聞こえたわけですが、そういういわば郊外の小さなコミュニティの中に大きな大学があって、そのコミュニティに貢献をすることの意義、特に研究と関係した時にそれはどういう意義があるのかを、お話しいただきたいです。

タンジー:大学のキャンパスは何100メートルかバンクーバー市の端から離れたところにあります。しかしながら、ファシリティ全部、そこで運営されており、都市部からそんなに離れているわけではありません。ただ、小さな森があって、大学が始まるといった感じで、非常に隣接している状況です。5年ぐらい前まではまったくレジデントがいなかった。誰も住んでいなかった。新しいコミュニティを創って、キャンパスにもっと人を呼び込むことになって、一部土地も売って、いろいろな資金等が生まれました。ということで、近隣のコミュニティとの関係性を考えてみますと、持続可能な住宅、そして環境を創ろうとしています。住宅に関して、性能についても契約などを結んでいます。ただコミュニティにおけるもの、まあ、切り離されているわけではないですね。ですから非常に連続性がある状態になっています。

私どもの、より幅広いバンクーバー、メトロバンクーバーとの関係性をちょっと見てみたいと思いますが、私どもは非常に強い関係性を複数の会社と構築しました。リサーチをこちらがサポートし、実証することをやっています。リビングラボのプロジェクトの1つとしては、実際プロジェクトにかかわってもいいという教授陣を探さなくてはなりません。多くの場合、非常に技術があって、非常にいいインフラもあった、キャンパスにもあったけれども、やはりリサーチャーで関心ある人がいなければ、うまく進めることができないと、プロジェクトがそこで終わってしまいます。学術界におきましてマネージャー、アドミニストレーターがいて、トップダウンのゴールを作って何をしろとか言うことはできませんが、合意すればターゲットになるわけです。しかしながら、やはり研究時において、「これはやれ」と、それが進むわけではありません。自由度がたくさんありますし、教授陣も本当に関心がある人にやってもらうことが必要になってきます。で、有機的なアプローチが必要で、ただ「やってください」ではやってもらえない。そういった中で対応する、かかわってもらうことが必要です。素晴らしいプロジェクト、素晴らしいパートナーがいたとしても、大学生も大学院生も興味がない、そして、教授も関心がなければ、進まないということです。

もう1つの課題は、やはり私どもも研究中心の大学ですので、場合によっては、いろいろな課題、地域のパートナーがもっている問題は、プロジェクトのコンサルテーションなどで対応できます。逆に、学部の教授は基礎研究の方に関心があるので、差があります。基本的な基礎研究などを中心にやりたい。いいアライメントがとれる時もありますが、場合によってはプロジェクト、まあ、コンサルティング・プロジェクトが中心ということが往々にしてあります。ですから、その辺のマネジメントも必要です。また、学生、大学を卒業した卒業生とのかかわりも非常にうまくいっています。オフィスもあり、様々なリサーチ研究を、現在の大学生や大学院生、卒業生などがやっています。60以上のプロジェクトがキャンパス内外で実施されています。

吉見:さて、それでは、我が北大は?ということで、研究担当の理事の川端先生に聞こうと思うんですが、ただ川端先生、最近、学内では特に、昔は言わなかったのに「地域、地域、地域」とおっしゃるという噂が流れておりまして、その地域と北大がめざす研究とのかかわりですね、これは同じような質問になりますが、北大はいかがでしょうか。

川端:はい。私から少し話をします。ニューマン先生が言われたように、日本において大学と国は、けっこう厳しい関係にあります。国が財政を下げようというのと、大学としては自由な活動をしようという狭間に入って、20年前のアメリカのような状態にいます。そういう中で私たちはサステイナビリティというキーワードをスタートとしてお話しすると、研究だけで閉じては仕方がないと思います。実証して初めてサステイナビリティが意味をもつ、じゃあどうやって実証するのかというので、2つ、3つの次元があると思います。

先ほどちょっと、大学の近未来戦略自体にサステイナビリティは「直接どうか?」と言われると、それを考えて作ったわけじゃないですけれども。テーマは現在、食と資源に関する研究という話。もう1つが北極域研究という、2つのビッグプロジェクトを動かしています。それぞれは環境の問題がどのようなデータとして表れて、それが次のアクションにつながるためには、産業界とのつながりを考えなければならない。たとえば北極に関する話においては、北極航路の話、ヨーロッパとアジアを結ぶ北極海を通した航路の話、そういう話まで含めて、単なる研究ではなくて、それを産業界と結んで、どういう形でそれを持続的に展開していったらいいかという形にまでもっていこう。それから、食と資源に関しては、アジアであるとか、北海道エリア自体が食に関するエリアでもあるので、それをここでの技術をアジア全体に広げていくという取り組みを実証型でやっていこう、という地域との連動が起こっているのが現状です。

もうひとつ言いますと、大学と都市との関係、現在はまだファンディングという意味では成立がしていない。どちらかと言うと、国からお金をもらって都市との間でのファンディングをまかなう形。だから地方がファンディングをして、大学側が動くというのがうまく成立していないのが現状と。そこはしっかりこの次のステージで展開していくと、話になると思っています。ということでいいですか。

吉見:ありがとうございました。研究もさることながら、お金ですね。たしかにサステイナビリティのプロジェクトを達成していくための、それをどうするか。もちろんいろいろなところからの資金を導入してくることもありますし、そこにはいろいろな形での地域との協力も必要になっていくだろうと私は思います。

札幌市では、皆様もご存知かと思いますが、この20日に、路面電車が延伸、延長して開業します。20日です。19日に市長がテープカットをすると思いますが、じつは日本では基本的に路面電車はあまり注目される乗り物ではなくて、トラムですね。海外ではライトレール・エラルティという、サステイナブルな社会を実現する1つの公共交通のツールとして位置づけられています、それが日本ではなかなかそうなっていない。そういう中で、これだけの大都市の札幌が、路面電車を生かす動きをしている。これはスタートではありますが、その後にはさらに路線を延伸していこうという計画も、将来的にはあると聞いています。ここからは私の勝手な想像話ですけれども、じつは北海道大学もこの構内の交通をどうするのか、とかいう問題があるんですよ。車をもう入れないようにしよう。いっそのこと、路面電車を延ばして構内に入れてですね、職員や学生の足にして、あるいはこの大学には観光客も非常に多い大学です。日本ではほとんど唯一というくらいの観光客がくる大学ですし、市民の方がたくさん来られて公園代わりに使われている大学でもある。そういう中では、個人的にはけっこういいアイデアかなと思うんですが。ただ、今の川端先生の話を聞くと、「お金の問題あるよね」ですね。佐藤部長に聞いていいのか。答えにくかったらパスしていただいてけっこうですので。

佐藤:さっそく難しいご質問をありがとうございます。個人的には非常に夢のあるお話で、北大の中を電車が走ったら、それは素晴らしいかなぁと、観光客なんかも喜ぶと思いますけれど、実務的な話をすると、やはり財源の問題とか、いろいろなことを考えると難しいだろうと思います。札幌市も1つの大きな政策課題の中で、低炭素社会をめざすことに取り組んでおりまして、当然、北大を1つの事業者として見ると、非常に大きなエネルギー、またCO2を出している、そういう施設。ですから、持続可能な社会をめざして北大がいろいろな研究を進めておりますけれど、そういう研究の、まず大学の中で実践していただけたらいいなと思うのと、その成果をぜひ我々地域の方にも還元していただけたら、大変うれしいなと思っています。以上です。

吉見:ありがとうございました。路面電車は札幌市と北海道大学のコラボレーションとして、いいプロジェクトかなぁと思ったんですが、それに限らず、施設の問題もありますので、今の話はおそらく、北大がキャンパスをどう将来造っていくのか、構内に入ってくる車をどうするのかと、そういう施設計画やキャンパスの計画との関係もあると思います。ということで、施設担当の三上先生に少しお話をうかがってもいいでしょうか。こういう計画、路面電車の話じゃなくてもけっこうです。

三上:当然、路面電車にもふれないと、だめなのかなぁ、という気はしています。サステイナブルキャンパスということで、本学、環境の問題、エネルギーの表示問題、それと廃棄物管理。環境問題の場合は生物多様性も含めて、そういう問題を扱ってきていると。ただし大学としては研究する場でもあると。教育の場でもある、ということを考えると、やはりサステイナブルに結びつくような研究・教育。特に教育、人材育成、先ほどニューマン先生でしたかタンジー先生か忘れましたけれども、卒業生が大活躍しているという、そういう話がありました。私の個人的な気持ちは、学生、入ってきても短ければ4年、修士でいくと6年、期間というのは、教育の場としてはすごく大事にしたいと。ですからこういうサステイナブルに関する実践的な研究をしてもらう、あるいは、実践的な教育を受ける。それを第二の職場というか活躍の場にしてほしいと思います。

それと、地域と大学との関係が希薄だったことは反省する必要があると。たとえば路面電車については、一般市民がどういう具合に考えているか、どういう具合に思っているかという情報がまずベースだと思うんですね。少なくともキャンパスが公共の場であるという理解の上に立てば、やはりそういう要望に対しても、予算は別にして、なんらかの検討の場、連携の場があってしかるべきだと、という具合に思っております。

施設関係ということで、文科省、国のほうが(平成)28年度からスタートする、第4次の施設整備5カ年計画策定に向けた中間報告がなされています。そこにおいて「サステイナブルキャンパスの形成」という項目があり、たとえばネットゼロエネルギービルだとかキャンパスのスマート化、等については、社会の先導モデルとなる取り組みを推進してほしい、と。まさしくこれは2008年の札幌サステイナブル宣言でいくと、大学が実験の場として動いていく、原動力にもなるし、そういう場所として提供しましょうということが宣言の中にも触れられております。ようやく、外国に比べると何周遅れかわかりませんけれども、こういう施設計画の中にも、初めて社会とのかかわりが重要視されてきたことは強調してもいいと思います。

吉見:はい、ありがとうございました。今のお話は、先ほどタンジー先生の中にもあったなと記憶しています。もともと今の部分については、北海道大学に近未来戦略150というのがあって、大学の大きな枠組み、計画があるわけですが、その中にこういうサステイナブルなキャンパス、大学、そしてそれは地域とともに、今後は創っていかなきゃいけない、やっていかなきゃいけないんだという考えが流れていることを確認できたと思います。

そこで、少し話を別の角度に移したいと思うんですが、今日のタイトルは「チーム・ビルディング」、どういうふうにして、実際、サステイナブルなキャンパスを創るためのチームづくりをするのか

だと思うんです。その時に今日のご講演の中では名古屋大学の田中先生のお話、これは日本にある、北海道大学と同じような、規模も似ていますし、少なくとも日本の中では大規模な大学と言える。そういう中で奮闘されてきたと思います。建築学会の業績賞も受けられた。そして、事務職員も教員も学生も含めて、参画した組織としてのキャンパスマネジメント・グループが立ち上げられてきた、と。まさにチームを作ってきたと思うんですが。言うのは簡単ですが、同じような大学に身を置くものとしては、これは難しいなと思っちゃうんですね。それで、特にこの組織をつくるにあたって、この間の、名古屋大学が何を重視してこられたのか、少しそのお話をうかがえればと思うのですが、お願いできますでしょうか。

田中:はい、重視してきたことですね。これは先ほど私のプレゼンテーションの最後にあったことですが、不一致が起こった時に原因が何かということをお互いが確認してきたことがまず大事だったと思います。それから、私はエネルギーマネジメントを中心にやっていますけれども、研究的に学内で何ができるかを、いろいろとテーマを作って考えて、実践していくわけです。それに対してどんどん事務系スタッフを引き込んで、発表を定期報告会であえてしてもらう。先生が提案したから先生が発表するじゃなくて、本当に汗をかいた人がしっかり発表していただくステージを作っていったのが、1つ大きかったと思います。活躍できる場をとにかく作っていく。それから、それぞれの立場だからできる役回り、そういうものをしっかり位置づけて、「私はこれが得意だから、これは協力できる」とか「私はここまでできる」とか、お互いにどこの位置ならば協力できるか確認をとりながら、プロジェクトを遂行していきました。そのやり方が非常にうまく回って、やり方が1つ成功したので、他のものも同じような形でまとまっていったり、あるいはお互いにお互いの立場を、尊敬し合えると言いますか、認め合える立場ができたのが非常に良かったと思います。今はお互い頼りながら、お互いが得意とするところがだいぶわかってきたので、それに頼りながらチームとして動いていると思います。

吉見:たとえば今の中で「私はこれができる」という、うまい活躍の場を与えてあげると言うのか、見つけるということでしたけれども、そもそもどういう人がいるのか、もしかしたらこの人、やってくれるかな?というようなこととか、役割などや、人を見つけていくのはけっこう難しくないですか。

田中:そうですね。これはこの会で皆さん、ネットワークをしっかり作られているのと一緒で、何かネットワークができ始めると、どんどん有機的につながっていく。たまたま名古屋大学で有機的につながった機会というのは、大学そのものが15年前くらいに学際研究を推進する、文系・理系の先生たちがタッグを組んでいろいろなプロジェクトを始めました。その時に、組織はできたんですが、どう動かしていくかを、非常に皆さん悩まれていた時だったんです。そういった時に、キャンパスをモチーフにして「こんなことできないか?」という提案を1つすると、「じゃあ、この先生がいる」、学際研究を進める組織の方々が、積極的にかかわるようになり、どんどん人集めができたり、それぞれの研究の分野のメリットを生かすような提案が出てきたこともありました。

吉見:ありがとうございました。地域との連携という話を先ほどしましたけれど、じつを言うと、地域との連携の前に学内で連携をしなければならない。ユニバーシティって言いますけれど、場合によっては日本のこの大規模なユニバーシティは、ユニバースになっていなくて、カレッジの集まりですね、単科の大学の集まり。そこでいかにネットワークを作っていくかということですね。北大でも長らく課題になっていて、このサステイナビリティ・ウィークをはじめとした、サステイナビリティにかかわる様々な事業は、実際、横串でいろんな方がこれに関連しているし、活躍できる場面が本来あるはずですから。最初に武村先生から簡単なプレゼンテーションがありましたが、あらためてこのサステイナブルキャンパス、あるいはサステイナビリティの取り組みの担当である三上先生から、この北大のここまでのサステイナブル対応の動き、あるいは様々な取り組みを振り返って、さらに、できれば今後も含めてお話しいただければと思います。いかがでしょうか。

三上:わかりました。様々な活動をしています。それは後ほど説明します。同時に課題も見えてきたことがあります。先ほどの武村先生の話と重複しますけれども、活動としては、2008年の札幌サステイナビリティ宣言採択、サステイナビリティ・ウィークの開催、2010年にサステイナブルキャンパス推進本部を立ち上げております。それと、環境負荷低減推進制度というか、それも立ち上げております。これは総長のリーダーシップのもと、トップダウン的な形でやったものです。それと、特にSC推進本部(サステイナブルキャンパス推進本部)を中心に、サステイナブルキャンパス構築のためのアクションプランというのを2012年に作っております。それに基づいてどういう具合に評価するかという、サステイナブルキャンパス評価システム、これを2013年に作っております。この内容については、この国際シンポジウム、これで5回目になろうかと思いますけれども、初めの頃のシンポジウムは、ここらへんを話題にしながら議論し、その成果が評価システムの中に取り入れられていると。当然、評価システムを作りましたので、PDCAサイクルの中で活用し、生かしています。それと、全学的にどれくらい効果、成果が出たか、量的な問題が常に問われることになります。当然ですけれども、それはSC本部が中心になって活動して、省エネ活動は相当成果をあげていると、自負しています。

札幌市と連携協定を結び、「札幌のエネルギー未来」を作っています。その時には本学の事務系の職員、それと先生方も、複数の部局の先生方も、この札幌のエネルギー未来に検討に加わって策定しています。札幌市との連携体制のあり方の、1つのモデルケースになると思っております。

課題、たくさん出てきていることは事実です。1つは、本学の構成員がこのサステイナブルキャンパスの活動について、世界的にどういう、日本の国内でもどういう位置にあるか、そこを十分理解してもらっていない。たとえば平成25年度、名古屋大学もそうですけれど、キャンパス評価システムは法人評価委員会、文科省のですね、そこから「特筆すべき事業」と評価されています。これは我々のPRの仕方もまずいのかもしれませんけれども、それをどんどんPRしていく必要があるし、それが浸透していくことによって、教職員、学生を含めた意識の向上にもつながると思っております。

それと本学としては組織の問題、これがすごく大きいと思っております。全学的な支援を得ながら活動しつつありますけれど、活動の核となるSC推進本部にしても、川端先生、いろいろとご意見あるのかもしれませんが、やはり教育・研究も含め、それと社会の連携も含め、これから活動の範囲を広げていくとすると、全学的な立場で全学的な意見を聞きながら、体制について議論しないとだめだろう。そういう時期に来ていると思っています。

吉見:はい。今、三上先生からたくさんキーワードをいただいた感じがするんですが、まず「学内の連携をどうするの?」っていう話については、サステイナブルというキーワードは、そういうものをつなぐ1つになるだろうと。この中でサステイナブルキャンパス推進本部は、じつは横串を刺しているような組織になっていて、1つのテーマなのかな、我々が共同で学内研究をしていくいいテーマということですね。さらには札幌市との連携協定もある。これは先ほどもお話ししましたが、おそらく北海道大学が札幌市のこの場所にあることは、札幌市がもっておられる都市計画の「新まち」と言っているのがありますが、街づくり計画ですね。こういったものの中に当然位置づけられなきゃいけないし、我々大学が勝手にやっちゃ本当はいけない。札幌市さんに知らんぷりして勝手にキャンパスを創っちゃうのも、これは困るだろう。札幌市さんから見た時に、この北海道大学をどういうふうにサステイナブルな都市、札幌市の中で位置づけられるのか、これも1つですね。そして最後に「川端先生、どう思っているかわからないが」という話がありましたが、じつは川端先生が所管されている、この4月からスタートして産業地域連携機構、産地機構と呼ばれていますが、これは北海道大学として地域との連携の窓口になっていく、として創られた機構で、学内にどういう先生がいて何をしているのか、それをちゃんと把握して、横串を刺していくこともテーマになっているんですね。だからそのあたりが全部つながっている気がするんですけれど、まとめて言ってしまいましたが。それから、さらにはサステイナブルキャンパス推進本部が、こういう位置づけをもって、見ていいのかということも含めて、順番に、佐藤さんにまずお話を聞き、それからSC本部については、ここまでずっと見てこられた小篠先生にお聞きし、さらに最後に川端先生に先ほど三上先生が投げられたことを含めて、産地機構と札幌市ですね、地元ということでお聞きし、という順番でいこうと思います。それでは佐藤部長からお願いいたします。

佐藤:はい、では私から、まず札幌市と北大の関係ということで述べさせていただきます。札幌市が開拓を始めたのは1869年、開拓使が置かれた時からと言われており、その数年後に北大が、その当時の農学校ができ、ほぼ札幌市の歴史と北大の歴史は一致していて、札幌の街が発展する中に常に北大があったと。市民から見ると、自分たちの大学と言うか、自分の体の一部みたいな、そんな感覚なんじゃないかと思っております。札幌市の中に世界レベルの教育・研究を行っている大学があることが、札幌市もしくは札幌市民にとっての財産でありますし、誇りでもあると思っております。北大が札幌にあることにより、日本中、世界中から、多くの研究者であったり学生であったり、そういう人たちが集まってきて生活をして、中には当然離れていく人もいますけれども、生活をする中で札幌を好きになっていただく。愛着をもっていただく方がたくさんいらっしゃって、離れていっても、いつまでも札幌の応援団でいてくれると。何か機会があれば札幌にと、集まっていただいたり、離れた土地から応援していただける。そんなような関係があるのかなぁと思っております。

北大が今後とも持続可能な発展をすることは、すなわち札幌の発展にも当然つながると思っておりますし。札幌もこれまで150年かけて発展をしてきた、拡大をしてきたんですが、いよいよ減少時代に間もなく入ると言われています。おそらく今年、来年あたりが人口のピーク。現在194万人まで、わずか150年の間にここまでの大都市になったんですけれども、今後は人口減少時代を迎えて、様々な新たな課題が出てくると。そういう中で、北大のもっている様々な知見、そういうものを地域の中で生かしながら、今後新しい街づくり、そういう中に生かしていけたらいいなと私は思っている、そんな感じです。

吉見:それでは小篠先生、よろしいでしょうか。

小篠:2つ話していいですか。さっきね、トラムの話が途中で終わっちゃったので。その話を含めて少し話をしたいんですけれど、こういう公共事業を大学の中に入れようとなった時に、佐藤さんの言うのはもっともで、大学が「こうしてほしい」っていう気持ちは当然わかるけれど、行政側が、市が「こういうふうにしてほしい」って話がない中では、絶対実現しないわけですね。両方のニーズが一致しないと絶対できない。たとえば札幌の姉妹都市であるポートランド、ポートランド州立大学のキャンパスの中には、じつはトラムが入っています、駅もあります。なんでああいうふうにできたかって言うと、キャンパスの南のエリア、川沿いに疲弊した地区があって、市としてはそこをもう少し活性化しなきゃいけない。そのために公共交通が必要で、その最短ルートがキャンパスの中を通すことだった。行政側としても目的に合ったので「じゃあ駅を整備しましょう」、そういうところがあるわけです。ですから、ちょっと公共交通的にあまり利便性の高くないようなエリアに、中心部からキャンパスの中を通ってつなげていくと、たとえば行政として非常にこれからの札幌市の交通政策を考えていく時に重要である、となれば、それは話が合致してくる可能性は十分にあると思うんです。

そんなことを考える中で、サステイナビリティの話に引っ張ってくると、要は、片側だけのある1つの価値観だけで考えるのではなくて、両方の価値観を見ながら、それをくっつけていくと言うか、重ねていくような考え方をとれる、っていうのがサステイナビリティを考える時の一番重要な考え方だと思うんです。ご紹介したように、第三期の中期計画に入っていった時に、新しいキャンパスマスタープランを作らなきゃいけないのが、重要な項目としてあります。そこにはいろいろな大学の戦略も、新しい大学の戦略も重なってきたこともあって、そういう多岐に及ぶ項目をどうやってコンバインし、計画づくりができるかという中で、サステイナブルキャンパスのオフィスがやってきた。あるいはそれに伴ういろいろな方が参加してきた活動は、非常に重要だと思っているんです。継続というのは非常に大事だし、計画を作り上げていくためにそういう組織というのは、きちっともう一回リオーガナイズしていくのは非常に大事だと思っています。

吉見:はいありがとうございました。前段の話でいくと、ポートランドの話がまさにおっしゃる通りですし、だからこそ札幌市が北海道大学を札幌市の中でどういう、たとえばエリアであったり、そういう場所だと位置づけられるのか、それはけっこう大事なことだと思いますね。その中で出てくる話であると。他では、たとえばバルセロナなんかも大学の中をトラムが、キャンパスを貫いていくんですけれども、あそこには近くにFCバルセロナのスタジアムもあって。スポーツ、文化エリアみたいな、そういう位置づけがある中で、あるいはその奥に、先ほど言われたような住宅地なんかも展開している中で、比較的交通に恵まれない住宅地、そしてスポーツ、文化エリア、その中の大学。そういう位置づけの中であれが造られたと思うので。まさにそういうことも含めて計画していかねばならない、と。そういう計画を大学側として地域と重ねて始動していくのはやっぱりSC本部になるのかな、そういう話でしょうか。川端先生、ご意見がいろいろあるんじゃないかと思うので、川端先生にそろそろもっていきたいと思います。どうぞ。いや、「電車の話をしろ」って言ったわけじゃありません。

川端:話をちょっと元に戻します。この春に本学の中に産学連携地域推進機構という新しい機構を作り、地域との関係をもっとしっかりさせようとしています。ただ、しっかりさせようと言うのも、私のキャラクターもあって、研究は研究で勝手にやっていてくれていいけれど、本当は実証したい、いろいろなものが本当に変わっていくことをやりたいな、というのが大きなメッセージになっています。現在、北大から北海道エリアの公共自治体等に、委員だとか、いろんな形で入っていただいている方が毎年400から500と言う件数に上ります。こういう方々は、私も文科省によく言っているんですけれど、審議会委員のレベルではなくて、本当にものを作り上げていく、変えていくレベルまでどうやったら上げられるのかと思い悩んでいます。ここを突破するために、新しい機構を作りました。これのチーフに吉見先生になっていただいて一緒にやらせていただいています。ある意味では、北海道のシンクタンクとして働くような、そのようなものにも発展させたいと思っています。活動が少なくとも研究の中で閉じないということがすべてのキーワードになっていて、どうやったら本当にものが変わるのか、社会が良くなるのか、そこに我々は貢献したいと思っているのが現実です。

そのためには、ファンディングの話に戻ります。しかもファンディングと言うと、ついつい国から資金が欲しいとか、公共自治体が出してくれと言うのもあっていいんですが、やはりある部分はビジネスとして、社会がそれを要求し、その価値を認めている、であれば、そこに当然、そういう価値が生まれて、それを原資として活動が生まれていくような形にぜひレベルを上げたいと思っています。残念ながら今のやり方でやれば、やればやるほど研究者が疲弊している。その状態を改善して、たしかにモノになるように、ステージを上げたい、地域ともそういう関係になりたい、議論の上の議論はもういいというのが、私たちの今の想いです。

その想いを前提に、SC本部の話が出てきたのでお話しすると、サステイナビリティに関していろんな想いだとかお考えだとか経験をおもちで、進められて来ていると思います。でも一方ではこれを本当のものとするためには、大学経営とつながらなければならない。大学経営とつながるためには、この部署って孤立してはダメで、現在、大学としては経営マネジメントの人材の運営組織というのが、大きいもので言えば、産学連携の機構、国際本部、それから連動するのがURAという組織、そして、人材育成本部などがあるんですけれども、これはやっぱりこの中に入って、全体が合体していく。そして、人がSC本部の人、ではなくて、SC本部にはそういう職があり、仕事があると。人はどんどん変わってきていい。ただ、そこに仕事があるんだから、その仕事を順々に移りながら、どんどんレベルが上がっていく。だからビジネスもやるし、ファンディングもとってくるし、現実化する。と、こんなようなスタイルにレベルを上げ、引っ張っていければ良いなと、今願っているところです。

吉見:北海道大学が今どういう位置づけにある大学かということは、北海道大学の外から来ていただいた先生方には、おわかりいただけたと思います。皆様の大学と共通しているのは、世界に向けて情報発信をしなければいけない、研究型の大学だということです。MITもブリティッシュコロンビア大学も名古屋大学も同じ。しかし、たとえば立地というのは、名古屋大学は似ているけれども、北海道大学は札幌駅のすぐ北側に広大なキャンパスをもち、農場までもっていて、牛も飼っています。羊も飼っています、馬もいます。まわりは住宅に囲まれていますから、窓を開けたらヘンな農場の臭いがしたとか、そういうクレームまで来る大学です。そして、観光客もたくさん来る。この点はMITも似ているかもしれませんね。入ってすぐ右側にインフォメーションがあって、観光客の対応もされていますし、北海道大学も観光客に向けて、博物館を無料にし、キャンパスをオープンにしています。似ているところと、だいぶ違うところとあります。いろいろご覧になった上で、それぞれの立場から、北海道大学あるいは札幌市、190万の人口の都市のど真ん中にある、北海道大学のサステイナビリティに関して、何か一言ずつ提言をいただきたいと思うんです。ニューマン先生から順番によろしいでしょうか。ニューマン先生からタンジー先生、田中先生と順番に、提言があればいただきたいと思います。

ニューマン:我々の課題が非常に共通であると言うことにびっくりしております。やはりそういった意味では、同じ地球にいるからというところもあると思います。お話を聞くにつれ、優先順位づけをする時のプロセスが非常に似ていると思いました。そして、共通項を見つけるために1つの基準があったわけです。またトラムについておっしゃったわけですが、たとえば交通渋滞とか、人を郊外から都市部に運ばなければならないとか、そういったことにおきまして、共通項がたくさんあると思います。私の助言としては、解決のプロセスについてです。どの様なプロセスで進めるかと言うと、まず、上から8つの課題とか、上から5つの課題をテーブルの上に拡げます。そうすると、課題同志が重なっている部分が見えて来ます。私が先程講演でお話しし、明らかにしましたように、私達が身近で、知ることが出来る大学に置き換えて考えてみると言うことを実行しては如何でしょうか。

また、時として私達が陥りがちなのは、大学ということを考えた時に、いわゆる相反する関係をすぐに考えてしまうわけです。たとえば大学は地域の問題を解決しなければならないが、地域にファンドがないからうまくいかないと、そういった方向にどうしても思考がいってしまいます。しかしながら、そのような思い込みは良い方向には向かいません。札幌に限った話ではなく、ケンブリッジやバンクーバーに限ったことでもありません。私が申し上げたいのは、サステイナビリティというのは、サステイナビリティに対するコミットメント、あるいは健全なる都市や健全なキャンパスに対するコミットメントと言うのは、突きつめて言えば、何をみんなで合意をすることができるか、共通項がどこにあるか探すわけです。問題の解決を一挙にしようとするのではなく、というのがいいと思います。たとえば、環境のぜい弱性を考えた時に惑わされますが、将来的に何が起こるだろうかと予測をしようとした時には、非常に境界線がないわけで、限りがないわけです。都市だけではなく、大学だけではなく、みんなが考えていかなければならない。たとえばエネルギーとか輸送とか、財とサービスとか、そういったどこに問題があったとしても、顕著な問題について一緒に共通項を見つけて、取り組んでいかなければならないと思います。そうすることにより、成功できると思いますし、ケンブリッジ市においてはそういう成功の兆しが見えてきました。私、MITに来まして2年ぐらいになるんですけれども、過去2年間、非常に建設的な関係があると言えます。普通ですと、どうしても常に誰かを非難したくなるわけです。「これがうまくいかなかったのはそちらのせいだ」と。しかしながら、それぞれ非難をするのではなく、建設的な関係を活用してどのように前進することができるかと考えるのが、大変に重要だと思います。すなわち、共通項を探すことです。

そして、すべての構造が現状のままで、あるいはシステムが現状のままうまくいくのではなく、変えていかなければなりません。そしてまた、プライオリティというのは3年から5年においては変わってきますので、3年、5年でプライオリティの見直しをするということも、重要だと思います。そして、ジェームスが言ったように、アカウンタビリティというのも考えていかなければなりません。ただ、ここでわかった事は、優先順位はこうであると言うこと。しかしながら、はたして5年後にこの優先順位が変わっていないのか、あるいは成功しているのか、5年前の優先順位は変わらずに意味を持ちつづけているのか等、必ず見直すことを義務づけると良いと思います。と言いますのは、たとえば技術も進歩し、変わってくる可能性があるわけです。それが鍵ではないかと思います。たとえば研究を優先して、研究とマッチしなければならないのではなく、まず共通項で、どこに優先順位の項目があるのかを見て、そして後付けの形で、研究はどこにあてはまるのかと見ていくのが良いと思います。ありがとうございます。

吉見:じゃあタンジー先生お願いします。

タンジー:今日は多くのことを話しましたので短いコメントを申し上げたいと思います。キャンパスの中で実行したプログラムの1つは、我々はキャンパスにいる4万人の学生に対して、影響を与えているというところを認識したことです。学生が消費とか、ライフスタイルの選択をするにあたって、我々が大きな影響を与えています。学生に変化をもたらす事は簡単なことです。たとえば学生がキャンパスで食べる食事の材料を、非常に環境負荷の小さなものにする、あるいは再生紙を使ったカップを使うと言ったことです。私達は、また地域に影響を与え、一緒に作業する色々な手段も持ち合わせています。仕事や授業が終わるとスタッフや学生は帰宅するわけです。そうしますと、キャンパスでこうやったから、ああ、自分の生活の中でもそれを応用することができると言うようなことです。たとえば参加してもらうことや良い事例を掲載した作品やビデオを紹介したりキャンパスのブランドイメージをつくることによって、影響を与えることができると思います。それは技術的なプログラムではなく、実は文化的なプログラムであり、キャンパスの中で行う活動を通してブランドイメージをつくることなのです。キャンパスの中と外における車両と運転手の振るまいは、明らかにサステイナビリティのブランドイメージを示すことができます。それは、さざ波、池の表面を伝わって行くさざ波のようなものですが、イメージは地域に関わり、地域と一緒に行動するための方策のひとつだと思います。技術に関する事例やマネジメントに関するヒントも得られますが、しかしながら、好事例の紹介やブランドイメージ作り、そして、地域住民との良い関係作りに投資することは意味あることです。それが1つのPRになる、それも大変重要です。

田中:今日はありがとうございました。北海道大学の特にサステイナブルキャンパスにかかわる状況ですとか、あるいは執行部がどのようにかかわっているかということが非常にこのパネルディスカッションの中でもよくわかりました。何かアドバイスをということですが、非常に特徴的なのは何かと言いますと、コアの執行部はもちろんですが、今日いろいろと企画いただいたスタッフの方々の、コーディネーションがうまいと言いますか、それぞれがそういう能力に長けていてコミュニケーション能力が高い。これは結局、北大さんが成功している、学生も巻き込みながら大きな、大学としての人の力をどんどん集約しているところがより特徴的で、このスタッフだからできていることだと非常に感じた次第です。人の数は力になっていきますので、きっとこのことがあって、さらに、先ほどお話があったように、経営として見た時にいろいろな部局に横串を刺していくことが本当にできると、非常にコアの理想的なサステイナブルな大学の運営というのが実現していくだろうと本当に思いました。

それから、サステイナブルというものを考えた時には、今日のバイオマスの利用の話もありましたけれども、特に地産地消と言いますか、その土地の利を生かすことに、やはり力を入れていかないとダメであろうと。それは今日お話のあった札幌市さんとの関係で、トラムを入れていくという話もそれに関係してきますし、その周りに豊かな自然があるというところが、先ほどのバイオマス利用みたいなところにかかわります。札幌ならではできるという話があると思います。名古屋ではできなくて、北大さんだからできたという話が、やはり特徴的なものとして、ブランディングになります。さらに、それがサステイナビリティの基本的なスタンスだろうと感じています。ちょっとあたりまえなコメントで申し訳ありませんけれど。

吉見:わかりました。今もお話がありましたけれど、やはり、いろいろなものをつないでいく人、コーディネーター的な役割が大事だと。それを北大についてはずいぶん評価していただいたんですけれども、先程来出てくるような横串を刺し、そして横串が大学の中の組織や人を刺すだけでなくて、今日の話ですと地域ですね。札幌市との間にも横串も刺していって、いろいろな計画なども共有しながら、あるいは、位置づけてもらいながら、あるいは、北大にとっても位置づけていきながら、ということが非常に大事だということがよくわかりました。その様な動きのために北大の中の組織、コーディネーター的な役割をする人たちを育て、充実させ、そして、そのための組織、それがSC本部かもしれませんけれども、そういうことも重要だということがわかりました。で、最後1分くらいはあるんですが、三上先生に今のようなお話から最後に一言お願いできればと思います。

三上:もう十分に議論が尽くされたと思います。ただ、横串を刺したいと強い気持ちをもっています。ただし、それぞれ高い壁、強度のある壁がありますので、時間はかかるかもしれませんけれども、やはりそこは積極的に壁を崩していくと言うとおかしいですけれど、横串を刺すようなところまで理解を深めていただく活動、というか取り組みが本当に必要だと思います。

吉見:そういうまさにチーム・ビルディングをしていかなきゃいけないということでしょうか。ほぼ時間になりましたので、このパネルディスカッションについてはこれで終わらせていただきたいと思います。長時間になりました。ご参加いただいた皆さん、そして、パネラーの皆さんにもあらためてお礼を申し上げたいと思います。どうも今日はありがとうございました。