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学生たちを、持続可能な社会の担い手に。大学院教育学研究院 水野 眞佐夫先生

環境報告書2015より

ESD(Education for Sustainable Development)

持続可能な開発のための教育

水野 眞佐夫 Masao Mizuno

大学院教育学研究院 教育学部門 人間発達科学分野 教授。デンマーク・コペンハーゲン大学医学部 講師、デンマーク・リーベ州立病院研究部部長を経て、2006年4月より現職。専門は筋生理学、体力科学。「ヒト骨格筋のトレーニング、及び非活動に対する適応の評価」「高所(低圧・低酸素)環境における身体運動・トレーニングに対する心肺機能・骨格筋の応答・適応機序の解明」などを研究。

ESD (Education for Sustainable Development)

訳すと「持続可能な開発のための教育」。文部科学省の日本ユネスコ委員会では「今、世界には環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な問題があります。ESDとは、これらの現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組む (think globally, act locally)ことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動です。つまり、ESDは持続可能な社会づくりの担い手を育む教育です」と定義づけしています。

アジアをキャンパスにする「ESDキャンパスアジア」。

北海道大学教育学部では2011年に「ESDキャンパスアジア」プログラムをスタートさせ、「アジアをキャンパスに!」のスローガンのもと、学生の国際交流を後押ししています。このプログラムについて教育学研究院の水野眞佐夫教授に説明していただきました。

「本学は世界の課題を解決できるような人材を育てていくという目標に向けて、グローバル人材育成を1つの大きな柱に掲げています。コミュニケーションするには語学力は大切ですが、それ以上に何を語るか、中身が重要。教育学部では『持続発展可能な社会をどのように構築していくか』をテーマとして、学部生がまずアジアの仲間と語り合える場を設定したいと考え、『ESDキャンパスアジア』プログラムをスタートさせました。参加者は英語で講義を受ける他、『バディープログラム』という双方向型の留学制度を体験します。期間はそれぞれ10日間。まず北大にアジアの学生20名が来校する際、到着を空港で出迎える時点から交流が始まる。滞在の間は教室の中だけでなく、生活を共にしながらいろいろなことを語り合って未来を考えていってほしい。これが終わって秋には教育学部の学生が5名ずつ、アジアの4大学に派遣されていきます」

このプログラムの歩みをたどると、2011年に北大の教育学部生5名と韓国 高麗大学校の学生5名、計10名の交流がスタート。2012年には韓国のソウル国立大学と中国の北京師範大学が加わり、さらに2013年にはタイのチュラロンコン大学も参加して、北大生20名、他の各校から5名、計40名のプログラムになりました。年々内容も充実し、2014年は全員で日高地方を訪れる野外実習も実施。高齢化により町が衰退していく中で、復興への取り組みがどうなされているかを学び、また、平取町にある博物館を見学して、少数民族であるアイヌ民族のことも学んでいます。今後は教員の交流も進め、さらにプログラムを工夫して、アジアの有力校が連携して国際共同教育に取り組む形をめざすそうです。

次世代のESD戦略を考える。

夏に学生中心のプログラムを実施する一方、秋には連携校の先生を本学に招いて、プログラムの改善について議論をしています。昨年のサステナビリティ・ウィークではオープニングシンポジウムとして、10月25日に第5回ESD国際シンポジウム「次世代のESD戦略」が開催されました。アジアで活躍されている方々に、次の10年を見据えた次のESDの戦略について講演していただく他、分科会では、地域活動についての議論や学生による発表などがおこなわれました。

じつはESDの取り組みは日本で始まっています。水野教授は「それを知った我々がもっと自覚して、たとえば高校や公立小中学校との連携を考えたい。それぞれのところでがんばっている先生方がたくさんいらっしゃるので、グローバルな見方をしながらローカルでがんばる連携、それをつなげていくのも大学のtrueつの課題」と語ります。

ESDキャンパスアジアプログラムは、将来的にはアジアの枠を取り払い、ハワイ、サハリン、さらにはフィンランドなどとも連携した「キャンパスワールド」プログラムに発展していく可能性もあります。ただし「一気に世界に広げるより、もっともっとアジアの国々が協力して、アジアが1つになっていく、そういう世代も育てたい」というお話でした。

これからは世界の人と交流できる。

村越 洋魚

僕は一昨年プログラムに参加しました。授業の中で英語を使うのは難しかったけれど、他の大学から来た学生にとっても第一言語ではないので、いろいろ教え合いながらやれて良かったです。健康についても考えたいと、数人で朝、北大の中をランニングしたり、放課後は教室から解き放たれてご飯を食べに行ったり、週末は富良野や支笏湖に遊びに行ったりもしました。12月にソウル国立大学に行くと、メモもなく英語がベラベラ出てくるようになっていました。英語がうまくしゃべれていなくても、人間関係で伝わるとも感じていて、これからは世界の方々と恐れることなく交流できそうです。

世界には自分を助けてくれる人がいる。

若澤 美吹

昨年プログラムに参加して、タイのチュラロンコンに行きました。そこの学生は英語がよくできプレゼンテーションも上手で、もうちょっと自分もできる部分がある、勉強しなきゃと刺激を受けました。北大でのフィールドトリップでは、平取町の博物館で、アイヌ語を話せる人たちが何人かしかいないと聞き、アイヌではない人たちがいかにかかわっていくかが大切なのでは、と考えさせられる体験もありました。海外に行って価値観も性格も変わっていないけれど、友達が増えて、自分を助けてくれる人がいると知ったことが、海外生活で得たことだと思います。