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サステイナブルキャンパス国際シンポジウム2015 基調講演より 田中 英紀 名古屋大学 施設・環境計画推進室 特任教授

2015年12月3日に開催した国際シンポジウムの基調講演より

名古屋大学 キャンパスマネジメントによる創造的再生

田中 英紀 名古屋大学 施設・環境計画推進室 特任教授

ご紹介ありがとうございます。今日はこのような会にお招きいただきまして、ありがとうございます。私からは今日のテーマでもあります「組織づくり」と具体的な活動について名古屋大学の事例をご紹介したいと思います。

まず名古屋大学のキャンパスの概要からご説明します。3つの主要なキャンパスがあり、2万人以上がこのキャンパスで生活をしております。予算規模としては約1,000億円使っております。年間CO2の排出量は7.5万トンに及び、これは我が名古屋市で最大という不名誉な状況です。また約1千億円の予算のうちの約100億円が施設にかかわるお金であり、この予算をどのように活用していくかが我々の課題でもあります。

今日はメインであります東山キャンパスを中心に、ご説明したいと思います。グリーンベルトと言われる中心のスペースがあり、これに保全緑地がございます。この緑地帯をベースに各部局が配置されている状況です。敷地がトータルで70万平米あります。建物が床面積で48万平米。棟数としては260。このキャンパスをいかに継続的にマネジメントしていくかという点で、名古屋大学の場合はキャンパスマネジメントという手法を導入して検討しています。

最初に、マネジメントを行う上での根幹となるキャンパスマスタープランと、マネジメントサイクルの基本となるPDCAサイクルを、どのように構築しているか。それからそれを支えるマネジメントである、デザインマネジメント、ファシリティマネジメント、エネルギーマネジメントの3つの観点で説明いたします。

まずキャンパスマスタープランです。キャンパスマスタープランはキャンパスの総合的な戦略を示すものであり、継続的に実施される整備や運営にかかわる指針となります。

実践しておりますキャンパスマネジメントの体制はキャンパスマネジメントグループとして、主体的に動いております。ここで主体となるのはもちろん執行部。それから、それを支える事務系の施設管理部という組織、そして教員組織で組織される、私の所属する施設・環境計画推進室です。これらがコラボレーションしながら執行部を支えるという体制で根幹を成しておりまして、必要に応じて環境系の研究員、学生、建設をする場合には各企業、建物の検証をする場合には第三者機関、あるいは自治体と連携しながら、いろいろとプロジェクトを進めているという状況です。

キャンパスマネジメントの手法ですが、名古屋大学で実践しているのは、根幹となるキャンパスマスタープランを策定し、これをもとに実践する際、ファシリティマネジメントの概念、エネルギーマネジメントの概念、それからデザインマネジメントの概念という、3つの大きなマネジメントを取り込んで、実践し、実現していく、ということをやっています。ここで得た成果は社会還元をしながら、さらに成果を新たにマスタープランに策定する上での情報源として、フィードバックしている状況です。このマネジメントの基本サイクルですが、基本的には総長が方針、目標を決定する。あるいは計画立案の指示をしまして、この計画立案に対しては施設管理部の事務系組織と私が所属する推進室が、コラボレーションしながら決めていく。ここで決めたものについては、各部局に実践ということで流布しまして、この結果をチェックし、分析しながら課題抽出をして、次の目標設定にもっていく、というサイクルを回しています。

根幹を成すキャンパスマスタープランですが、1995年から策定をしており、現在は「キャンパスマスタープラン2016」として第6次案をつくるところです。蓄積と進化を重ねて継続的に作成をしております。当時はキャンパスマスタープランをつくることが、なかなか周囲には認知されず、プランを書いてみても、なかなか実現していかないことがありました。それを実現するためにファシリティマネジメントという手法を投入して、どのように実践していくかというアクションプランを立てながら実践していきました。そして、2016ではファシリティマネジメントによる支援から、キャンパスマネジメントという大きな手法にマネジメント手法を変えて展開している段階です。

簡単にこのマスタープランのコンセプトをご紹介しますと、基本的には計画のコンセプトとして大きく3つの柱を立てています。そのうちの1つに、環境に配慮した低炭素エコキャンパスと教育に関わるものを2つ用意しています。これをファシリティマネジメントで支援する構造です。内部構造としては、基本目標をまず立て、これまでのキャンパスの点検、それから課題抽出を、その目標に対してしながら、30年後の長期ビジョンを立て、それに向けて6年間の中期計画も立てるという、2段構えで構成しています。そして、それをどのようにマネジメントで支えるか、という計画も含めてやってまいりました。現状ではここがキャンパスマネジメントになっていますし、あとはアセットマネジメントという話も少し出しながら考えております。

では2つめ。これは「新築・改築・改修プロジェクトのデザインマネジメント」を少し具体的なプロジェクトで紹介していきたいと思います。ここ10年あまりで、東山のメインキャンパスの48万平米程度ある建物のうち、23万平米を改修もしくは新築で整備しており、かなりお金が動いています。私が所属する推進室についても、これらのプロジェクトについてかかわっておりました。どの程度かかわるかについては施設管理部とその建物の重要性を考えながら、協議してかかわっている状況です。

それからキャンパスマスタープラン。ここで今後はこのような建物を造っていくということの目標を立てています。それを実現するパイロットプロジェクトとして、2011年に「ES総合館」という建物を建てております。建築計画的には、コミュニケーションを誘発するような建築計画を入れる。あるいは建物としては環境性の高い建物を造るというような大きな目標がございました。ここでは国立系の大学としては初めて全館LED照明の導入、ファサードのような日射の遮蔽効果の導入、あるいは土壌と空気の熱交換での換気、自然換気を促進する構造、それからドライミストによる冷房、両方などの仕組みを入れていくことにしました。またコミュニケーションを誘発するスペースとしては、廊下を部屋に取り込むような計画をしています。廊下ですけれども、廊下でディスカッションができるような白板を入れたり、一体型で講義室と演習室をつないだり、また、ホールの部分でプレゼンテーションを行ったり、集会をしたり、そういうようなことを予め考えながら、そのスペースの有効利用を考えています。

今後建てる建物については、優良な建築ストックを造るということで、その性能の高さを保証するような仕組みを考えていきました。ここでは「トータル・ビル・コミッショニング」と言っています。コミッショニングの考え方は欧米の方では、あたりまえと言いますか、1つの社会的な仕組みになっていると思いますが、日本の場合には、なかなかそのような形は導入されていません。これは建設会社が、あるいは設計事務所が責任をもって、その建物を建てることに基づいて起きていますが、やはり建つ建物の性能を確認することは非常に重要で、その点に着目して考えられた仕組みになります。具体的には、まず建物の要求事項、これをオーナーサイドがしっかりと明確に位置づけることです。これを「OPR(注1)」と呼んでいます。どのような建物を建てるのか、どのような位置づけなのか、どのような性能をその建物に要求するのかということを位置づけます。それに対して設計者・施工者の目標と責任を明確化して、要求事項の達成状況を第三者が検証する仕組み、これがコミッショニングになります。しかし、これを外部的にコミッショニングするのはなかなか、金額もかかりますし、難しいということで、これを学内で確立して性能をチェックする仕組みを作っていきました。これは2010年の共同研究館のところで行いました。その後、その他、新しい建物を何棟か建てていますけれども、これらすべての建物においてコミッショニングは実施されている状況です。

このコミッショニングの手法ですけれども、具体例を示しますと、11月、先月竣工した文系の建物。これは文系の建物ですので、ゼロエネルギービル施工、ゼロオリエンテッドという建物をめざしています。基本的にはこれまでの建物よりも40%エネルギー削減をする建物として挑戦をしています。これをOPRとしてまとめ、実践するためにいろいろな手法を考えました。基本的には高効率の照明を入れる、高効率の空調を入れることに注力しました。目標設定としては633(MJ/(m2・y))という年間のエネルギー消費量、これを設計をしていく段階で、当然エネルギーの使用量の見積もりをし、設計段階で目標値になるスペックになるように会議を繰り返してやっております。

3番めは、ファシリティマネジメントについてご紹介します。大学の資産ですけれども、固定資産、これが85%あり、土地・建物がこのうち71%を占め、固定資産が占める割合が非常に大きいです。また収益は、平成25年、960億円あり、このうち施設整備にかかわる財源は運営交付金、つまり国からの支援金に対し30%あまりを占めています。そして、この国からの支援が年1%ずつ減るという状況の中で、限られた財源をどう使うかということがファシリティマネジメントの中の大きな課題となっております。

ここ10年間で建物の資産と維持管理費がどのように推移していったかを示したものがこれです。赤色が建物に対する資産を表しています。水色の棒グラフが工具類、機器類のものです。これは減価償却前を表していますので、先ほどのパーセンテージとこの水色の部分は大きく異なっておりますが、これは大学がどれだけお金を年間に投資しているか、この分野に投資しているかを見せるために、あえて償却前のものを表しています。それに対して光熱水費、緑色の折れ線グラフ。それから維持管理費が黄緑色の折れ線グラフとなります。建物、それから工具の資産がどんどん増えております。10年間で600億ずつ増えています。この増加に対して維持管理費、光熱水費というのが、抑えられているのがわかります。この流れは長らくファシリティマネジメントによって努力していることが実を結んでいると考えています。

建物の老朽化については、築47年以上の建物が現在で25%ぐらい占めております。今後6年間で32%超えになることが非常に大きな問題となっています。これをそのまま改築、建て直そうといきますと、750億円ぐらい資産がいる、当然このお金は出しようがない、結論としては建物を長寿命化していくプランが大事になります。この限られた財源でキャンパス全体をどう最適化していくか。これをマネジメントするのがファシリティマネジメントサイクルになります。このサイクルは評価と目標管理、これをしながらマネジメントサイクルを回しております。

さらに限られた財源の話は、どう再配分していくかが非常に重要です。これについては施設点検を毎年行い、どのような不具合が起こっているか、どのような定期的な整備が必要かをリスト化していきます。このリスト化されたものから修繕が必要なものをピックアップし、優先順位判定をし、優先順位を決めながら投資をしていくことをやっています。修繕にかかわるお金は基本的に不足しておりますが、これをどのように確保するか、仕組みを考えてきました。各部局が修繕にかかるお金を、毎年、改修がある時には大きくなり、そうでない時には小さくなり、非常に不安定な状況でした。これを平滑化する、平準化する手法として、学内で毎年この修繕にかかるお金を一律で集金しまして、修繕にかかる財源を作ろうということで動きました。これにはもちろん根拠が必要で、2009年から2012年の実績、それから2023年までの計画、保全計画を立て、年間5億円必要だということが計算として出てきました。この5億円を基本にして、部局の予算から5%、本部の予算としてさらに注ぎ足しをしまして、修繕に関する財源にあてていきました。この修繕の対象は屋上防水の更新、あるいは空調機の更新、それから設備配管の更新等々です。

続きまして、キャンパスの低炭素化のためのエネルギーマネジメントについて少しご紹介します。まずはエネルギーの話をする前に、キャンパスの動向とエネルギー使用の状況を確認致します。学部学生は変化がないですが、大学院生は増えている状況です。これは国立系の大学が、大学院重点化という政策をとり、これによって大学院生の学生数が増え、大学自体は床面積がたりなくなりました。その関係で多くの新しい建物が建ちました。それから、2004年から国立大学から法人化になったことで、自分の力で経営することになりました。当然研究も外部の資金をたくさん投入しながら活発にやる方向にシフトしていきました。外部資金をとりながら活発に研究し学生が増えてくる、ということで、学内で使われるエネルギー消費が非常に増加したことが現状です。法的には、環境にやさしいキャンパスをめざすという社会的な動きがあり、省エネ法の改正が2003年にありました。これを契機に大学自体もエネルギー管理を法的にしっかりとやらなければいけないという制約を受け、学内ではエネルギー使用に関する学内規定を制定しています。さらにこの規定を運用するために、エネルギーに関する専門委員会が発足、この中で運用のエネルギー、省エネルギーをどう達成するかを考え、実践してきた状況です。

キャンパスマスタープランの中での位置ですが、キャンパスマスタープランの2010の時では、2005年度比で、2014年時点で排出CO2を20%カットすると公言しました。これが数値的目標になったということです。これをどのように達成するか、様々な手法でこれを達成しようと具体的な手法をあげています。たとえば新築・大規模改修での省エネですと、まずは建物の性能を上げ、建物の高断熱化の標準化、あるいは日射の負荷を遮るようなデザインなど基本的な仕様として決まりました。

次に設備的な手法についてご紹介します。設備は基本的に高効率の機器を導入するということがありました。さらに最近建てたものはすべて全館LED照明で計画され実践されています。また空調機はその設計方法を見直しています。運用の結果を見ますと、機器の容量が大きい、過剰になっているところがなんとなく見え隠れする。これはいろいろな要因によって起こるわけですが、ではどこが大きな要因になるかということを、具体的な細かなデータをとりながら確認しています。基本的には、機器の容量を決めるときに、教員の入る部屋、大学院生が入るようなゼミ室研究室のたぐい、そのような所につく設備は大きめに付いていることが具体的にはわかりました。これを受けて、具体的な結果から総合的な容量を見直すことをやっています。

外部資金による省エネの改修方法ですがこれは日本でいえば、ESCO(エスコ)事業があり、外部資金で大規模な改修をする事業です。こういったものを大きな建物、効果の大きな建物では実施しました。図書館や動物実験棟とか、病院といったものです。効果も低CO2としては大きな効果をあげてきました。さらにここで重要なのは、そのESCOについては管理一体型と言って、その後の運用の省エネルギーも事業者に保証させる契約になっていまして、継続的に省エネルギーが達成できる仕組みが導入されています。

学内資金による省エネ施設の改修は、これは年間3,000万円を用意し、細かな改修についてユーザーからの要求に応えられる財源を確保しています。建物が大規模に改築される、あるいは新築になる時には先進的なシステム、高効率機器が入りますけれども、いったん建った建物は、なかなかお金がつかないことに対して、このような予算をつけて細かな改修をしていく。たとえば実験用のフリーザーを高効率のものに変えていく予算もここで用意しています。それから運用時、この省エネ推進については、省エネルギーキャンペーンをしたり、夏と冬で省エネルギー、節電に関する実行計画を立てて、それを実践しています。これによって、CO2、エネルギー消費の総量、排出総量ですけれども、年々減っている状況が見られます。

省エネルギーを推進する体制についてご紹介しますと、総長のもとに、エネルギー管理統轄者、これは施設担当の理事が担当しています。そのもとに施設計画・マネジメント委員会という全学で合意を図る委員会があり、ここでこの計画については合意を得て、実践していくという流れになります。当然ここは各部局の代表者等がいる会議ですので、専門家としてはこのワーキングで具体的な手法を練って、上に上げることをやります。この長を私が担当しています。実践される内容は、末端までいきまして、各教員まで伝達されて実行されます。東山キャンパスで言いますと1,000人あまりが任命されて、省エネルギーを推進しています。それからこの内容は数値目標を立て、たとえばCO2を何%、何年までに削減する、それからエネルギーの消費の原単位、これを1%以上削減しましょうとか、あるいは契約電力、最大デマンドに対して何%低減するかとか、あるいは年間のエネルギー消費のうちの75%を、名古屋大の場合には24時間使っているエネルギーがあり、これをベース電力と言い、これを年々削減する目標を立てながら運用をしています。

また、新たな取り組みとしては、光熱水費の課金の仕方を少し変えようとしています。これはインセンティブとペナルティを課すような方法で、ただ今シミュレーション中ですけれども、省エネを達成した部局に対してはインセンティブを与えて、失敗したところに対してはペナルティを与える、余分にお金をいただくという方法を使っています。

企業との連携という意味では、フィールドテストの導入という、これは企業からいろんな省エネ機器の売り込みがあります。それは企業が大学を実験フィールドとして、その実証をして、良ければ今後採用することを考える内容で進めています。あるいは、日本の建物ですけれども、空調設備については基本的には個別のエアコン、エアコンディショナーが入っていまして、個別化しています。自由にユーザーが使える状況ですが、それを集中的に管理する方法、これを使いながら省エネの運用を徹底しているということです。それからエネルギーデータのマネジメントシステムを構築して、どれだけどこでエネルギーを使っているか、これを一元的に管理して、このデータをユーザーに提示していく、ということもやっています。それから最大電力、契約電力にかかわるものですが、これはキャンパスの運営を考えると非常に重要ですが、最大電力が発生した時間帯、どの部局がどれだけ電気を使っていたかが見える自動分析システムを今構築中です。

全学的な運用は先ほどの委員会でできますが、細かに研究室に入り込んで、その研究室の特性にメスを入れて、どういう対策が必要かということも実践しています。それから今後の対策をどうするか、新たなシステム、空調の制御システムはいろいろな提案が企業からあるので、それをキャンパスでやった場合にどれぐらい効果があるかということを確認しています。快適性を損なわずに省エネを達成できる空調機の制御について確認をした結果があります。40%ぐらいのエネルギー削減ができるということが、実態として出てきました。

同じ条件を建物で強制的に作って、本当に省エネになるかどうかを実証した例の効果は40%でした。しかし、同じ環境下で26%省エネになるということを確認しています。これは学生も参加しながら確認をとっています。快適性を損なわずに、というところを本当に達成していることも確認しております。

それから最大電力の抑制については、デマンド・レスポンスの制御を入れようとしています。契約電力に近づいた時に、強制的に空調の温度を1時間ほど緩和していくものです。今後必要だろうということで、前倒しでいろいろと検討しています。このような取り組みを受けて総長が声明した20%以上CO2削減を、実際にもう達成しました。そして、このような取り組みは社会還元ということで、いろいろな研究会やシンポジウム、データ報告会を通じて社会に還元している状況にあります。

名古屋大学が取り組んでいる組織の作り方、それからチームで何をやっているかという話をご紹介させていただきました。どうもありがとうございました。

(注1)OPRはOwner’s Project Requirementの略。建築主側が定める企画段階での建設施設の省エネ性能、手法、空間計画などに関する具体的基本要件。