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サステイナブルキャンパス国際シンポジウム2015 基調講演より ジェームス・タンジー ブリティッシュコロンビア大学 教授

2015年12月3日に開催した国際シンポジウムの基調講演より

リビング・ラボラトリの中で

ジェームス・タンジー ブリティッシュコロンビア大学 教授

今回このようにお話をする機会を与えてくださいまして、ありがとうございます。ブリティッシュコロンビア大学(以下UBC)のキャンパスはひとつの街のようです。1日に6万人ぐらいの交通量があります。そしてこのキャンパスの経営に関しては、我々が判断をしていくことであります。将来におけるサステイナビリティの問題に、北アメリカ、アジア、世界はどのようにかかわっていくのか、50%の世界の人口、2030年にはさらに多くの人々が、都市に住む時代になってまいります。そのような都市に住む問題に関して、サステイナビリティを通して解決策を見出していきたいと思っております。

UBCは北大やMITのように、ダウンタウンに位置することもなく、我々の電力を自分で発電するシステムを構築しております。10年ぐらい前からリビング・ラボラトリ(注1)として活動をしております。

UBCのもうひとつの点、ブリティッシュコロンビア州では、気候変動対策の1つとして、厳しい規制があります。州では1トンあたり30ドルの炭素税があります。これはすべてのセクターに課されている税金です。さらに、キャンパスから排出されている廃棄物に、さらに25ドルの炭素税がかかります。病院に関しましては55ドルの炭素税を払っています。ですから、この炭素税のしくみは、環境負荷を削減していくモチベーションになっております。また、もっともグリーンな建物を建築していくことが目的となっており、それは廃棄物に関しても応用されているので、大学にとって非常に大きなインセンティブがあります。そういったことも鑑みて、さらなる努力をしているところです。

ブリティッシュコロンビア大学では15年ほど前から、キャンパスの研究、教育とキャンパスの経営とが重なるような事業形態をとっております。多くの大学ではエネルギー消費などの経営課題は、教育・研究から切り離されて考えられますが、UBCでは連動させています。様々な委員会があり、運営スタッフと教員が協働しています。後半の方で例をあげて説明をしますけれども、大学の運営からの予算を獲得して、そのサステイナビリティ教育にインプットしています。

施設整備に関してはライフサイクルをもとにした意思決定が行われております。大学は、建物の開発者(デベロッパー)でもあり、同時にオペレーターでもあります。よって、より良い建物をつくることを考えております。

非常に大胆な環境負荷低減目標を設定しております。最初にポリシーがあったために、エネルギー効率化を図る大学となり得たわけです。これは、節約した分を貯金しておいたということです。そして翌年、そこからエネルギー効率化を図るための予算が確保されました。エネルギー投資会社という会社がありました。’98年、カナダの大学で初めてサステイナビリティキャンパスオフィスを開設しております。オペレーションチームの中で、サステイナビリティマネジメントを全学で実行するようになりました。2007年にはUBCは京都の温室効果ガス削減目標を達成しております。1990年代から6%の削減を果たしております。それから25%削減をしております。その時期、カナダ全体では25%増えております。ですから、この削減目標に関しましては、順調にいっております。UBC全体で教育・研究・研修、すべての分野でサステイナビリティが、中核の政策と位置づけられております。

非常に明確なビジョンをもつことが大事と思います。何を目標としているのか。UBCではステークホルダーと様々な会議を行い、サステイナビリティに関して議論しております。歴史的にはサステイナビリティというのは、悪いものを避けることです。温室効果ガス、自然を破壊するもの、そして、水質に悪影響を与えるものなどを避けてきました。しかし、我々の大学では、サステイナビリティと言うと、世界をもっと住みやすいところにする、悪いものを避けるだけではなく、人間のウェルビーイングを向上させる、環境を向上させるものと捉えています。

UBCでは学位プログラムとは別に、全学生がサステイナビリティ学を学べるようにしています。大学はルールを変更し、サステイナビリティに関するコースを副専攻として学べるようにしています。全学で350以上のサステイナビリティ教育コースを設定しており、すべての学生がサステイナビリティを学習できる体制をとっております。

そして、このキャンパスの大きなビジョンでありますけれども、それを応用していくため、ネットワークを活用するため、コーディネーターという方々が全学におります。トップダウンアプローチのみならず、教員、職員、学生、それからボランティアなどもサステイナビリティを一緒に推進するという体制になっております。キャンパスでは70名のサステイナビリティコーディネーターがいます。そして、30名のフルタイムの専任スタッフが、サステイナビリティ・オフィスに雇用されております。また、キャンパスには200名の研究者、24の研究所があります。サステイナビリティに関する研究が行われております。また、学生の寮ですけれども、9千人の学生が住んでおり、この中で3,100名の学生がなんらかのかかわりをもっています。ネットワークの構築を重視しており、メッセージを発信しています。研究者やいろいろなステークホルダーを巻き込んでいった体制になっているのです。

サステイナビリティに関連するコースの数は636、現在ございます。ニューマン先生が言っておりましたように、ベースラインをきちっと設定した上でモニターをしていく。そして報告、それを透明にしていくことも重要だと思います。また、教育、学習、研究ですが、各学生はサステイナビリティ・ラーニング・パスウェイというものを通して、医学、工学どの専攻に関係なく、サステイナビリティの教育にアクセスすべきであると思っております。2014年応用研究では448人の学生が加わり、636のサステイナブル関連のコースがあり、768人の教員と学生がサステイナビリティのプロジェクトにかかわったわけです。我々としては学科報告におきまして、このプログラムを再度拡大し、バンクーバー市、バンクーバー州、それから電力会社とともに、どういったプログラムが他にあるのかを考えたわけです。すなわち、研究者、それから学生を巻き込んで、どのように問題を解決するかも考えるわけです。教室の中だけではなく、キャンパスあるいは街に出てプロジェクトを実施します。そしてまた様々なスピーカー・シリーズというのを開発し、非常に著名な外部からのスピーカーを招きました。今年においては5,000人の学生がこのようなイベントに参加しています。そして、30人の大学院生が実際にインターンシップをコミュニティのパートナーとともにやっています。このようなプロジェクトがあったわけです。そして、サステイナビリティのイニシアチブがなされ、これが学生に様々な研究、そして応用研究にかかわる機会を提供しています。

次にキャンパス運営とインフラですけれども、我々は様々な気候変動対策アクションプログラムを行っています。たとえばキャンパスの車両についてフォーカスをしました。また22のグリーンビルを建築いたしました。それから、近隣のエネルギーの使用についても見ていたわけです。(中略)

もうひとつはCIRS、シルスです。これは北米においては、もっとも環境に優しいビルであると思います。我々のリビングラボのコンセプトを集約したものです。2000年に計画をスタートし、その時にはもっとも先進的なエネルギー照明、そしてヒーティング技術をすべて、1つのビルに入れることを考えたわけです。実際はさらにもっと先進的なシステムと入れました。モジュラー型にしたのです。すなわち壁とか床などを可動にしたわけです。最初に、できるだけ柔軟性をもったビルの設計をしたわけです。500人の講堂もあります。エアコンのシステムはここでは入っていません。ビルの形により、たとえば温風・熱風を上の方に排出できる、熱交換システムがあり、日中での熱を地下で蓄えることができ、夜間に暖房することができます。また、屋根では雨水を収集することができ、それを水の供給に回すことができます。熱で太陽光を収集することができ、すべての電気を供給します。すべての排水が濾過されます。雨水を収集し濾過し、きれいな水として供給することができるのです。また正面のところ、木が植えられています。このビルがすべて完成された場合には、木で覆われます。夏は緑によって遮光できます。冬は葉が枯れますので、太陽光が入ってきて、ビルの中が暖かくなります。また、水の質においては、非常にプラスの方向に働くと思います。すべて雨水を収集するからです。また、木材の柱の中では炭素が収集されています。暖房などビルの運用に伴いどれだけのCO2が排出されるかも分析しました。もうひとつの大切な面は、健康、生産性、そして人々がハッピーであるということです。太陽光が入りますと実際、人々の健康、生産性および幸福につながるという研究もあります。それをまさに体現していると思います。

こちらは年間のコストを示しています。このようなビルを建築するにあたって、最終的には4,000万ドルかかりました。リード・ゴールドビルでも建築コストはCIRSよりは安いわけです。我々は建築により多くの投資をしたけれども、ランニングコストにおいては節約になりました。それから保守費用が少ないわけです。たとえばビルの使用法、使用目的が変わった場合は、壁を取り払うことができます。既存のビルでは壁を取り払うには非常に大きな費用が必要ですけれども、CIRSのビルでは床、天井、壁を簡単に動かすことができるので、補修費も少ないわけです。たしかに建築コストでは、初期投資は高かったけれども、全体的に見ますと従来型のビルと同じコストです。

次に、これは現在キャンパスで建築しているビルです。木造です。コンクリートはエレベーターの部分だけです。ラミネートされた木材です。たとえばこのぐらいの梁の太さになるわけです。耐火性もスチールよりも良い。そして耐震性も良いわけです。今までは11階建ての木材建築が最大だったと思います。日本では木材建築は5階までしか建てることができないと思いますが、これは18階建になります。53mの高さの建築物です。400室の学生の寮です。

非常に緊密なパートナーシップをバンクーバー市ともっています。共同研究のプログラムを行っています。そしてそのデモンストレーションを行っています。それからBCハイドロという電力会社とのパートナーシップをもっています。パートナーシップはメトロバンクーバー、これは水と交通に関しての共同研究を行っています。そして様々な業界とのパートナーシップをもっています。シスコとも協働しています。ノートパソコンを通常の電力ケーブルではなくイーサネットケーブルを使うプロジェクトを行なっています。その方が効率良く、節約につながり、これも大学キャンパスの中でデモンストレーションを行っています。

私の経験からのアドバイスですが、我々は25年間このような取り組みを行ってきました。意思決定のやり方を変えるには、それだけの時間がかかったわけです。ですので、非常に忍耐力が必要です。それから、非常に強い目標をもつことが必要ですし、それに対しての責任をもつことも重要だと思います。そして3つめが最も重要だと思いますが、教育専攻同士の統合です。教員が興味をもっている研究は何かを見つけることです。実際その研究を、学生の教育コースに設けることが重要だと思います。このような統合により、成功できると思います、UBCはだいたい20億ドル予算があります。毎年5億ドルを研究費として獲得しています。ですので、研究の機会があって、研究によってのインカムがあがれば、おそらく実際にもっとこういったプロジェクトをより多く施工できると思います。また、ライフサイクルコストに基づいた予算立てが非常に重要だと思います。それが投資にも結びつくからです。炭素税は非常に高いわけです。ブリティッシュコロンビア州におきましても炭素税は高く、大学でも政府でも政策決定者はどのように投資をするかを、十分に考えなければならないと考えています。以上です。ありがとうございました。

(注1)リビング・ラボラトリの解釈は、様々に表現されるが、例えば「多様な学内外のステークホルダーの参加のもと、大学の教育・研究をキャンパス内や周辺地域で展開し、豊かな社会づくりに貢献する大学の取り組み。」