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サステイナブルキャンパス国際シンポジウム2014 趣旨説明より 小篠 隆生 北海道大学工学研究院 准教授

2014年11月25日に開催した国際シンポジウムの趣旨説明より

サステイナブルキャンパス構築のための思想と実践

大学にとって「地域」とは

小篠 隆生 北海道大学工学研究院 准教授

皆様こんにちは。ただいまご紹介にあずかりました小篠です。私から「サステイナブルキャンパス国際シンポジウム」の簡単な趣旨説明をさせていただきたいと思います。

ここに示しましたのは本学のサステイナブルキャンパスの戦略を示すガイドラインと言えるかと思います。現行のマスタープランが2006年度、正確に言うと2007年3月に発布されたわけですけれど、ここから北大のサステイナブルキャンパスの取り組みがスタートしています。その後2010年に「サステイナブルキャンパス推進本部」が開設され、そこから大きくサステイナブルキャンパスの実現に向けてスタートが切られていきました。翌年の2011年より国際シンポジウムが毎年行われておりまして、今年は4回目になります。じつは重要なターニングポイントがあったわけですけれど、洞爺湖サミットが開かれたときに、北大で「G8大学サミット」が開催されました。そこで「札幌サステイナビリティ宣言」が出され、そのサステイナビリティ宣言から6年目という節目の年でもあります。その中で私どもはシンポジウムの結果を生かしながら、たとえばアクションプランを構築したり、サステイナブルキャンパスの評価システムをつくってきました。今回のシンポジウムの成果は、第3期の中期計画、中期目標に向けて良い結果を出していくことになってほしいなと思っておりますし、ちょうど10年ぐらいのスパンで改訂をしていかなければいけないキャンパスマスタープランのためにも、今回の成果を期待しています。

では、もう少し具体的にこれまでの歩みを見ていきたいと思います。これが北大の大きな活動であったわけですけれど、このストリームが調査活動、実践、さらに交流という大きな流れがあったわけでございます。当初スタートしたときは「サステイナブルキャンパスとは何か?」ということを、私どもはまったくつかめておりませんでした。そこで先進事例を調査しに行き、まずサステイナブルキャンパスの目標像をつくりあげていくために、先進事例の大学の方々をお呼びして「国際シンポジウム2011」を開催いたしました。その成果がアクションプランにつながっています。アクションプランができあがったことによって、何をすれば良いかが見えてきたので、実現のための活動を実行していくことになっていったわけですね。そういう活動を実行する中で、この実行の方向性が正しいのかということが問われてきます。そこで、実行の内容をどうやって評価すればいいのかが問題になってきました。そこで2012年のシンポジウムでそのテーマを行いまして、その結果として評価システムの確立を行ってきました。この評価システムを利用することで活動の成果は検証が楽になったわけですけれど、そうするとやはり北海道大学の中であまり取り組んでこなかった項目が明らかになってきました。その中の重要なテーマがじつは大学と地域の連携だったのです。そこで2013年にそれをテーマにシンポジウムを行いました。

そして、今回の2014は何をやるのかということになりますけれど、2013のテーマを引き継いで、もう少し深掘りしていきたいということを考えています。サステイナブルキャンパスの評価システムを考えようとしたときに、「サステイナブルキャンパスとは何か」というフレームワークを考えたチャートになるわけですね。サステイナブル・ディベロプメントというものを考えるときに大きく、環境、経済、それから社会の3軸が重要であるということは皆様方ご承知の通りだと思います。それを大学に置き換えて考えようとしたときに、環境は大学のキャンパス空間であり、地域経済は大学の運営が大きく寄与し、社会は大学が社会的責任をどういうふうにもつのかということになるでしょう。北大のシステムはこの3つの軸の中の項目を評価指標としながらつくられているわけですけれども、サステイナブルキャンパスの中での大学の社会的な責任、地域との連携というものが強く問われているということがわかるわけです。

これは昨年のシンポジウムのときに東大の出口先生からプレゼンテーションされたものを引用しております。東京大学は千葉大学、千葉県、千葉市、三菱不動産、それから、つくばエクスプレス鉄道会社、地域住民、というそれぞれの学とパブリックセクターと民間セクターが連携したまちづくりを推進するために「柏の葉国際キャンパスタウン・イニシアティブ」という組織を構築して、まちづくりを進めているというもののご紹介です。そこでは大学の知財を利用して、近い将来の新たな社会ニーズを実現するためにさまざまな提案とその実証実験を実際の街で展開して、新たなまちづくりの実験基地になっているというようなご紹介でした。もちろん地域住民も巻き込んださまざまな活動が推進されています。そこで、その中核になっている組織が「UDCK」という「アーバンデザインセンター柏の葉」です。ここでは協働、連携の中核的な活動の拠点であると同時に、さまざまな問題を解決するためのシンクタンクでもあり、活動を内外に発信するというようなセンター機能をもっているということがご紹介されました。

一方で、もう一人のプレゼンターとしてケンブリッジ大学のヘザー・トペルさんが発表した、ケンブリッジ大学の地域との協働のプロジェクトがこの図であります。1200年代ぐらいからつくられたケンブリッジ大学の古いキャンパスがここにあり、西側のほうにまさに開発していますけれど、新たなキャンパスと公共施設を含めた住宅地を建設しようと考えているのが、ノースウエストケンブリッジというプロジェクトであります。これはそのときに計画調整を行うための組織の関係図になります。大学がここにいて、こちら側に地域の行政体との関係を示しています。大学は市と地域、両方の行政と協働しながら地域開発を進めています。アメリカで出版された『University and Urban Developer』という本がありますけれど、まさに地域開発を大学主導で行っている事例が示されています。

以上のように、前回のシンポジウムで大学が地域と連携する重要性が改めて確認されたわけです。このスライドはサステイナブルキャンパスの位置付けを示したものです。持続可能な発展に関して大学や地域が担うべき役割が示されているわけですけれども、大学では当然のことながら教育・研究というもの、地域ではまちづくりでありますとか、社会サービスの向上、福祉の政策、あるいは経済振興といったものが課題としてあげられると思います。大学はそれらのテーマに呼応するような人材を育成したり、地域の創造を担っていくということになるわけですが、サステイナビリティを実現するために特に重視されているのは、もちろん環境負荷低減ということも非常に重要なテーマではありますけれど、それだけではなく、利害関係者が参加できるシステムをつくって、社会自体が持続可能になっていく、そういうような状態をつくりあげていくことが必要なのではないかと思います。これらの課題について、キャンパスで検証された結果を地域社会に還元していって、地域社会のQOLを改善していく、高めていくというような必要性があると考えています。このような活動の総体を含めた場の形成というものが、サステイナブルキャンパスと言えるのではないだろうかと考えられるわけです。

最後のスライドになりましたけれども、ではそのサステイナブルキャンパスで行うべき内容はこのように整理できるのではないかなと考えております。大学の使命としては、サステイナブルキャンパスのために、大学のキャンパスを地域のサステイナビリティを実現するためのモデルとしてとらえ、それから人材育成や地域創造の拠点となるといったことが必要であると言えます。一方、地域では魅力的なコミュニティを支えるための空間整備が欠かせないことであると同時に、地域経済を活性化したり、市民のQOLを高めていくことが必要だと考えられます。それを実現するためにここで出てきたわけですけれども、リビング・ラボラトリーというような、大学と地域をつなぐプラットフォーム的な役割を果たす状況づくりというものが求められているということになると考えられるわけです。このリビング・ラボラトリーについて今日はかなり突っ込んだ議論になっていくのではないかなと期待しておりますけれども、このような場、状況をつくり出していくことが大学と地域の連携の形ではないでしょうか。これが持続可能な知識基盤社会の構築のためのプロセスと考えられるわけですけれども、今日はこれから植田先生、それからケニッグ先生の基調講演、さらにパネルディスカッションというような催しの中で、このようなことが解題されていくということを期待しておりますし、また、それは具体的に北大や札幌市の中で展開されるプロジェクトとして何か新しいプロジェクトがつくり出されるきっかけができあがっていく、ということを期待しています。ということで、私の趣旨説明を終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。