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「廃棄物の臨床医」として生きる。大学院工学研究院 松藤 敏彦先生

環境報告書2014より

白いシャツを着ている男性

自動的に生成された説明松藤 敏彦 Toshihiko Matsuto
大学院工学研究院環境創生工学部門 教授
北海道大学工学部衛生工学科卒業、大学院工学研究科修士・博士課程衛生工学専攻修了。1983年より北海道大学に勤務。北海道大学工学部教授、北海道大学環境保全センター長、サステイナブルキャンパス推進本部運営委員会委員、化学物質等管理委員会会員、安全衛生本部運営委員会委員、北海道大学施設・環境計画室室員、工学研究院安全衛生管理室長。環境科学会理事、廃棄物資源循環学会会長

ごみは全体で最適化。

「僕は廃棄物の臨床医でなければ、って最近思ったんですよね」。そう話すのは大学院工学研究院環境創生工学部門で廃棄物処理を研究する松藤教授。「よく専門医が患者の部分だけを診て治療しますけれど、全体を診なきゃおかしいですよ。ごみの研究も、ごみの発生から分別、収集、資源化、中間処理、埋め立てまでをシステムとしてとらえて、全体で最適化することが大切なんです。だから、お金のことも環境への影響も住民意識も全部を研究するようになりました」

研究については、廃棄物処分工学研究室のサイトで説明されていますが、ここでも簡単に紹介します。通常「ごみ」と呼ばれる廃棄物には、家庭ごみと産業廃棄物があります。これらの処理方法には、物理的処理(固形燃料化)、生物的処理(堆肥化、メタン発酵)、熱的処理(焼却、炭化、水熱処理)などがあり、いろいろな処理技術について研究を行っています。また、どのような処理を行っても最終的には残渣が残り、埋め立てが必要になるため、安全安心な最終処分についての研究にも取り組んでいます。このようにごみの分別から最終処分までをハード(実験、調査、化学分析)、ソフト(アンケート、データ分析)の両面から研究し、総合的な廃棄物処理の構築をめざしています。

研究から得た結論として「ごみ処理で失敗しているのは、出てきてからなんとかしようとしているから」と松藤教授は指摘します。分別に励む前に、買い物をする時点からごみになる日を考えてみましょう。また、分別後についても気にかけた方が良さそうです。

「札幌市で集められたガラスびんがどうなっているか知っていますか?約40%が埋め立て地に送られているんですよ。びん・缶・ペットボトルを一緒に収集車で集めるからガラスが割れて再利用しにくくなる。これじゃ、再利用されていると思って分別している市民への裏切りじゃないですか。市民が何も考えず何も言わないと、自治体も考えない」という実態があるそうです。

人, 屋外, 男, 民衆 が含まれている画像

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廃棄物埋立地の現地調査

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埋立地現地調査

ちゃんと社会に生かせるのが実学。

ごみに関する研究は、まさに現代の実学であって、「実学の重視」を教育研究理念のひとつとして掲げる北海道大学にふさわしいと言えるでしょう。「実学重視」と言うと、産学連携をイメージする人も多いようですが、松藤教授はあくまでも「ちゃんと社会に生かせるか」に着目します。そして「北大が開学当初、社会に対する人材供給に努めていたように、今の時代も、どういう人材を育てるかが重要ではないか」と考えています。

そこで学生へのアドバイスをしてもらいました。「研究者になる人は、ものをちゃんと見てください。目的を考えてください。『目的—方法—結果』という流れがあって、それがまた『目的』につながります。一番良い研究は、相手を見て、何が問題かを考えること。その問題は構造的な問題か意識的な問題か、必要とされるニーズは何かを理解しなければなりません」。また、「昔の専門バカは、じつはいろいろなことを知っていた」と、広く勉強することをすすめます。視野を狭くしないために効果的な方法は、新書を読むこと。ジャンルにとらわれずに読むと発想が広がり、いろいろなことを結びつけられるそうです。

人生はこれからを最適化すれば良い。

フェンスの前に立っている男性

中程度の精度で自動的に生成された説明

松藤教授の人生論は「ここから先を最適にすれば良い」というものです。たしかに「あっちを選んでいたらどうなっていたのか」などと考えても仕方がありません。選んでいないのですから。「後悔するより、自分が選んだものでこれからを考えればいいんです。研究も、会社選びも、誰と結婚するかだってそうです」

また「すべてのものには裏がある。みんないいことしか言わないけれど、得られるものと失うものがある」。だから何が大事か、現場を観察して、しっかり考えてほしいと願っています。

東日本大震災仮置き場調査

山の中を歩いている男性

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東日本大震災仮置き場調査

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東日本大震災津波廃棄物の
組成分析