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個の力と全体の力で、北海道大学の未来を

環境報告書2013より

草の上に立つスーツを着た男性たち

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山口 佳三 総長 × 山中 康裕 教授

「北海道大学のサステイナビリティとは?」「これからの課題は何か?」といったテーマを中心に2013年6月、山口佳三総長と山中康裕教授がなごやかに対談。学生や研究者を今伝えたい思いを語り合いました。

スーツを着ている男は座っている

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北海道大学総長
山口 佳三 Keizo Yamaguchi
京都大学理学部卒業。名古屋大学大学院理学研究科博士課程(前期課程)、京都大学大学院理学研究科博士課程(後期課程)修了。専門は微分幾何学。1999年、北海道大学総長補佐、2011年、理事(教育、学生等)・副学長(高等教育推進機構長、アドミッションセンター長、人材育成本部長兼任)を経て、2013年、第18代北海道大学総長に就任。

スーツを着た男性

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サステイナビリティ学教育研究センター長
山中 康裕 Yasuhiro Yamanaka
東京大学理学部卒業。東京大学気候システム研究センターにおける海洋物質循環のモデリング研究で博士号取得。2008年よりグローバルCOE拠点リーダー。2012年よりサステイナビリティ学教育研究センター長。

現実の問題を解くために知恵を出し合う。

山中先生が総長になられたときに掲げた3つの理念「多様性」「個性を持った総合力」「寛容」。その中で「寛容」という言葉が非常に印象に残っています。今までサステイナビリティを考える上でいろいろな価値観を認めるには「多様性」という言葉が使われていましたが、そこからさらに進んで、ということでしょうか。

山口 大学では個々の研究者の自由な発想を大事にしたい。それが「多様性」ですね。一方で北海道大学としての個性を出さないといけない。それが「全体の力」ですけれど、ふたつは逆方向を向いていて、「寛容」の精神がなければ両立できないだろうと。

山中 成長に向かって1つの方向をずっと見ていたのが20世紀ですね。

山口 科学の発展は社会を大きく変えてきました。しかし、科学が世の中をどんどん良くしてくれるという信仰は、もはや成り立たなくなっています。それがサステイナビリティの元にもなっていると思うんですよね。現実にある問題を解くために、学問の先端が必要になってきているけれど、個々に自分が良いと思うことをやっているだけでは世の中は良くならない。

山中 私はサステイナビリティという言葉を説明するときは「生き残りですよ」と言っています。ひたすら生き残るためにイヤなものを消すだけだと「サバイバル」ですけれど、「サステイナビリティ」はもっといいところを伸ばす。そんな説明をしているんですよね。

山口 文系・理系の融合というのもファクターとしてありますよね。

山中 正解がない時代だから、人々が何を選択するか、そのオプションを並べる。

山口 そのときに智恵を出し合うということですよね。

山中 大学が決めることもあるだろうけれど、一般の社会の人に考えてもらって決めていく。そのときに科学技術だけではなくて、社会科学の研究をしている人と一緒に提示して、どう合意していくか。そういう学問が今必要とされているのだと思います。

山口 人類の歴史を見ても、文化はそれぞれ自由な発想からきているけれど、自分の勝手な発想じゃなくて、それがどう世の中とかかわるかという意識をもつことがすごく大事。若いうちにもつことに意味がありますね。

もっと社会に役立ち、愛される北海道大学に。

山中 学生も研究者も外に出ていって、北海道の問題の解決をリードしていく視点が必要だと思いますが、どうでしょうか?

山口 もはや大学が“象牙の塔”として、こもって研究をやっている時代ではなくて、社会とともに学生を教育し、研究も社会のニーズをとらえて進めることが大事ですね。

山中 サステイナビリティという意味で「持続可能」という言葉がありますが、人生は有限なんですよね。やはり世代を越えていくようなものが必要だと思います。

山口 今、サステイナビリティに向けたカリキュラムづくりをやっていますよね。学部レベルで、もうちょっと何かつくれればいいですよね。

山中 はい、うちのセンターも微力ながら……。

山口 やはり今の若い人たちが、生きていく中で自分がどう貢献できるか、自然に考えるような場を提供する必要がありますよね。

山中 これからの大学は、外の人も受け入れるように変わっていく必要があると思います。じつは私の中では事業仕分けは1つの転機だったんですよね。大学って何だろうと随分考えさせられました。これからは社会に愛される大学にならないといけない。

山口 北大では、学内外の人が科学技術コミュニケーションを学ぶ「CoSTEP」(科学技術コミュニケーション教育研究部門)というユニークな活動をしていますけれど、ああいう情報発信は今までとは変わってきていますよね。北海道にある大学として、地元に対して役立つ大学であることは発信すべきだと思います。日本全体に発信しないとならないですね。

大学で、失敗はOK!クリエイティブな発想を。

山口 日本には失敗したらやり直しがきかないという独特な風潮があって、それにしばられている感じがありますよね。そこからうまく逃げ出してくださいというのに、どう言えばいいのか。

山中 私のところは「なるべく数多くの失敗をしなさい。小さな成功を得なさい」をキーワードにしています。

山口 小さな失敗は繰り返すことの方が大事だと思います。

山中 多分、失敗しなくてはいけないんですよ。「桜が満開か?」って話をいつもするんだけれど、散っていないうちは満開じゃない。アウトプットとインプットが釣り合ったところが満開なので。少しなんかおかしいぞというくらいのところが一番努力している。それと、学生だから許されるというのがあると思うんですよね。まず大学としては「失敗はOKですよ」と。

山口 「一直線ばかりじゃないよ」と。

山中 失敗をしたら単位をあげる、失敗するまで単位をあげないみたいな……。

山口 そういうのがあるといいですね。

山中 単なる思いつきですみません。少子高齢化は世界の中で日本が最先端、その中の最先端地区は北海道なんですよね。北海道でいろいろな実験をして成功すれば、日本が安心し、世界が安心する。大学の外では、今を生きるためにギリギリの状態もあるけれど、大学はまだクリエイティブな発想をしていい状況なので、そのクリエイティブなところを未来の豊かさをつくるために使っていいのだろうと思います。その姿を学生に見せて、それで共につくっていこう。そういう格好になるだろうと、私は思っていますね。

山口 そうありたいですね。札幌は、どう地域として生き残れるか。いろいろなアイデアをお聞きしたいですね。私は個の多様性をつなぐ力を探したい。また、北海道大学には全国から学生が集まってくれていて、みなさん、ある種の夢をもってきてくれていると思うので、我々は一緒にその夢を育てたいですね。

テーブルを囲んで座っている男性

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グラフィカル ユーザー インターフェイス, テキスト, アプリケーション, メール

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