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SDGsワークショップ(SDGs勉強会vol.2)/第14回ステークホルダーミーティングを開催いたしました
2019年3月18日(月)、北海道大学学術交流会館にて、SDGsワークショップ(SDGs勉強会vol.2)及び第14回サステイナブルキャンパスマネジメント本部ステークホルダーミーティングを開催いたしました。
SDGsワークショップ
URAステーションの協力をいただき、27名の学生と教職員のみなさんにご参加いただきました。北海道大学の有形無形の資源・資産(人材、知識、キャンパス空間、教育・研究活動、歴史など)を、SDGsに寄与するように活用すると、どのようなポジティブな効果をもたらすことができるのでしょうか?次世代に持続可能な社会を残すため、北海道大学にある多様な資源・資産を考え、それらの活用目的、活用方法のアイデアを出すことを狙いました。
ワークショップの様子
参加者
第14回ステークホルダーミーティング 「北海道大学×SDGs (Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」
環境報告書2019より
テーマは、昨年と同様「北海道大学×SDGs (Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」。前回のミーティングから1年を経て、「SDGs」に対する社会の理解が進み、様々な取組みが行われています。この状況の中、北海道大学は、高等教育機関としてどう貢献するのか。様々な立場から考えました。
(右から)凸版印刷株式会社 今津 秀紀(ファシリテーター)・工学研究院 准教授 小篠 隆生・大学院先端生命科学研究院長 出村 誠・産学・地域協働推進機構 博士研究員 加藤 知愛 会社 株式会社TREE 代表取締役 水野 雅弘・施設部施設企画課サステイナブルキャンパスマネジメント本部担当係長 森本 智博
ワークショップで出たアイデアは、誰が何をすると実現するのか?
今津 今回は午前中のワークショップから続いて「北海道大学とSDGs」というテーマで話し合います。まず、アイデアを実行するには誰が何をすると良いか、順番にお願いします。
加藤 他の誰かや何かより前に自分自身が、「ミッション・オリエンテッドで仕事をする、そのために時間を使う」ということから、未来が始まると考えたいです。
水野 午前中に「北大をSDGsタウンに」という話が出ました。都市に位置するキャンパスをベースにサステイナブルな技術をもった企業と投資家を集めて、次の豊かさを体感できる新たな循環社会が実現できないかと思います。
森本 いろいろなプロジェクトを実行ベースにつなげるのは組織的な話かもしれません。下から上に上げるスピード、そして、上が判断するスピードが求められると思います。
出村 今は縦割りのことが多いので、横串になるワーキンググループが先鞭を切るかたちがほしい。教員は授業にキーワードを取り込み社会につながる教育をして、職員も含めて意識づけができる環境ができたらいいですね。
小篠 様々な価値観をもつ先生方がいますから、学内の組織だけでSDGsの目標を達成しようとすると意思決定に時間がかかります。ですから、マッチングに長けた公的なマインドをもつ人や組織と組むことが必要だと思います。
今津 組織について、こうあってほしいというご意見は?
出村 各先生は多分、問題意識はもっているけれど、横につなげることはあまり経験がない。皆さんの考えをつなげる仕組みはこれから考えなければならず、職員や学生の動きにもつなげていくことは課題だと思います。
加藤 日本の制度では、社会事業を担う組織の経営形態は、非営利組織か営利企業に二分されます。でも、地域で必要とされる事業には、両方の経営を包含する組織でなければできない事業があります。多様な経営モデルが出てくるための北海道独自のインフラを整備できたらと思います。
水野 各先生が自分の研究とSDGsの目標を紐付けして大学横断で串刺しすると、何学部ではなくて、水資源や生態系など新たな体系化ができますよね。今の小・中学生が将来やりたいことと、北大の学部とのつながりがわかるインデックスができると良いと思います。
出村 大学院では学部を越えて生命科学や環境○○といった分野ができていますが、その先の産業界とは関係がわかりにくい。つなげるのりしろになるのがSDGsのラベリングで、たとえば水というキーワードによって産業界とのつながりがわかる仕組みが必要ですね。
小篠 アメリカのポートランド州立大学がやっている「コミュニティ・ベースド・ラーニング」では、ある科目を必修にして1年時に総合的なことを学び、4年までの間に「どうやって地域に還元するか」と実践的な研究をやる。そこでは企業人がチューターとして学生を後押しする。学生が面白いと感じれば、研究テーマになり、就職にもつながっていきます。北大ではSDGsのテーマを個別に授業に組み込んでいるけれど、体系的な教育プログラムはまだできていませんね。
出村 数年前に「すべての北大の授業科目をSDGsに紐付けしましょう」とシステム改革の提案はされたんです。残念ながら、各部局の先生の理解が得られる会議体まで持ち上げられておらず、実現していませんが。
森本 昨年のステークホルダーミーティングでもSDGsをテーマに話し合いましたが、未だSDGsへの取り組みが見えてこないのは、貢献していないわけではなくて、この研究はゴールとつながっているという「見える化」をしていないことが理由でしょう。やはりきちんとチェックと評価をする。その部分が北大には足りないと思います。
サステイナブルキャンパスマネジメント本部にこれから期待する役割は?
今津 次のテーマは、本日主催のサステイナブルキャンパスマネジメント本部(SCM本部)に期待するのはどんなことか?
森本 前身のサステイナブルキャンパス推進本部は2010年に発足し、省エネやごみの問題に取り組んでいました。それが2018年4月、キャンパスマスタープランをどうやって実現するか、施設整備を進める組織もプラスされてSCM本部に組み替えられています。
小篠 SCM本部は運営組織ですから、SDGsを進めるならば、研究組織と連携することが必要だと思います。
水野 今、SCM本部には各指標に対する目標数値はあるのですか?
小篠 当初から「サステイナブルキャンパスとは何か?」を明らかにするチェック項目は作られていました。「サステイナブルキャンパス評価システムASSC(アスク)」(P30参照)がそうです。その後でSDGsの話が出てきたので、どう紐付けするのかと取り組んでいるところです。
水野 キャンパスの評価システムがSDGsとうまくつながれば、世界的な目標と北大の目標が合致していく。
森本 SDGsは「誰ひとり取り残さない」という大目標がありますが、当本部で作ったASSCは「サステイナブルキャンパスをどうやってつくっていくか、評価していくか」が主眼ですから、SDGsと全部が一緒ではない。
小篠 集合の和はSDGsよりサステイナブルキャンパスのほうが小さいので、SDGsの目標の中で漏れるものが出てくる。けれど、たとえば貧困やジェンダーの話は評価システムには入っていなくとも研究や思考の中で求められますから、視野を広げる必要はあると思います。
水野 大学の評価基準はこれからSDGsが基準になる可能性が高いと思います。SCM本部で考えた今ある指標から少し広げて、グローバルスタンダードの評価に合わせたほうが納得性があるのではないかという感じはします。
出村 4月上旬にはタイムズ・ハイヤー・エデュケーションが大学のSDGs版世界ランキングを発表します。「私たちはすでにやっている」という意識はあるけれども、どう見せていくかが大切。そういう意味でもSCM本部に期待するところは大きいですね。
小篠 SDGsとASSCの項目とを見比べると、意外と近接度が高いので、「SDGsと関係性をもったシステムを作って北大は評価をしている」と言えると思います。
加藤 SCM本部のマネジメントの範疇は北大の最大価値化を含んでいるのですよね?
小篠 たとえばキャンパスマスタープランで歴史的建造物の活用や維持保全などが項目に入っていることを考えると、マネジメントの目的は、大学の価値を高めることです。ですから、どうすれば資産を最大化できるか問題提起をするし、「こうしたらできる」と企画までするのがSCM本部の到達目標だと思っています。
水野 これからの時代、社会課題解決に向けて、どれだけの人材を輩出していくか、どんな大学ベンチャーが生まれていくかと社会貢献を見える化していくアクションが必要です。戦略的には価値創出型のSCM本部になったほうがポジティブな気がします。
加藤 価値創出型のSCM本部をバックアップする体制が必要ですね。“北大が”サポートしていることを示す研究機関があって、マネジメントを支えるフォーメーションがとられ、社会的価値を最大化する戦略やスピーディな社会実装などが、デザインされると良いですね。
小篠 ギアをもう1段上げないとダメですよね。今言ったような組織がバックアップ体制をとり、ミッションを確定する。それにはもう1段上のところが目標になる。
森本 ギアを上げ、ミッションを作ることは大事ですが、それを今の体制でできるかというとNOで、それなりの手当てをしないと回っていかない。これまでは施設寄りのことが主だったので、SDGs全体を担うなら、どこまで責任をもつかを考えなければいけない。そうでないとSCM本部自体がサステイナブルでなくなると思います。
小篠 単純に事務運営をするために教員が協力するというレベルではなく、それが教育・研究のテーマになり大学の戦略につながっていくために、教員と職員が顔を突き合わせて考えていく。そういう発想が必要だと思います。
今津 何かバックアップの仕方はありませんか?
出村
学内に関しては、横串ワーキンググループを立ち上げ、SCM本部と各部局をつなげる組織体ができないかと思っています。外に関しては、やはり札幌市や道との関係が重要。地域とのつながりは、もう少し新しいチャネルとしてつくっていく必要があり、それがバックアップになるのかなという気がします。
加藤 北大が日本で初めて導入したDEMOLA(デモーラ)というプログラムがあります。大学がプラットフォームを提供し、学生と企業が一緒に未来のビジネスモデルを考えます。こういったトライアルを、研究の社会実装や学生起業のサポートに生かしていくことも、長期的にSDGsの実現の可能性を高めると思います。
今津 SCM本部として、大学の他の教員や職員の方々にお願いしたいことはありますか?
森本 1つは教職協働。アカデミックなことと運営的なことはリンクしないことが多いのですが、ギアアップするには、研究のテーマとSCM本部のミッションとがうまく重なって目標に向かってどう推し進めるのかを見つけなければいけない。そこをどう調整していくか。もう1つは、「SDGsの評価がない」という話が出ましたけれど、先生方がご自身で「自分の研究はSDGsのどのゴールとつながっています」という評価をアピールしていったほうが大学らしいのではないかと思います。
出村 フォーマットがパターン化されているほうが受け手側はわかりやすいので、一定のフォーマットに合わせて研究を紹介するプレスリリースができると良いですね。
小篠 そうなると、高い目標だったSDGsはスタンダードになっていきます。
森本 ただ、「自分はSDGsに関係がない研究をしている」と思っている先生もいらっしゃるでしょうから、そういう先生方の研究をどうやって拾い上げるかを一方で考えなければいけない。これは大事だと思っています。
SDGsに貢献し、北大のブランド力を上げる!
今津 最後に「これをやってSDGsを進め、北大の価値も高めてください」と、何かキーワードを出してください。
森本 2017年まで行われていた「サステナビリティ・ウィーク」は北大の強みだったと思います。キャンパスを舞台に2週間くらいをコア期間として、サステイナビリティに関連した講演会やワークショップなど、いろいろなことを各部局が主催していました。途絶えてしまったサステナビリティ・ウィークを復活するのが一番近道だと思います。
出村 今一番ビビッドなものを紹介する場所としての「SDGsミュージアム」。北海道大学総合博物館に展示室を設け、各部局に最新情報を展示してもらう。博物館には年間約20万人が訪れるそうなので、大勢の方に北大の中身をわかってもらえる場になると思います。
小篠 コミュニティ・ベースド・ラーニングのコア・カリキュラム化。メインストリームのカリキュラムに入れ、必修単位とする。それの発展形として、研究レベルでは地域の課題をつかんでコミュニティ・ビジネスを創出するところまで行う。ブランディングとしては、北海道全体を考えて「大学院と教養科目が連動するところまでいけないだろうか?」とやってみるのもあると思っています。
水野 SDGsを起点にして研究をコンテンツ化して発信していく。先生からでも学生からでも良いので。SDGsに貢献できる情報発信のあり方、ここからできると結果的にブランディングに大きく貢献すると思います。北大からSDGsを加速する新たな広報戦略を立ち上げられたら良いですね。
加藤 北大も、北海道の自然資本の中に存在します。北大には、北海道の自然資本を後世に受け継ぐ導き手になってほしい。海洋生物のサンクチュアリであるオホーツクも世界の海につながっています。生物の多様性が失われるスピードを少しでも遅くしたい。そのためには、世界中の人や組織から共感してもらってお金を集め、それを北大の研究に投資する。そして、それを発信していきたいですね。
今津 ありがとうございました。
参加者:
株式会社TREE 代表取締役 水野 雅弘
北海道大学 大学院先端生命科学研究院長 出村 誠
北海道大学 工学研究院 准教授 小篠 隆生
北海道大学 産学・地域協働推進機構 博士研究員 加藤 知愛
北海道大学 施設部施設企画課サステイナブルキャンパスマネジメント本部担当係長 森本 智博
ファシリテーター:凸版印刷株式会社 今津 秀紀