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今できること。第12回ステークホルダーミーティング

環境報告書2017より

2017年3月6日  ファカルティハウス 「エンレイソウ」 大会議室にて

北海道大学の環境への取り組みについて、学内外の関係者が意見を交換し合ってきた「ステークホルダーミーティング」。今回は、新キャンパスマスタープラン策定に向けて残される課題とその解決方法を中心に話し合いました。

テーブル, 屋内, 人, 男 が含まれている画像

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山重 明
株式会社 ノーザンクロス代表取締役社長

椅子に座っている女性

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加藤 肇子
まちづくり観光デザインセンター 代表/北海道大学大学院農学院共生基盤学専攻博士後期課程/自治体の地方創生、人材育成に関わる。

ネクタイを締めた少年

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阿部 恵輔
札幌市 まちづくり政策局政策企画部企画課企画担当係長/北海道庁総合政策部への2年の派遣を経て現職。

テーブル, 図書館, 食品, 部屋 が含まれている画像

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中山 拓登
北海道大学 農学部生物機能化学科 3年/北海道大学生活協同組合常務理事/全国大学生活協同組合連合会 理事

机の上に座っているスーツを着た男性

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川野辺 創
北海道大学国際連携機構 副機構長

テーブルに座っている男性

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佐々木 力
北海道大学キャンパスマスタープラン実現タスクフォースメンバー/施設部長

ファシリテーター

メガネを掛けた男性

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今津 秀紀
凸版印刷株式会社

※プロフィールは2017年3月6日当時。 ※敬称略

テーブルを囲んでいる人たち

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北大の問題点は?

今津 今回は「北大の問題点は何か」から聞いていきます。

加藤 総合的に北大を語れるコンシェルジュがいないことが問題点だと思います。5年前、農水省と名寄市の事業で、餅米がアスリートのスタミナ維持に効果があることを実証してくださる先生を探して、かなり時間がかかったことがあります。「それなら何学部の何先生」、せめて「何学部」と示してくれる人がいると助かります。JR札幌駅や地下鉄北12条駅などの近くにインフォメーション窓口を置き、総合的に語れる人を配置する他、電話やメールで回答すると解決しますよね。

阿部 問題点というよりは求められる役割が多様化していると思います。札幌はここ数年で外国人観光客が急増しているので、そういった海外の方と地域をつなぐ役割を担えると心強いですね。たとえば、北大では留学生の方も多いので、観光や商品開発など、海外の方の目線を必要としている地域や企業とつなげていく。「北大キャンパスが多文化共生の拠点になる」と意志が示されれば、地域や企業からも注目されるのではないでしょうか。

川野辺 学生は「自由に活動できる場がない」と思っているようですが、使えるところはたくさんあるので、ネットなどで「ここは使える」と情報を共有したい。また、使われていないスペースは地域や産官と連携して活用できるとよい。学内のニーズからすると留学生の宿舎や日本人学生が留学生と交流できる場、地域からすれば高齢者の住む所や子育て支援の場として活用できないかと。新しい施設をつくるのであれば、学生が住んで地域や OBの方々と交流して体験的なことを学べる施設にできたらと思います。

佐々木 職員側の立場でいくと、お金がない。お金がないので気持ちも沈む。国からの運営費交付金も目減りして、キャンパス全体で良好なメンテナンスができないので、外部資金を獲得してまかなうのが先生方の使命、というヘンな循環になってしまっています。自分の仕事としては、資金調達に向けた産学連携、あるいは札幌市に何らかの規制緩和を求めていく補佐ができます。教職員が「この方面においては北大がリーダーだ」と自負をもつと、それが将来的にはきれいなキャンパスにつながっていくのでは、と思います。

中山 「地域とのかかわりは大事」という話はよく出るけれど、どう貢献したいのかが学生の立場から具体的にイメージできません。“スーパーグローバル”と言われても、世界に貢献できる研究は10年、20年かかかるので、学生が在籍している時に何をしたらいいのか見えない。いろいろな人とかかわりをもつことのできる何かが欲しいと思います。

山重 マネジメントの欠如。今 “ナンジャラ MO”が大流行りで、CMO、キャンパス・マネジメント・オーガニゼーションのように “MO”とつけると “解決した感”があるけれど、多様な人たちときちんと関係を結んでいかないといけない。2点目は学生が集まる場所がないこと。研究棟にいて社会性が身につくとは思えないので、学内にカフェでも作って交流できるようにする。3点目は社会実験をする。仮説に基づいて実験して、成果があれば地域に反映していく。留学生と一般の人たちが共同生活できるシェアハウスみたいなものの実験は有効だと思います。

テーブルを囲んでいる人達

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プロジェクトをうまく進めるには?

今津 まず、外部の人も含めて組織を作っていくには?

加藤 3人ほどが束になって責任をもって進むと成功しますよね。北大に愛着があり本気な人と、収支・利益確保の視点で見られる人とでチームをつくると良いかと思います。

阿部 地域や企業との連携は、様々な形が考えられますが、研究開発など付加価値を生む部分と地域への社会貢献の部分など、メリハリをつけてステークホルダーと協働していくと良いと思います。

山重 当社はいろいろなプロジェクトで「より良い場所にしていきたい」といった動機でマネジメントを行っています。志が共有できる仲間“確信犯グループ”が中心になってマネジメントは動いていきます。「北大でこういうことをやると学生にも外から来た人にとってもハッピーだ」と仮説が見つかったら、企画にまとめ、意思決定にかけて進めていく。すぐに意思決定ができない時は「では1年間社会実験してみましょ」というのが私のやり方。実験を3年も4年も続けて、結局、制度化したものもあります。

川野辺 とても現実的なステップだと思います。まず空きスペースを活用してカフェなりを運営してみる。うまくいけば「もっと広いところを確保したいね」という気運が高まってくる。それで、趣旨に賛同した方々とチームを組んで進めると、プロジェクトが実現しますよね。

山重 大きなデザインを描いても、小さく実現性が高いものから着手して、成功した事実を大学の理事や民間の方々に見せる。実験で学生が店のオーナー役をするなどビジネスの現場に着くと、いい体験になると思うんですよね。

中山 「これは自分の役割だ」とわかっていると、学生は自分で考えるきっかけになると思います。

会議室に座る男性

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今津 北大でコトが実現しにくいのはどの辺ですか?

川野辺 これだけ大きな大学にしては、部局間の垣根が低いと思います。ただ、新しいことをやる時に、本部と部局で何をどう分担するか、誰が何をやるかは、最初から明確にしないと、うまくいかないと思います。

加藤 学内で「この人が言うなら仕方ない」と思われる60歳ぐらいの人とガンガン働く人2人でチームをつくるといかがでしょう。経済学部や経営学部の学生が卒業研究としてプロジェクトに入ってビジネスを成功させ、有名商社に就職するようなモデルをつくるのもいいかと。

佐々木 北大が人材の宝庫であることは間違いないんです。札幌市の審議会に入っていたり、企業の顧問になっていたりする先生は大勢いるけれど、あまり自分の大学にフィードバックしていないのが残念ですね。

今津 では、愛着と責任感をもった人を集めるには?

山重 私は自分自身が何を考えてどう行動しようとしているのか、ちゃんと伝える。自分がメッセージをもっていないと、相手にシンパシーをもっていただけないので。

加藤 組織を立ち上げる時は、自分も出資金を出して「本気だ」と示します。他にスカウトする手もあります。

阿部 プロジェクトの目的を明確にすることはもちろんですが、進める方に委ねる裁量が大きいほど、意欲のある方が集まりやすいと思います。

川野辺 たしかにトップから「任せたから」と言ってもらえれば、モチベーションが上がりますね。

山重 大学の場合、マネージャーを内部・外部から招聘していける。ただ、権限を明らかにしないといけない。

佐々木 大学でありがちなのは、兼務になってしまうこと。権限を付与されても、日常の業務や研究にプラスアルファで任されるので、力を注ぎきれないんですよね。

中山 学生も勉強して単位をとらなきゃいけない中で、プラスアルファでやる意味をどうやって見出すか。何を期待されているのか伝えてもらうのも大事だと思います。

今津 プロジェクトを実行していくポイントは?

山重 空き建物を改修してカフェをやるとします。大学の理事会の承認を受けたら、開設に必要な予算を確保し、運営のための体制を整え、保健所の許可を取る。それらはマネージャーの責任。事業にロスが出た場合の責任の取り方を明確にしておけばできますよ。社会実験として始めれば、やめることも可能なので「データを得るための実験」と割り切る手もある。仮説を立てて実験をしてデータを把握して評価するのは、大学の方々が得意とするところですよね。

阿部 北大キャンパスは都心にも近く利便性が高いので、有効活用できる土地や施設、機能などをわかりやすく示して、ステークホルダーと共有できると、新たな連携も生まれるかもしれません。

加藤 去年、アラスカに行って北海道をアピールしてきたんですけれど、その時の予算は「5年後に北海道で世界のアドベンチャーツーリズムのサミットをやる。そのために調査に行く」と企画書を作って、札幌市、釧路市などから集めたんです。地方の自治体がサテライトオフィスを北大に置き、その自治体に留学生も協力するような話であれば、市町村はお金を出しやすいと思います。

中山 小さいゴールがいっぱいあるといいのかな。大きなゴールの前にある要素を確認して、少しずつ積み重ねていくといいと思います。

佐々木 それが自信につながってくる。期限を付けて目標設定するのも、行動の原動力になりますよね。

『環境報告書2016』は何点?

今津 次に『環境報告書2016』の評価をいただきたいと思います。100点満点で点数をつけ、その理由もお願いします。

加藤 59点。誰に伝えたい冊子なのかがわかりづらい。なぜマスタープランを作ったのかもわかりづらい。これまで10年ぐらいの結果がすぐに見てとれない。それで、いじわるな点数でした。すみません。

川野辺 85点。この前の『2015』『2014』に比べるとフォーカスが絞られている感じがしました。あとは総長コメントが最後にあり、トップとしてではなく横から見たコメントみたいな位置づけになっているのが斬新だと思いました。

中山 80点くらい。1年前より、学生や教職員の取り組みがわかりやすくなった。ただ、「北大として」というよりは、普段環境にかかわる部署ががんばったところみたいな内容。あと、「今後どうしたい」と示してほしいと思いました。

阿部 80点くらい。大学にかかわる方々の生の声があるのはいい。「今こういうことを考えている」と将来へのメッセージが入っていると、より良くなる。地域や企業も「今後の北大」のことを気にかけていると思います。

山重 60点。環境保全の全体のスキームがわかりにくい。「電力使用量がこれだけ減りました」といったデータはなくてもいいくらい。アカデミックな機関なので、もう少し科学的に解説したほうがいい。お金をもらえるくらいの環境報告書にしたほうがいいんじゃないかと、期待を込めて。

佐々木 3分の2。読み物としては楽しい。いろいろな記事があってビジュアル的にも以前より進んだかな。一方でデータが少ない。大学としての環境収支、「これだけの電気を使い、CO₂を排出し、対してこういう研究成果がありました」と。全体像がまだまだ見えないところがあります。

今津 北大に「特にここだけはがんばって」というところは?

加藤 本当は力があるのに閑職にいる優秀な人はどの組織にもいて、きっと北大にもいると思うので、そういう人を探し出しプロジェクトを任せる。もう1つは「北大のキャンパスで働けるよ」と学外の人を公募で呼ぶ。すると優秀なチームができると思います。

川野辺 北大キャンパスは自然にあふれているので、なんとか生かしたいというのが私の常々の想いです。人との交わりも東京では味わえないものがありますので、それを資源として人を招きたいですね。
中山 大学は学生には生活の場で、もちろん学問として学ぶのもありますけれど、地域に貢献するプロジェクトでぜひ学生を人として育ててほしい。それが「うちの大学、こんなに素敵だから、地域の人に来てもらおうよ」と、つながっていくと思います。

山重 「大学の経営にとって有意で、社会的に評価を受け、学生にとっても意義のあるキャンパスを活用したプロジェクトを戦略的に興していきましょう」と新しい総長に提案する。それから、社会的マネジメントを担う人材を育成するカリキュラムをぜひ設けてほしいですね。

今津 ありがとうございます。では佐々木さんから締めの感想とご挨拶をお願いします。

佐々木 新しいマスタープランを作っていくタイミングで総長も変わりましたので、これからの北大として全学的に合意の得られたプランが作れるものと確信しています。これだけマスタープランについて一生懸命やっている大学は、全国の国立大学の中でも限られた数しかありません。北海道大学は見た目以上に濃いものがある。そこは自負をしながら作っていかなければならないと思っておりますので、「ご期待ください」と言いつつ、今後ともいろいろなご意見を賜われればと願っております。今日は本当にありがとうございました。

床, 人, 屋内, グループ が含まれている画像

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