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もしも自分が北海道大学の総長なら……。第9回 ステークホルダーミーティング

環境報告書2014より

2014年2月26日  百年記念会館 大会議室にて

環境への取り組みを評価するため、学内外の関係者を集めて「北海道大学ステークホルダーミーティング」を2006年から開催しています。2013年度は「もしも自分が総長なら」と仮定して、環境負荷低減のためにやりたいこと、そして、地域連携・産学連携をはじめ協働でやりたいことなどを語り合いました。

溝渕 清彦

公共財団法人北海道環境財団協働推進課 主事。

北海道環境パートナーシップオフィス事業(環境省)担当。

軸丸 典彦

北海道大学生活協同組合理事会室長。

環境・共済・学生組織活動の支援等を担当。

藤田 良治

北海道大学総合博物館博物館教育・メディア研究系 助教。

博物館と映像に関する「博物館映像学」を研究。

近著に『学船 北海道大学洋上のキャンパスおしょろ丸』がある。

川本 真奈美

北海道大学創成研究機構研究支援室 学術専門職。

広報・北キャンパス研究棟の管理等を担当。

中林 光司

北海道大学国際広報メディア・観光学院観光創造専攻 博士課程1年。

札幌市北区役所 地域振興課にて「まちづくり」を担当。

有坂 紀子

北海道大学農学部生物資源学科2年。

北海道学生震災支援ネットワークHOSUP代表。

三上 隆

北海道大学理事・副学長(広報・評価・リスク管理等担当)。

サステイナブルキャンパス推進本部本部長。

羽山 広文

北海道大学大学院工学研究院建築環境学部門 教授。

サステイナブルキャンパス推進本部環境負荷低減推進部門長。

松藤 敏彦

北海道大学大学院工学研究院環境創生工学部門 教授。

サステイナブルキャンパス推進本部環境保全センター長。

ファシリテーター

今津 秀紀

凸版印刷株式会社トッパンアイデアセンター。

※プロフィールは2014年2月26日当時、敬称略。

環境負荷低減のためにやってみたいこと。

今津 今年はまず「自分が総長だったら、環境負荷低減のためにやってみたいこと」についてご意見をお願いします。

川本 電力などの省エネをかなり北大としてやっていると感じています。ただ、省エネってガマンしなきゃいけないというか、夏はエアコンを切って、実験の時間を減らしてと、先生方には研究の妨げになるイメージが大きい。北大が最終的にめざすものが共有されていないのではという気がします。総長になったら、いろんな方の知識・技術を使って、夢のある省エネにつながるキャンパスをつくっていきたいと思います。

軸丸 環境問題において、まず現場を知ることが重要だと思います。それとどうすれば環境負荷低減を進めていけるか、身近なことから始めることが重要だと思います。その観点から、総長になったら、学生にはごみの回収現場や処理現場に立ち合わせて、身近にごみ問題を考えさせたいと思います。

三上 省エネを進めていく立場としては、決してガマンを強いている訳ではないんですよね。基本的に電気代は各部局で負担するので、部局でまずどういう取り組みをしたら減らせるか話し合う。それがスタートだと思います。大学の将来像は「社会の持続発展のための実験場となります」ということですね。活動から出てきた成果を社会に還元することが将来的なターゲットになると思います。

松藤 ごみの分別ができないのは学生だけじゃない。私は「ごみの埋め立て地は近くに造れ」と言ってるんです。すると汚いのがわかり、なんとかしようとしますよね。学生はキーになるグループを作って、誰が何をするか役割を明確にしたい。企業のマネでなく「さすが大学」と言われるように、論理的な構成を考えたい。目的はこれで、データをとって評価をして、どうするか。こういったサイクルをつくる。仕組みこそが大事だと思います。

藤田 学内に絞れば「ごみは持ち帰りましょう」。CO2に関しては、大学の広大な土地を活用して吸収する仕組みをつくると良いかと思います。北海道大学は、環境の分野では世界一になるという意気込みで独自の取り組みが必要です。

中林 剪定枝配布のようなリサイクル活動を行い、ホームページ等で知らせる努力をしていて、学生団体のエゾロックのように環境意識が高い学生もたくさんいますよね。私が総長になったら、お花を種から地域の人たちと作ります。すると地域連携もでき、環境への取り組みを知ってもらえる。リサイクルキャンパスの取り組みとして、剪定枝や落ち葉で堆肥や腐葉土をつくる。あと、雪の研究をして、夏の冷房などに使いたいですね。

有坂 環境負荷に対して数値を具体的に見えるようにしているのはすごい。ただ、数値が大きすぎて、自分が何をしたら貢献できるのかが見えない。マクロすぎるのかな。あとは、大学のエコ政策に対して学生が一緒にかかわる機会があまりない。ですから私が総長になったら、個人がサステイナビリティを実現していくためにミクロな視点を提供する講義を充実させたいですね。未来の展望が見えると、実現していく気力も湧くと思います。

今津 情報は、相手が興味をもって尋ねてきた場合には答えられるほど充実してきたんだけれども、興味もない人へはなかなかたどりつけないんですね。

羽山 雪を冷熱源にする施設はコスト的に厳しい。データセンターの冷房は建物の大体20倍の雪が必要で、冷水を100m以上輸送すると経済的に成立しません。「マクロすぎて……」というのは、本当にそうだと思います。たとえば化学系の実験で使うドラフトチャンバーは1台1年間動かすと住宅true軒と同じくらいのエネルギーを消費する。「これは年間20万円くらいの光熱費がかかる」と知って操作することが必要じゃないかなと。

三上 雪を大量に集めてそれを発電に使うのは、効率的にはダメなんですか? そういう技術的なことで大学は貢献したいですね。マクロの話は、いろいろな機会を利用して執行部に意識改革を訴えます。電力需要予測をテレビでやっていますよね。「今日の余裕は何パーセントです」と。家での省エネの習慣をそのまま大学に持ち込んでくれたら、ある程度節電ができるはずなんです。そういう連続性があればいいなという気がします。

松藤 教授会で電力消費の話をしても「あ、そうですか」で、何も変わらない。個人だと電気代が気になるから考えますよね。自分一人がやってどうなるのか全然わからないまま「やれ」っていうのは無理ですよね。これをやったらこれくらいですっていうのが周知されなきゃいけない。パンフレットがあることと周知は別。学生向けにマクロな話から入ってミクロな話を入れた全学教育をやるべきじゃないでしょうか。

三上 授業については評価システム2013に「そこらへんが欠けています」という指摘が出てきていますので、取り組む準備をしています。

藤田 確かに情報が多く提供されるようになりました。しかし、情報の受け取り方はさまざまであり、意図がしっかりと伝わっているのか確認する良い方法がなかなか見つかりません。

溝渕 もしも自分が北海道大学の学長なら……。マクロな話を、いきなり個人レベルのミクロな活動につなげるのは極端なので、チームでの活動を取り入れてはどうでしょう。省エネで浮いた経費を学校に還元する「50:50プロジェクト」という制度がありますよね。これを部局や研究室単位のチーム対抗で取り組んでみてはどうか。また、北海道の持続可能性を高める実験場所として、北大を2万人の「まち」だと想定して、できることを考えてみてはどうかとも思います。

今津 見える化は本当に進んだなと思っています。一方でごみの話題が出ている。電気は見えないけれど、ごみって見えますもんね。「分別されていない!」とか、わかりやすいだけに解決したいですね。

松藤 数値で見えるのと物を見るのとは全然違いますよね。各部局にある保管場所を係が見に行くシステムにするとか、本当に見るシステムが要るんじゃないかと。それと「まち」って言葉、なんかいいですね。「キャンパス」ってなんとなく社会から浮いている感じがして。「みんなでいいまちをつくりましょう」のほうがいいかもしれない。

羽山 「50:50」の話は私もまったく同感です。大学全体で年間約22億円を光熱費、電気と油、ガスを消費していて、学生数は22,000人ですから、1人当たり年間10万円。教員2,200人くらいですから、教員1人当たりにすると年間100万円ほど負担することになっているんです。それで、研究室単位で計量して、削減した分を半分還元する。なかなかいいインセンティブだと思います。

松藤 お金のインセンティブって確かに強い。でも大学ですから精神的な満足感でやってほしいですね。こうやったらこれくらい良くなって貢献してると周知する。

地域などと連携してやっていきたいこと。

今津 後半は地域連携、産学連携、あとはもうちょっと協働で何かやっていくことを広めにご意見をいただきたいと思います。大学なので実験場であるとか、環境に関しての価値を創っていくとしたら、何をやっていけばいいんだろうと。

有坂 日本は食料を輸入している割に廃棄量が多い。私は畑のサークルに入って、実際にトマトやズッキーニを育ててみたら大変だと痛感して、食物に対するありがたみやもったいない精神が生まれたんですよね。そこで、学部を問わずに農業体験の合宿とかインターンシップを北海道内の農村で実施するのがいいのかなと思いました。

中林 M1・F1層、20歳〜34歳ぐらいの方々が集う元気なまち。ダウンタウンとしての機能をもつ北大を進める。技術の集積地、IT産業もあります。他にアートや音楽で生計を立てたいと思っている人、環境に興味を持っている若い人、そういう人たちが原動力になって、全年齢層に波及するいきいきした大学にするような総長になりたいですね。

藤田 もしも自分が北海道大学の学長なら……。地域連携を強化するのであれば、学生と教職員間のコミュニケーションを密にすることから始めるべきだと思います。まずは大学のビジョンを関係者全員が理解する必要がある。そのためには外部のメディアを活用することも一つの方法。学内へ情報発信しても届かないのに、新聞やテレビで報道されると関心が高まることがあります。情報発信を中へ外へと使い分けると意識改革が進み、結果的に地域への情報発信が促進され、連携が深まると思います。

三上 たくさんの情報を発信していると思っています。ただし受け手の動きがよくつかめていない。それと地域連携も札幌市とようやく結んだところなので、何らかの形で成果を出して、PDCAサイクルにのるものであれば、それを使って発展させる。学生との協働は、半期なり長い期間で仕事を進めるようなものがあってもいいのかな。

羽山 我々研究者はマニアックな人種でタコツボの中のような研究をしている者が多いんです。共同研究などでは企業と一緒にやっているんですが、包括的な活動が少なくて、「成果を出す」ということがズッシリと重荷になる。

松藤 札幌市との協定は非常に良い機会かな。地域自治体のニーズを知ってこちらから提供してあげればいいし、学生を巻き込むこともできますよね。「北大モデル」を作っていろいろな自治体に広げて、最後は日本をめざす。社会の中の大学だという意識。これが大事になる。ぜひそういった活動も評価していただきたいなと研究者として思います。

川本 地域の小学校・中学校・高校との連携を少し強めていく。国民との科学技術対話で高校13校、のべ30回くらい行ってきたんですけれど、歓迎してくれますし、行った先生方も自分の研究を聞いてもらうとモチベーションが上がるんですね。ただ、個々のつながりで出前授業に行っている方が多いので、組織としてやっていきたいと思います。

軸丸 北大は環境問題についても地域連携を進め、コミュニティー形成に大きく貢献していると思います。私の思う最大の地域貢献は、社会に飛び立った時に、企業や自治体、地域などそれぞれの場面で貢献できる人財を輩出すること。教育において自主性を養うという面から、学生が自主的に環境問題に取り組むこともこれから大切だと思います。その意味で学生の環境団体の取り組み支援は重要ですね。

溝渕 環境保全に向けた協働を進めるということは、すなわち持続可能な社会づくりを進めるということですね。大学に期待することのひとつは、継続的な定点観測。高度な技術を要する調査と市民が参加する人海戦術的な調査を、ぜひ組み合わせてほしい。もうひとつは、全学部の知識を共有して、北大としての集合知があればいいなと思います。

三上 本学でよく知られている「ビー・アンビシャス」ね。最後に「アゲイン」をつけて、これからのイメージづくりをしてブランドを上げていきたい。地域連携は評価軸を変えないと、なかなか先生方の協力を得られない。教育、研究、社会貢献が大学の3つのミッションと言われているけれど、多分、多層的な評価方法を考えざるをえないだろうと。一方、国際化も大学としてはやっていかないとダメだと。だからどういう具合にバランスをとり、ベクトルを定めるか、今スタートラインに立っているところだと思うんです。

羽山 大学の総力として地域とどう接するかということを問われているんじゃないかと思います。大学は約1,000の研究室があって、1,000戸の事業主が寄せ集まっているような組織なんです。高い壁に囲まれ縦割りになっている。さあ、その壁をどうやって壊して総力を発揮するか。「今後の課題」の一語に尽きると思います。

松藤 外で実験場をつくるイメージ。社会実験をどこかでやって、カッコ良く言うと「知の結集」。総力をあげて、そういうのができればいい。全体の大きなプロジェクトとしてやる。一番重要なのは知識だと思うんです。システムがあったときにどうすれば良いか。データを集めて分析すれば、だいたいわかりますよ。そういった仕組みをぜひつくりたい。それが広がって日本のモデルになっていく可能性がありますよね。

今津 ということで無事終了しました。ありがとうございました。