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川と森を同時に研究する。大学院農学研究院 中村 太士先生

環境報告書2013より

森の中に立つ男性

自動的に生成された説明

大学院 農学研究院 教授 中村 太士

川だけ見ていても、川のことはわからない。

日本では、川の研究者は川だけを見て、森の研究者は森だけを見る状態が続いていました。農学研究院の中村太士教授は、講師時代に海外特別研究員としてアメリカのオレゴン州で生態系のつながりを調べるプロジェクトに参加。2年間、川と森のつながりを研究した後、日本でも同様に、川と森を併せて研究してきました。
現在、国が管理する一級河川は全国に109あり、日本の生物多様性の現状を把握する際、従来は全国の統計資料が使われていました。しかし、中村教授は生物多様性の現状や評価を「地図化」することが必要と考え実行し、生態系の価値を判断する材料を示しました。希少な種が生息する地域が重要と考えられがちですが、ありふれた種が棲む地域もまた重要です。できるだけ多くの種を守るには、予算が限られる中でどことどこを保全すべきかといった判断が、地図化によって下しやすくなったと言えます。

「0か1か」以外にも選択肢はある。

中村教授は「集水域をトータルで見たい」と考え、日本最大の湿地である釧路湿原とその周辺の調査にも取り組みました。1980年にラムサール条約に登録されて、面積約2万ha の釧路湿原自体は守られています。一方、その上流域約25万ha では、土地が農業や林業に利用され、結果として湿地に汚濁負荷がたまる現象が起きているのです。湿地は数千年の時を経て森に変わっていくものですが、釧路では人為的な影響により、本来のスピードの6~7倍のペースで変化が起きていることが判明し、対策が必要とされています。

自然環境と人の営みとを考えたとき「0か1か」の議論になることがよくあります。たとえば、ダムを残すか撤去するかで話し合いが前に進まない状態。しかし、ダムを改良するという選択肢もあります。また、生産と生態系の保全は必ずしも対立する行為ではありません。実際に兵庫県では、コウノトリを保全するために無農薬でお米を作り「コウノトリ米」として販売している地域があります。その米は「給食に使って」と子どもや親が熱望するほど好評です。

干し草の上にいる人たち

中程度の精度で自動的に生成された説明

JICA の長期研修で北海道を訪れていたアフリカ・中米などからの研究生に
川と森林のつながりについて説明

自分のものさしをもって生きる。

「価値を科学で決めてはいけない。科学者は“いろんな価値がありますよ”と提示するのが役割」と中村教授は考えます。
日本では少子高齢化が進み、人口が減っていくことが問題視されていますが「高度成長期のように給料が上がらないといったことはあるけれど、放棄された農地が湿地によみがえり、タンチョウがやってくるかもしれない。価値観を変えればいい」と冷静です。むしろ心配しているのは“川ガキが絶滅危惧種になっている”こと。つまり、川で遊ぶなど、野外での実体験を積んでいない日本人が増えていることです。「実体験を積んで、自分で考える力をつけてほしい。自分のものさしをもって生きてほしい。さらに、研究者であれば、ずっと北大で過ごすのではなく、海外も体験してほしい」と学生に期待しています。北大は「いったん出て行った人間が戻ってきたくなる大学」であり続けなければならないとも言えます。

ボートに乗る人

自動的に生成された説明

米国フロリダ州での湿地再生現場の調査