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持続可能なキャンパス -第8回ステークホルダーミーティング
環境報告書2013より
社会をめざして北海道大学では今何をするべきか
本学では、環境への取り組みを評価するため、2006年から「北海道大学ステークホルダーミーティング」を開催しています。2012年度は、2013年3月21日、北海道大学・遠友学舎にて、北海道大学の「現在の環境活動におけるプラス面・マイナス面」「今後の活動」「情報発信・交流」という3テーマを軸に、様々な意見が交わされました。
久保田 研介
札幌市市長政策室政策企画部企画課企画担当課長
岡崎 朱実
環境カウンセラー さっぽろキャンドルナイト実行委員会
春田 純平
法学部法学課程4年
高橋 優
文学部人間システム科学コース2年 北大カフェプロジェクト広報担当
愛甲 哲也
大学院 農学研究院 生物資源生産学部門園芸緑地分野准教授
長濱 祐美
科学技術コミュニケーション教育研究部門博士研究員
吉村 暢彦
大学院 地球環境科学研究院 実施・地球環境科学分野コーディネーター
佐々木 重晴
工学系事務部 経理課営業担当係長
三上 隆
理事・副学長 サステイナブルキャンパス推進本部長
小篠 隆生
工学研究院建築都市空間デザイン部門空間計画分野准教授
サステイナブルキャンパス推進本部キャンパスアセスメント部門長
横山 隆
サステイナブルキャンパス推進本部 プロジェクトマネージャー
ファシリテーター
今津 秀紀
凸版印刷株式会社トッパンアイデアセンター
※プロフィールは2013年3月21日当時、敬称略
まず環境活動について評価してみる。
今津 まず北海道大学の環境活動について、プラスの評価とマイナスの評価をあげてください。
吉村 省エネにかかわるものも含めて機器はかなりあり、資産は非常にいい。ただ、メンテナンスで不具合が出ている部分があり、全体的に判断する体制がない。そういう部分をいかに研究として考えていくかが足りていないですね。
高橋 プラス評価は設備面。照明をLEDにするとか、長期的にエコになる活動をしているけれど、資料を見ないと気づかない。調べないとわからないのはマイナスなのかな。
久保田 サステイナブルキャンパスの推進をしていて、キャンパスマスタープランが全国で初めて策定された。それを実行して評価に結び付けている。そこは非常によくやられているなという印象です。一方で、情報発信はホームページなどがありますが、市民にはほとんど知られていないと思いますよね。
長濱 良いところは、全国に先駆けて環境に取り組んでいく姿勢があり、プランがあること。広大な農場やキャンパスを生かそうという取り組みは、北大ならではだと思います。悪いところは、北大の人たちが取り組みを知らないこと。当事者意識をもってもらい、巻き込んでいくプランを充実させると、広報にもつながっていくと思いました。
岡崎 環境負荷低減に向けて「見える化」とか、学生さんも巻き込んでおられるのがすばらしいと思いました。ただ、どういう想いでやってらっしゃるのかがわからない。
春田 職員、教員の方々が、北大の美しいキャンパス、自然が財産という意識を共有して、この財産を育てていこうという気持ちがすごく感じられる。そこが良い点。マイナス点は、学部生が話し合いをしながらサステイナビリティについて学ぶ機会が少ない。
愛甲 環境負荷低減に関する目標を掲げて評価されているのはプラスポイント。自負すべき点だと思います。一方で、方策として掲げられている項目が「各人が何をすればいいか」まで落とし込めていないと思います。
佐々木 省エネなどをみなさんに依頼している立場で考えました。プラス面は、見える化が少しずつでも進んでいくこと。マイナス面は、その見える化の先に何があるのか、わかっていないんじゃないかと思います。
今津 では、事務局側のコメントを。
三上 我々から見ると「まだまだ努力が必要です」という評価です。北大の場合、学生がだいたい18,000人、教職員が4,000人、外には多くの第三者がいて、多様なステークホルダーにどのような情報を的確に発信するか、見極めが大事と考えています。
小篠 すごく気になったのが「誰が何をすれば良いのか」とか「見える化の先に何があるのか」ということ。大学ではエネルギーコストを払っている実感が各人にはないんですよ。「自分たちが払うなら、これくらいセーブしようか」という気持ちにさせることが環境活動のひとつの方向性でしょうが、まだできていない。
横山 やっぱり各人が何をすれば良いか、具体的になっていない。計画は作ったけれども、いつまでに誰がどこまで、といったところまで発信できていないですね。
三上 評価システムをこの3月に策定しましたが、データを示すだけでなく、「活動を通じてエネルギーが節約できた」。そこまでもっていきたい。ようやく全学的に動ける体制ができましたので「みなさんの努力・協力があれば、いい方向に向きますよ」とメッセージを出したいという強い気持ちをもっています。
小篠 会社はコーポレート・アイデンティティーがあって、それに向かって全員一丸となるけれど、大学は必ずしもそうなっていない。バラバラの研究者が活動されていて。だから「これをやっていきましょう」というのをどこにもっていくかが、サステイナビリティ活動の重要なポイントだと思っています。
横山 どう動けばどうなるのか、議論をおこしてみなさんに提示することが急務かなぁ。
見える化された後にどうするのか。
今津 テーマの2として、見える化された後にステークホルダーをどう巻き込んでいくと活動が活発になっていくか、アイデアをいただきたいと思います。
高橋 僕は「全北大生省エネ対策選手権」というのを考えました。狙いは、学生が関心をもつこと。動機づけとしては、楽しむこと。「何か効果があったら、それを学内で採用」というシステムがあったら、新しいアイデアが生まれるのではないかと考えてみました。
長濱 具体案として「研究・取り組みに資金を」。大学に課されている役割は、大学が持続するだけではなく、その成果を未来の社会に還元していくことが大きいと思うんですね。持続可能な社会に資する研究にお金を落としていく。「その資金はどこからくるんだ」と言われると困っちゃうんですけれど。
岡崎 研究者の方が省エネなどを集まってやっていくにはどうしたらいいか、仮説を立てて実践して、うまく社会に還元できたらすばらしいですね。
吉村 いろんな研究を組み合わせた学会はない。業績になりにくいけれど、そういうものを解決するのもひとつの研究。北大の中で複合領域を業績として認める学会をつくるのは重要かな。もうひとつ、省エネは、いろんな見方をして原点を考えるトレーニングになると思っているんです。たとえば必要のない電灯をLEDに替えても意味がない。学部教育で視点のもち方、ハードの入れ方などを教育の題材にしたいですね。
春田 省エネ、減らすことはもう難しいところがあるので、蓄エネ・創エネを企業と連携して進められたらと思います。
愛甲 農学部は数年前に改修をして共用スペースが作られ、そこを使用すると料金が発生することになって、急にスペースに対するコスト意識が教員の間に芽生えました。冬に学生はわざわざ土日に暖房が入っている学校に来て勉強していますが、それがどれくらいのコストを生むか。経済的な観念を身に付けさせることも必要です。そういう講義や実習を1年生の必修科目にできないでしょうか。
久保田 役所の場合、年々税収が厳しくなっているから、予算編成をするときに経費を強制的に数%ずつカットされる。一方で、そこで出てきたお金を、なかなか予算がつかなかったことにまわすということをやっています。お金を削る一方で「貢献してくれるのであれば、その分は戻しますよ」という仕掛けをするといいのでは。
佐々木 すぐできるのは、メリハリをつけることだと思うんですよ。たとえば照明のスイッチを「ここはいらないから消しましょう」「ここは研究に必要だから使う」とやっていく。
三上 卒業研究の一環としてデータの分析をしてもらうと、学生にとっては訓練になって、結果は我々も有効に使える。教育では、1年生のうちにいい情報を与えて、高学年ではこういう活動に参加して、社会に出てから経験を生かしてもらう。そういう教育をこれから充実させていく必要があると思います。
小篠 「学会を立ち上げよう」というのはすごくいいなと思いました。やっぱり研究機関ですから。やっていることが大学の運営に寄与して、自分の研究成果にもつながるのが理想的ですね。
横山 自分の業績になることでモチベーションが上がってくるし。やっぱり大学は、社会全体がどう持続可能になっていくかのモデルケースにならなきゃいけない。そこが一番大事なところですね。
サステイナビリティ推進も教育の機会として。
今津 最後のテーマは情報発信・交流です。
春田 ひとつは、サステイナブルキャンパス推進本部に学生のインターンを取り入れたらどうかな、と。実際の仕事にかかわる経験は、生きてくると思います。ふたつ目は、学生の発信力。論理的に話して考えを伝える力を高める教育ができたらいいと思います。
久保田 そもそも情報発信は何のためにやるのかを整理しないといけないでしょう。知ってもらうだけでなく、行動に移してもらう。そこまで見越した段階的・戦略的な情報発信を考える必要があると思います。2番目に、じゃあターゲットをどうするか。相手によって、響く情報は変わってくるので。
佐々木 考えて、実験して、それをみなさんに知らせることが大学としての情報発信かな。先生方や学生さんたちに発信してもらうには、メリットをつくって活性化していかなきゃいけない。それを大学が後押しできるシステムがあればと思いました。
高橋 学内の場合、つまり大学と学生の関係に関しては、情報を発信して、それに対して答えるという構図よりも、両者が気の済むまで議論するのが理想だと思うんです。議論する上で当事者意識が芽生え、その問題に真剣に取り組める。
長濱 持続的な社会への意識そのものを北大の文化とか気質にできたらいいと思いました。そのためには、取り組み自体が楽しい、不便じゃないということが大切でしょうね。
愛甲 情報発信は、誰に何を伝えるかを整理して、それでどういうアクションをおこしてもらうかが大事ですね。交流は、北大キャンパスが好きな地域の人たちを集めたファンクラブをつくり、ゴミ拾い等に参加していただき、参加した方にはキャンパス内で何らかのサービスを受けていただけるようにしても良いですね。
岡崎 サステイナビリティのイメージは、各人各様かもしれない。だから、皆さんの持つイメージを共有できるような機会や場をもってもらいたい。
吉村 学外の人たちが求めているのは、自分たちができないロマンであったり、応援したくなるようなものであったり、必ずしも役に立つものじゃなくていい。「ユーチューブ5分講座」なんてミニ講座をつくるのもありかなと思っていますね。特に教育研究の内容は、長期視点をもってがんばっているというところを知ってほしいと思っています。
今津 では、事務局の先生方から。
三上 学生インターンシップの導入。これは大事な提言だと思います。議論の場、対話の場、この辺は、テーマによっては積極的に学生も入れてやっていかなくてはいけないと思っています。農学校開校当時のカリキュラムは、まさに今必要とされているもので、そのままやればグローバル人材の育成ができるような構成になっているんですよね。
小篠 2万何千人となると、ひとつの街の単位ですよね。その人たちとどういう合意形成をして、計画を作り実行していくのか。そのシステムがまだできてなかったと思うんですね。どういう同意形成方法をとっていくのか。それがテーマとして見えてきましたね。
横山 私も学生さんのインターンシップはぜひやりたいなと思っているんです。たとえば我々がイベントを実行するときに一緒にやっていく制度もありますし、評価や対話みたいなものもありますね。それとサステイナビリティの教育。様々な考え方をあぶり出してみんなで議論することが、次に向かうステップで一番必要なことなんじゃないかな。
吉村 何か問題が起きて初めて合意形成の気運が高まる。大学内でも、社会の縮図のような問題がありますが、それを単なる大学の問題ではなくて、サステイナビリティに向けての研究課題であると認識して、学生さんが研究をする。合意形成と次の改善提案を出す練習を積む機会に使ってもらえたらいいなぁ。
小篠 それくらいのレベルのところをインターンシップでやったら、学生は興味をもってくれる。イベントの参加より、むしろそういうことの方が役に立つと思うんですね。
吉村 中心人物が学位論文か修士論文を書けるくらいのネタではあると思うので、そういうふうに形に昇華できたらなと思います。
今津 みなさまぜひ伝道師として、学内・学外に「北大はこんなこともやっている」と伝えていただければと思います。本日の会は、いい会だったと思います。どうもありがとうございます。