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サステナビリティの同志たち−6− 工学部/工学研究院 水産学部/水産科学院 北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーション 文学部/文学研究科

環境報告書2010より

その他の学部

北大の各学部・大学院において、数多くの研究者たちが各々の専門分野の中で、サステイナブルな社会の実現につながる研究を行っています。そのバラエティに富んだ北大の研究を、ほんの一部ですが紹介します。

工学部/工学研究院
地中熱の利用を拡大する技術開発
少水量対応高効率地中熱利用ヒートポンプシステムの開発

スーツを着た男性のグループ

自動的に生成された説明産学官連携功労者表彰の様子

地中熱ヒートポンプは、寒冷地を中心に普及が進んでいますが、冷房が主体となる温暖地域では普及が進んでいませんでした。従来の空冷式に対して、地中熱ヒートポンプの熱源水の搬送動力が大きいためです。この搬送動力を減らし、環境負荷を低減する地中熱ヒートポンプシステムの開発が、本学の大学院工学研究科の長野克則教授が開発責任者となり、新日鉄エンジニアリング株式会社、北九州市立大学国際環境工学部の葛隆生先生との共同研究で取り組まれました。
具体的には、ヒートポンプの熱源水の量を減らし、負荷に応じて循環する水量を変えて制御することで、搬送動力の大幅な低減をめざしました。フィールド実験においては、循環ポンプ消費電力量を80%低減するという結果が得られています。同時に、冷房過多による地中温度上昇を解消するための大気放熱併用システムや、地下水流れによる地中温度回復の定量評価手法についても確立。さらに地中熱ヒートポンプシステムの普及拡大を進めており、ヒートアイランド現象の抑制も期待されています。
この少水量対応高効率地中熱利用ヒートポンプシステムの開発において、長野教授、新日鉄エンジニアリング中村靖氏、葛先生の3名が、産学官連携功労者表彰(環境大臣賞)を受賞しました。

水産学部/水産科学院
持続可能な漁業を実現するために
サステナな沿岸漁業と海洋生態系の保全(知床を例として)

2010年11月9日の市民フォーラム「サステナビリティ水産学の理論と実践:あなたがいるから、私も生きていける」では、海洋生態系の保全と持続的な水産食料の確保をテーマに、さまざまなテーマの講演が行われました。大学院水産科学研究院の桜井泰憲教授は、漁業者が資源を管理する知床世界自然遺産海域を例に、海洋環境・海洋生態系の保全と安定的な漁業の営みが両立すること、またそれはどのように実施されてきたのかを発表しました。
日本の沿岸漁業は資源の減少をはじめさまざまな問題を抱えています。しかし、日本の沿岸漁業は漁業資源を独自にうまく保護し、バランスを取りながら持続的に行ってきたものです。2010年の猛暑を例に、沿岸の環境の変化と漁業資源の状況にふれ、日本からあるべきMPA(保護と利用のバランスをはかる海洋管理手法)の発信が必要であること、その内容について考えました。特に、世界自然遺産海域である知床の海域管理はすべてのステークホルダーが議論に入って作られたものであること、そしてその管理の方法について説明。さらに、今後の気象の変化が知床の漁業資源に与える影響をシミュレートしながら、この方式をモデルとして、国内数カ所の漁業地で今後の生態系のモニタリングや持続型沿岸漁業の創成の必要性を訴えました。

北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーション(天塩研究林)
森林のCO2吸収メカニズムを解明
カラマツ林の炭素循環機能に関する観測研究

幌延町問寒別に所在する天塩研究林は、日本最北の森林帯に属し2万2,534haの面積を有します。ここでは、国立環境研究所・北海道電力と共同で、森林の二酸化炭素収支や吸収機構を解明するための共同研究を2001年より行っています。
共同研究では天然林の伐採やカラマツの植林を通して、これらの林業活動が炭素・水・窒素の動態に及ぼす影響を明らかにしています。観測結果から、森林伐採を行うと植物の光合成量が大きく低下し、生態系から多くの二酸化炭素が放出されるため、伐採後7年間に渡って二酸化炭素の放出源となることや、植生の回復によってその後は再度吸収源となることが明らかになっています。

森の中のタワー

中程度の精度で自動的に生成された説明

二酸化炭素吸収量観測機器

ポールに付けられた交通標識

自動的に生成された説明

北の森プロジェクト

森林再生事業として更新地(造林地)の新規造成や、既存の更新地を対象とした除間伐などを継続して行っています。これらはCO2の森林吸収促進手法として京都議定書に定められた「森林経営」に当たります。
2010年度は森林圏ステーション全体で、更新地の新規造成13.31ha、除間伐83.25haを実行しました。京都議定書では除間伐によるCO2吸収量を、残した木が除間伐後の成長により蓄積する炭素の量をCO2に換算して求めると定めています。簡易的な方法で算出すると、2010年度の除間伐実行更新地が5年後までに吸収するCO2量は約3,350tになります。

文学部/文学研究科
環境問題における合意形成過程に注目
札幌市におけるごみ・資源回収ルールの多面的評価

循環型社会形成は住民の協力がなければ実現できません。札幌市のごみ有料化を例に、市民の協力行動の推進や合意形成に至るプロセスを、文学研究科の大沼進准教授が中心となって、社会心理学的なアプローチから研究を進めています。
2009年7月の「新ごみルール」導入の結果、札幌市では大幅なごみ減量化の実現、老朽化した清掃工場を休止し新規焼却施設を作らないことによる長期的な経費削減効果などが見られました。その成功理由の一つに、計画策定段階から実施に至るまで、さまざまな市民参加の機会があった点があげられます。市民参加による計画策定が審議会の答申に盛り込まれ、その後も市民意見交換会に8,000人以上、説明会には13万人と多数の住民が参加しました。さらに、不適正排出に対する取り組みも行政と住民の協働で行い、その効果も見られています。
こうした住民参加は、一部の関心の高い人だけの取り組みになりがちで、無関心層や参加しにくい人たちが多数存在します。そこで、非参加者がどのような評価をしているのか、3年にわたる調査を実施しました。その結果、市民参加の手続きが公正であると評価するほど新ごみルールを受け入れられるという関連が一貫して見られ、多様な市民参加は多くの市民にとって意義があることが示されました。